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業界別マーケティングオートメーション(MA)事例紹介~ITサービス編~

マーケティングオートメーション(MA)の利用が日本でも年々進んでいるなか、導入を検討している会社も増えているでしょう。
ツールを選定するにあたり、製品ごとの機能比較だけでなく、実際に利用している企業がどのようにツールを活用しているのかなど、導入事例も自社での利用イメージを描くのに役立ちます。

そこで本記事では、実際にMAを導入した企業の導入背景や課題、MAによりどのように業務が改善したのかについて、各社の事例を業種別に紹介します。以前は製造業(メーカー)事例を取り上げましたが、今回は、ITサービス業界についてとりあげます。

イベントレジスト株式会社(HubSpot)

イベントレジスト株式会社は、オンラインのイベントプラットフォームを提供している企業です。
無料で使える機能と有料サービスがあり、有料サービスのターゲットとなる見込み客は法人のイベントや展示会の主催者です。同社では、オンライン広告や特定のリストに対して電話をする「リスト営業」を主に実施していましたが、どちらにおいても法人のターゲットに対しては効果が低いという課題を抱えていました。また、社内の営業メンバーも限られていたため、リスト営業では効率が悪くなおさら成果が出ない状況でした。
そこで同社では、ターゲット層から見つけてもらう仕組みを作るため、インバウンド施策に方向転換することにしました。

まず、インバウンド施策として行ったのはブログの活用です。施策を実現するためのツールとしてHubSpotを採用しました。
問い合わせに至る前の、購買フローの初期段階にいる潜在層を取り込むために、イベントの運営で悩んでいる人が読みたくなるような内容をテーマとしました。HubSpotのSEOツールでキーワードを意識するなど工夫もしながら、ドラフトは各営業が担当し、上長が最終的に確認するという流れで記事を継続的に作成する体制もできました。

さらに同社では、マーケティング専用サイトをHubSpotで立ち上げ、サービスサイトと相互の導線を強化したことにより、見込み客のサイト訪問数を大幅に増やすことを実現。表示させるCTAのボタンも閲覧する人により変えるような仕組みとし、特定のホワイトペーパーをダウンロードした人に対して営業が電話をするなど、MAを活用したフローが完成しました。

このような施策の結果、見込み客数は導入前と比べて7倍以上に増え、マーケティングファネルの入り口にいる見込み客を増やすことに成功しました。
また、ブログの記事が一定数を超えたころから問い合わせも増加。アウトバウンド施策も継続していたものの、インバウンドによる成約率の方が圧倒的に高い状況でした。
業務効率があがったことによりPDCAも回しやすくなり、HubSpotを入れたことでマーケティングの担当者が一人増えたほどの効果を実感しています。

株式会社ブイキューブ(HubSpot)

株式会社ブイキューブは、Web会議などビジュアルコミュニケーションツールの企画・販売を行う企業です。
同社では、展示会、セミナー、Web、SEOなどオンラインとオフラインでさまざまなマーケティング施策を行っていましたが、複数の課題を抱えていました。

見込み客の確度を測る仕組みができておらず、営業がフォローするのは問い合わせのあった顧客のみでした。
国産のマーケティングツールを利用しており、カスタマージャーニーの設計やスコアリングの実施、コンテンツン作成などにリソースを投入していたものの、シナリオにそった設定がしづらいなど運用面における課題がありました。
また、各施策がどれだけ商談に貢献しているのか効果が可視化できておらず、経営層からは投資対効果を疑問視されている状態でした。

このような状況を改善するため、KPIやマーケティングのプロセスを見直し、既存のツールの変更も行うことが決まります。複数のツールを比較しましたが、結果的にカスタマージャーニーに沿った管理がしやすく、メールやフォーム、ブログも含めデジタル施策の一元管理ができ、マーケティング担当者でも使いやすいという理由からHubSpotを導入することになります。

導入後まず行ったのはブログの立ち上げです。サービスの導入検討層に対して役立つコンテンツを配信することで、見込み客を獲得する施策を行いました。導入から1年後には、40以上ものダウンロードコンテンツが完成。見込み客の行動にあわせてスコアを付与し、インサイドセールスが電話をしやすい仕組みも構築しました。

このような施策を続けた結果、導入後約2年でWebサイトの訪問者数やインバウンド経由での見込み客の獲得数が2倍に増加。
また、新規顧客の客単価が1.6倍増加し、商談貢献の向上と貢献度の可視化に成功しました。コンテンツ施策やKPIの見直しだけでなく、担当者が運用しやすいツールを選んだことも成果につながった要因といえるでしょう。

株式会社オロ(シャノンマーケティングプラットフォーム)

株式会社オロはクラウド型ERPの開発・提供を主に行う企業です。
同社では、顧客管理システムやメール配信ツール、無料のMAツールなど、複数の異なる仕組みが使われていました。そのため、見込み客へのアプローチや施策が分断されたまま実施されていたのです。ツールが異なることからデータに基づく顧客分析も十分に行えず、パーソナライズド施策も思うようにできていない状態でした。
同社で扱っているサービスは購買検討期間の長い商材のため、顧客との関係作りは不可欠です。また、マーケティングやインサイドのリソースも限られることから、見込み客の優先付けや状況把握も必須でした。

この状況を改善するため、新たに導入したのがシャノンマーケティングプラットフォーム(以下SMP)です。SMPの導入により、顧客の一元管理が可能となっただけでなく、CV(コンバージョン)やトラッキングデータ、メールの反応などあらゆる情報をもとに顧客を分析できるようになりました。カスタマージャーニーの精度もあがり、それまでの粗いセグメントからよりパーソナライズな施策をすることを実現。その結果、SMPがきっかけで生まれた見込み客も増えていきました。

また、一定の成果が出たことにより、チームメンバーの人員も増強。SMPの導入と同時に人員を増やしていったことから、SMPから得られた顧客のデータをもとに施策を増やしていくことも可能となり、商談獲得件数も導入前に比べて向上しました。

顧客データの統合により分析の精度があがり、セグメントやシナリオ設計などの施策に反映できたことが成功につながった例といえます。

日本電気株式会社(Oracle Marketing Cloud)

日本電気株式会社では、社会ソリューション事業におけるBtoBビジネスの拡大を強化すべく、デジタルマーケティングの自動化に力を入れていました。SFA(営業支援システム)はすでに活用していたものの、顧客データの集計やスコアリングの作業など、マーケティングに関わる部分は手動作業が主体となっていました。
人手による作業は時間がかかるだけでなくエラーも起きやすいため、本来の見込み客の発掘がしづらく機会損失につながりかねないという課題を抱えていました。

そこで同社では従来のやり方を見直し、MAを使うことを検討。商材にあったスコアリングがしやすいなどの理由からOracle Marketing Cloudを導入することにしました。

MAを導入後、それまで手動で行っていた基本的な作業を自動化し、見込み客に対してタイムリーなメール配信も可能となりました。その結果、施策の企画から実行までの時間が導入前に比べて半分以下に減少。メールのクリック率(CTR)も7倍に向上しました。
また、施策以上の導入効果は、それまではキャンペーンなど施策単位で顧客の状態を評価していたのに対し、MAを導入してからは、顧客の行動全体を見て商材への関心度合いや興味の変化を判断するというように、デジタルマーケティングに関して考え方自体が変わりました。

次フェーズの課題は、デジタル施策を商談に結び付けるために、営業との連携をより強化することです。そのためには、見込み客の行動パターンなどMAで得られたデータをもとに、確度の高い見込み客をマーケティング側から営業チームへ伝えていくことも重要だと考えています。
ツールを導入して終わりではなく、ツールをきっかけに考え方や体制も見直してみることも成功の秘訣といえるでしょう。

まとめ

ITサービスと一言でいっても扱う商材はさまざまですが、今回ご紹介した例のように、ターゲットが法人の担当者の場合や購買検討期間が長い商材は、見込み客との関係作りが重要です。従来のようなアウトバウンド営業では成果を出すことが難しい状況のなか、MAを使いながらインバウンド施策を強化する企業は今後も増えていくでしょう。