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公開日:2019年9月17日/更新日:2022年9月20日
MA(マーケティングオートメーション)が日本に登場してから数年、現在では国内での認知度も高くなっています。
MAとよく混同されるツールとして、CRMが挙げられます。いずれも顧客管理や販促に関わるツールであり、機能が重なる部分もあることから、両者の違いに疑問を持たれる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、MAとCRMそれぞれのツールについて、役割や目的の違いからどちらを選ぶべきか、さらに企業の成功事例までを詳しく紹介します。最後におすすめのツールも紹介しているため、効率的にマーケティング活動を実施したいと考えている方はぜひ参考にしてください。
MA(マーケティングオートメーション)とCRM(顧客管理システム)の定義
MA(マーケティングオートメーション)もCRM(顧客関係管理システム)も、企業の売り上げを伸ばすためのマーケティングツールです。しかし、導入目的や機能性において細かな違いがあります。
ここからは、MAとCRMそれぞれの意味や定義と違いを紹介します。
MA(マーケティングオートメーション)とは
MAとは、「Marketing Automation(マーケティングオートメーション)」の略であり、頭文字をとって「エム・エー」と呼ばれています。もともと米国から始まったツールで、2014年頃から日本にも登場しはじめました。
MAは直訳すると「マーケティングの自動化」という意味であることから、「MA=マーケティングを自動化するためのツール」と説明されることがしばしばあります。しかし、より正確に定義するならば、MAとは「パーソナライズドマーケティング」や「1to1マーケティング」をプログラムによって実現するツールといえます。
※パーソナライズドマーケティング…顧客一人ひとりに最適化されたマーケティング。ユーザーの個人情報を元に、一人ひとりの興味関心に沿った情報やサービスを提供するマーケティング手法。Adobeが発表した「2019年のマーケティング予測:注目すべき5つのトレンド」にも選ばれた。
※1to1マーケティング…基本的にはパーソナライズドマーケティングと同義だが、よりマスマーケティングの対比として語られる。製品単体ではなく、提供の仕方やサービスなど、顧客の体験から差別化を図るものである。
CRM(顧客管理システム)とは
CRMとは「Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)」の略であり、頭文字をとって「シー・アール・エム」と呼ばれています。
CRMも、MAと同様に米国から伝わってきた用語で、直訳すると「顧客関係管理」という意味となります。歴史はMAより古く、90年代後半から2000年代初期に日本で広まりました。もともとは顧客と良い関係を構築しようという考え方や経営手法を示す言葉ですが、現在では、その手法を実現するためのツールを意味することが多くなり、「顧客関係管理システム」と訳されることが多くなっています。
MAとCRMの違い(1):導入目的が異なる
MAとCRMの違いの一つが導入目的です。どちらも販促に関わるツールであり、最終的な目的は売り上げの向上である点は共通していますが、顧客の購買フェーズのどこに注力するかという点が異なります。
MA(マーケティングオートメーション)の導入目的と役割
MAの主な導入目的は見込み客の発掘と育成です。マーケティング用語では、前者を「リードジェネレーション」、後者を「リードナーチャリング」といいます。
リードジェネレーションとは、前述のとおり自社のターゲットになりうる見込み顧客を獲得することです。「獲得」とは企業からアプローチするための顧客情報を取得することであり、具体的には、氏名やメールアドレス、電話番号、法人顧客であればさらに、社名や部署などの情報がそれにあたります。
見込み顧客を獲得する手法は、展示会やセミナーを開催して名刺を交換したり、記事広告から商材の申し込みフォームへ誘導したりと、これまでにもさまざまな方法がありました。しかしMAを用いることで、その施策をさらにパーソナライズできます。
例えば、自社サイトで商材Aのページにアクセスした見込み顧客が数日後にサイトのトップページを訪問した際、複数の情報を一律に表示させるより、商材Aに関するセミナーや資料の案内を表示した方が申し込まれる確率が高くなるでしょう。このように各個人の関心に合わせた情報を提供することで、見込み顧客を獲得することがMA導入の目的の一つです。
MAのもう1つの導入目的は「リードナーチャリング」です。リードナーチャリングとは、見込み顧客に対し自社のサービスや商材への必要性を喚起し、興味を醸成していくことです。具体的には、ブログやメールマガジンなどを通してコンテンツを発信したり、セミナーやキャンペーンの案内を送ったりといった施策です。
今までも同様の手法はありましたが、MAでは自社サイトの閲覧状況やメールの反応などによりコンテンツの内容を変えるなど、条件によって異なるシナリオを設定することが可能です。各個人の確度にあわせて複数のシナリオを用意することで、徐々に見込み顧客の商材への関心を高められます。
CRM(顧客管理システム)の導入目的と役割
CRMの主な導入目的は、既存顧客と良い関係を構築することでLTV(Life Time Value)を高めることです。LTVとは「顧客生涯価値」と訳され、「一人の顧客が生涯において企業にもたらす利益」のことを意味します。LTVを高めるということは、端的にいうと自社の商材のリピーターや継続ユーザーを増やすということです。具体的には、顧客の購買履歴や問い合わせなどのやりとりを管理し、その情報をもとに顧客に喜ばれるサービスや対応を提供しようというものです。
新規顧客へ商材を売ることは、既存顧客の売り上げを伸ばすより難しく、コストも数倍かかるといわれています。そのため、近年特に既存客へのアプローチが重視されています。
このように見込み顧客が商材を購入するまでがMAのフェーズ、購入後がCRMのフェーズといえますが、購入後はMAを使わないということではありません。購入後もリピーターになってもらうためには、個人ごとに最適な施策が重要であり、そのためにはMAが欠かせません。CRMで管理している顧客情報を活用し、MAでアプローチする流れで、相互に保持しているデータを連携してツールをより活用することができます。
MAとCRMの違い(2):機能が異なる
MAとCRMのもう一つの違いは、備わっている機能が異なるという点です。一部共通するものもありますが、MAとCRMはそれぞれ導入目的や役割が異なるため、当然ながら機能や扱うデータにも違いがあります。
それでは、各ツールの機能をみていきましょう。
MA(マーケティングオートメーション)の機能
MAには「リードジェネレーション」や「リードナーチャリング」を行うための機能が揃っています。
ツールにより違いがありますが、主に以下のようなことが可能です。
- 顧客管理
- メール配信
- フォームやランディングページの作成
- 行動トラッキング
- スコアリング
- 広告やSNSなどの機能
- シナリオにもとづいたプログラム作成
- Webやメールに表示するコンテンツの出し分け
見込み客の獲得においては特に、動的なコンテンツの出し分けや広告連携の機能が使われます。ツールによってはメールアドレスを取得する前でも、ブラウザのCookie情報をもとに、自社サイトに表示するコンテンツや外部の広告の表示内容を変えることができます。
前述の例でとりあげた、商材Aのページにアクセスした訪問客に対し、サイトに再訪した際に関連情報を表示させるという仕組みは、この動的コンテンツの出し分け機能によるものです。
また、広告との連携機能では、自社の商材Aのページを閲覧した見込み客が他のサイトを閲覧した際に、商材Aの広告を表示させるといったことも可能です。スコアリングやシナリオにもとづいたプログラム作成は、特にリードナーチャリングにおいて使われます。
MAでは前述のとおり、属性だけではなく行動情報にもとづいたセグメントが可能です。従って、商材Aに関するメールを配信し、開封した人に対しては一週間後に商材Aのトライアル情報のメールを送る、開封しなかった人に対しては商材Bに関するメールを送るというように、見込み客の反応に応じてアプローチを変えることをプログラムにより処理できます。
さらに、動的なコンテンツの出し分けにより、一つのメール内で部分的に内容を変えるといったこともできるため、あらゆるパターンのシナリオ設定が可能です。
また、スコアリングでは、メールをクリックしたら3点、資料をダウンロードしたら10点というように行動に応じてスコアを付与し、一定のスコアに達した際には営業にアラートを送信することで、見込み客の関心度が高まったタイミングにアプローチすることができます。
上記のように、MAの機能はCRMなど他のツールの機能と重なる部分もありますが、メールの反応やフォームの申し込み状況、Webサイトの訪問などを含む行動情報をMAに集約し、そのデータをもとに施策を実施できる点が特徴です。
そのほかMAの特徴的な機能については「MAツール「HubSpot」でできること」をご覧ください。
CRM(顧客管理システム)の機能
CRMの主な機能は以下のとおりです。
- 顧客管理
- メール配信
- フォームやランディングページの作成
- 購買管理
- セミナーやイベントの申し込み管理
- 問い合わせなど顧客対応の履歴管理
その他、ツールによっては商談管理やカスタマーセンターの対応管理などの機能に特化しているものもあります。
顧客データは属性情報や購買履歴を保持します。フォームの申し込みなどの情報も記録していますが、MAのように見込み客の行動を条件として複数のシナリオを実行させるといったことには向いていません。
CRMは顧客からの問い合わせや購買記録、自社の応対内容など、顧客に関する履歴管理を得意とします。例えば、顧客から質問があった際に、過去の購買状況や対応履歴をみることで、きめ細かな応対ができれば、その企業やサービスに関して良い印象を与えることができるでしょう。このように、CRMには顧客との良好関係を保つための機能が揃っています。
MAとCRMのどちらを選ぶべきか
MAとCRMのどちらを選ぶべきか迷ったときは、「導入の目的は何か」をまず整理したうえで、目的を達成できるツールを検討しましょう。
例えば見込み顧客の獲得や育成など、購買までのステージに力を入れたいケースはMAが適しています。一方で購入履歴や問い合わせ対応など、既存顧客との関係構築に力を入れたい場合はCRMを選択しましょう。
近年はMAとCRMの機能を兼ね備えるツールも登場しています。見込み顧客の獲得から育成、購買後の顧客との関係構築までを一連の流れとして実行するためには、MAとCRMの連携、もしくは両方の機能を兼ね備えたツールの導入がおすすめです。
以下ではMAとCRMを連携させる3つのメリットを紹介します。
連携させるメリット(1)営業部門への顧客引き渡しがスムーズになる
MAとCRMの連携により、マーケティング部門が育成した見込み顧客の情報を、営業部門へとスムーズに引き渡せます。
マーケティング部門から営業部門へと顧客情報を引き渡すときは、単に見込み顧客の属性情報や行動情報だけを渡せばよいわけではありません。マーケティングで実施したアプローチや設定したKPI、購入意欲の評価も共有する必要があります。
MAとCRMの連携によって、マーケティング部門と営業部門との間で情報共有ができる環境を構築可能です。購入意欲の高い見込み顧客を発見してすぐに引き渡せるため、営業効率も向上します。
連携させるメリット(2)機会損失を減少できる
マーケティング部門から営業部門への顧客引き渡しがスムーズになれば、機会損失の減少につながります。マーケティング部門と営業部門の連携がうまくできない場合は、獲得したはずの見込み顧客が離れてしまい、機会を損失してしまう可能性があるためです。
たとえ購入意欲の高い見込み顧客であっても、顧客引き渡しに手間取るうちに競合他社に奪われたり、見込み顧客として登録されている企業の担当者が変わってしまったりすることで購入意欲そのものが低下してしまうケースもあるでしょう。
MAとCRMを連携させることで、顧客とのコンタクトに空白期間をなるべく作らず、購入意欲が高い状態で営業アプローチをかけられます。
連携させるメリット(3)顧客へのフォローを自動化できる
MAとCRMの連携により、顧客へのフォローを自動化できます。顧客への自動的なフォローは、顧客の育成や営業活動のリソース確保を図るうえで重要なポイントです。
例えばメルマガを開封した顧客に対して、数日後にフォローメールを自動的に送信できると、顧客と自社の間に定期的なコンタクトが生まれます。フォローメールをきっかけに顧客が自社の商品を検討して、購買につながるケースもあるでしょう。
顧客へのフォローを自動化できると、今まで人力でフォローしていた担当者の労力や時間を軽減できます。浮いたリソースを顧客の分析やアプローチに回すことで、業務効率化も期待できます。
MAやCRMを活用している企業の成功事例
MAやCRMを活用している企業として、大手飲料メーカーであるキリンの成功事例を紹介します。
MAとCRMの連携を実現したキリン
キリンは同社のECサイト「DRINX」に、MAツール「b→dash」を導入しました。
キリンが行っていたマーケティング・営業方法は、広告での集客から顧客データをDBに取り込み、メールなどでアップセルをかけるオーソドックスなCRMの手法です。しかし、従来の手法にはマーケティングから営業、購入までの購入導線のデータ結合ができず、プロセス確認が断続的になる課題を抱えていました。
キリンはb→dashの導入によって、外部パートナーとデータのやりとりが必要なくなり、データの安全性が向上しました。レポート作成にかかる時間も大幅に削減され、意思決定の速度向上もできています。課題であったデータ連携の柔軟性も実現し、MAとCRMの連携に成功した事例です。
MAやCRMを活用している企業の成功事例は、下記記事でより詳しく解説しています。
【業界別MA導入事例特集】MA導入の目的とは?
【業界別CRMの成功事例特集】顧客情報をうまく活用するポイントとは?
MA・CRMは「SFA」と組み合わせてより効率的に!
見込み顧客の獲得・育成を支援するMAや、顧客管理・購買管理を担うCRMは、「SFA」との組み合わせもおすすめです。MA・CRMをSFAと組み合わせることで、効率的な営業活動が可能になります。
SFAとは、「Salesforce Automation(セールスフォースオートメーション)」の略で、直訳すると「営業支援システム」という意味です。頭文字を取って「エス・エフ・エー」と呼ばれ、テクノロジーの活用により営業活動全体を支援する手法、および営業活動を支援するツールそのものを指します。
SFAの役割は、営業活動に関するノウハウを蓄積・標準化して営業の属人化を解消し、売上向上につなげることです。SFAは顧客管理・商談管理・行動管理・売上管理といった営業アプローチの進捗状況を管理できる機能を搭載し、情報共有により営業活動の効率化を支援します。
SFAの基本的な機能については、下記記事で詳しく解説しています。
MAとセットで使いたいSFA(営業支援システム)の基本的な機能
おすすめのツール「HubSpot」について
「HubSpot」は、MA・CRMの機能を兼ね備えるとともに、SFAの機能もある世界シェアNo.1のMAツールです。
HubSpotはMAとしてパーソナライズマーケティングを実施できる「Marketing Hub」、CRMには顧客関係管理ができる「HubSpot CRM」が搭載されています。そして営業支援をカバーする「Sales Hub」もあり、HubSpotだけでMA・CRM・SFAの機能を利用できる点が魅力です。
MA・CRM・SFAにそれぞれ異なるツールを選択する場合、ツール間の連携ができない可能性に注意しなければなりません。その点、3つの機能が全て揃っているHubSpotであれば、スムーズな連携を実現可能です。
また、HubSpotには他にも顧客対応に特化した「Service Hub」や、Webサイト作成が行える「CMS Hub」などの便利な機能もあります。
マーケティング・営業を効率化するためには、MA・CRM・SFAの全てを活用できるHub Spotがおすすめです。
「HubSpotで何ができるのか」詳細については、下記事で詳しく解説しています。
世界シェアNo1のMAツールが無料? 「Hubspot」無料版の機能とできること
まとめ
今回はMAとCRMの違いについて、目的・機能の違いや、どちらを選ぶべきかを紹介しました。
MAとCRMは「どちらがより優れている」といった関係性はありません。見込み顧客の獲得・育成に強みのあるMAと、顧客との関係構築に強みのあるCRMでは、対象となる施策フェーズが違います。MAとCRMのどちらかで迷ったときは、導入の目的を見つめ直して、自社にとって優先度が高いほうを選びましょう。
MAとCRMを連携させる場合は、MA・CRMに加えてSFAの機能も備えた「HubSpot」がおすすめです。MAとCRMの連携は、マーケティング部門と営業部門の連携強化につながり、顧客引き渡しのスムーズ化など多くのメリットがあります。
現在MAの導入を検討されている方や、MA・CRMの一方のみを利用している方は、MAとCRMを連携させる選択肢も検討して、導入するツールを選びましょう。