当シリーズで繰り返し伝えていることですが、Web広告はテレビCMを追い抜き、日本の広告宣伝のメイン手法になります。
しかし、Web広告は比較的新しい広告手法のため、投資に踏み切れない企業も少なくありません。

また、最近はアドテクノロジー(広告技術)の進歩により仕組みが複雑化・高度化し、Web広告を積極的に活用している企業とそうでない企業に2分されている印象です。
しかし、今後ほとんどすべての業界においてWeb広告が重要になるであろうことは言うまでもありません。電話が廃れ、メールの代わりにチャットが普及した現在、従来の宣伝、営業戦略が通用しなくなってきています。

そこで今回は「Web広告の出稿前に知っておきたい5つの原則」を紹介します。
この原則を理解していれば、Web広告への投資が大きく失敗するということはないでしょう。

原則1:計画段階で広告成果は8割決まっている


Web広告は非常に戦略的な広告宣伝方法です。テレビCMや新聞広告のように、「有名番組のCM枠に掲載されるから効果が出る」「日経新聞の一面を買ったから効果が出る」という話ではありません。

Web広告のメリット・デメリットでも紹介しましたが、Web広告の一番のメリットは「数字が見えること」です。

弊社でも、広告出稿する際は事前に様々な広告手法を検討し、過去事例や市場調査からシミュレーションを作成し、実際の費用対効果を予測します。
シミュレーションについては「広告効果を予測する広告シミュレーションの作成方法」をご覧ください。

Web広告は計画段階で様々な数字を考慮し、「どの広告手法にどの程度の費用を投資して、どの程度の成果が得られるか」を導きます。
このプロセスを省いてしまうと、成果を得ることは非常に難しくなります。また、Web広告が最初からうまくいくことは少なく、様々な数字をもとにPDCAを回して効果を上げていきます。しかし、最初に明確な計画がないとそもそも成果がいいのか悪いのかといったことが判断できません。
広告代理店など、広告の専門家であれば必ず計画を立てます。ぜひ相談してみてください。

原則2:広告成果が上がる=売り上げが上がる ではない

原則2広告成果が上がる=売り上げが上がるではない
Web広告で成果が上がれば売り上げも上がるかというと、決してそういうわけではありません。業種にもよりますが、売り上げは広告よりもその後の受注プロセスのほうが大きく影響します。

[caption id="attachment_8283" align="aligncenter" width="1000"]Web広告の成果は売上に直結しない。売り上げにはWeb広告が担う領域以外の要素が重要になってくる Web広告の成果は売上に直結しない。売り上げにはWeb広告が担う領域以外の要素が重要になってくる

上図は広告と売り上げの関係を図式化したものです。広告ができることはあくまでも問合せ件数を増やすことまでで、その後の受注率や受注単価によって売り上げは変動します。
コンバージョン率はターゲティング設定など広告運用側で改善できる部分ではありますが、商品力などにも大きく左右されるため、どちらの領域ともいいづらい部分です。

広告成果と売り上げの関係性

広告成果と売り上げの関係性

例えば、100万円の広告をかけ、1000万円の売上を達成できたとします。広告投資が売り上げの10%というのは業種にもよりますが、十分な数字です。
では、広告運用の成果を上げるため、クリック単価やコンバージョン率を改善したとします。しかり、営業フローの確立が遅れたり、リソース不足などの要因で受注率、受注単価が低下したらどうなるでしょうか。

広告成果と売り上げの関係性

広告成果と売り上げの関係性 広告成果は向上したが他の領域の成果が低下したため売り上げが減少している

上図の例ではクリック単価を抑え、コンバージョン率を向上させることができたため、広告からの問合せ件数を3倍に増やすことができました。広告成果としては非常に大きな改善です。
しかし、その後の受注率、受注単価が低下したことで、売り上げは40%も減少してしまっています。

このように、Web広告の成果と売り上げは直結しません。広告出稿する際は、受注率や受注単価まで考慮しておく必要があります。

原則3:広告費は目標数値から逆算して考える

原則3:広告費は目標数値から逆算して考える
Web広告の広告予算は目標から逆算して考えましょう。
テスト目的やとりあえずのお試しを目的の場合を除き、広告投資には必ず目標があるはずです。その目標から逆算することで、適切な広告予算が見えてきます。

やってはいけないことが、「とりあえず余った予算の一部をWeb広告に回そう」といった決め方です。Web広告には手法、目的によって適切な予算が大きく異なります。例えば、YouTubeの動画広告に認知目的で10万円投資してもほとんど意味はありません。YouTubeのように大きなメディアに出稿し認知を得ようと思うと、テレビCMほどとは言わないまでもある程度の予算を用意する必要があります。

売り上げ目標から適切な広告費を算出する方法

売り上げ目標から適切な広告費を算出する方法

こちらは売り上げ目標を達成するための広告費の計算方法の例です。目的が認知拡大か、問い合わせ獲得かなどによって計算方法は変わりますが、考え方は同じです。最終目標を分解して適切な広告費を求めます。

売り上げ目標から適切な広告費を算出する方法

受注単価や受注率、コンバージョン率、クリック単価を予測した結果、3000万円の売り上げを得るために必要な広告費は600万円となった。

仮に売り上げ目標が3000万円で、受注単価が5万円、受注率が25%だとします。広告手法の過去実績や自社商品の優位性などからある程度のコンバージョン率やクリック単価を当てはめると、目標達成のために必要な広告予算が分かります。

一方、こうした試算をしていないと、適正な広告予算が分からず、結果その投資が成功だったのか否かが分かりません。
こうした計算はあくまでも概算の予測値なので、決してその通りになるわけではありません。しかし、こうした試算のもと投資するのとそうでないのとでは、成果に大きな差が生じます。

原則4:「LTV(ライフタイムバリュー)」を考える

原則4:「LTV(ライフタイムバリュー)」を考える
Web広告に限らず、企業の長期的な利益を見るうえで重要な指標に「LTV(ライフタイムバリュー)」があります。LTVは「顧客生涯価値」と訳され、1人の顧客から得られる総合的な利益の考え方です。
例えば、住宅であれば一度の買い物は非常に大きいですが、一生に何度も購入するものではないため、「1度の購入=LTV」になります。一方、ネットフリックスのようなサブスクリプションモデルの場合、一度の購入は数百円ですが、長期的な購入が見込めるため「1度の購入×継続期間=LTV」となります。Amazonや楽天のようなECサイトも同様の考え方ができます。

なぜLTVを考えることが重要かというと、マーケティングには「1:5の法則」があるからです。「1:5の法則」とは、新規顧客の獲得には既存の顧客に再購入してもらうのに比べて5倍のコストがかかるという法則です。

Web広告は費用対効果を明確にシミュレーションできますが、その際よくあることが「1500円の商品を購入してもらうために必要な広告費が1800円、赤字だから投資できない」と考えてしまうことです。
しかし、リピート性の商品で「1:5の法則」に当てはめて考えると、一度購入してくれた人にもう一度購入してもらうためのコストは300円になります。平均して10回購入してもらえると考えると、1500円×10回で15000円の売り上げに対し、必要な広告費は初回購入の広告コスト1800円+継続購入の広告コスト300円×9回で4500円となります。
こう考えると、「1500円の商品を購入してもらうために必要な広告費が1800円、1回の購入では赤字だけどLTVを考えると1万円以上の利益がある、つまり投資価値がある」と考えることができます。

LTVを考えることで、新規顧客を獲得するためにいくらの広告投資が可能なのかといった基準になります。

LTVの算出方法はいろいろありますが、代表的なものには次の計算式があります。

  • LTV = 顧客の年間取引額 × 顧客の継続年数
  • LTV = 顧客の平均購入単価 × 平均購入回数
  • LTV = 顧客の平均購入単価 × 平均購入頻度 × 平均購入期間

原則5:広告運用は長期戦である

原則5:広告運用は長期戦である
Web広告の運用は計画を立てて実施し、数字を計測して改善しの繰り返しです。すぐに成果が出ることもあれば、2か月成果が出ず3か月目に急に出ることもあります。

例えば、弊社では下記のような運用プランを持っています。

広告運用プラン

弊社が持っている広告運用プランの一例

    【各ステージの目的】

  • 試験期:市場の把握、商品力の把握
  • 増大期:コンバージョン数の増加
  • 改善期:費用対効果の向上
  • 拡大期:多媒体への拡大、機会損失の縮小
  • 拡散期:市場シェアの獲得、ブランディング

試験期に始まり、増大期と改善期を繰り返し、最終的には市場シェアの拡大やブランディングといった事業目標に繋げます。しかし、新しく広告施策を始めてから拡大期まで到達するにはスムーズにいって1年はかかります。

こうした長期的な運用プランはもちろん、日々の運用も長期戦です。Web広告のメリットの記事で柔軟に運用できることを伝えました。実際、Web広告では今日思いついたことを今日実施し、明日にはやめてしまうといったことが可能です。しかし、それが成果に繋がるかというと決してそうではありません。
適切な運用改善を行う場合、必ず「計測期間」を設ける必要があります。

Web広告のPDCAサイクル

Web広告は適切なスパンでPDCAサイクルを回すことが重要

例えば、クリック単価を抑えるために変更を加えたとします。その翌日むしろクリック単価が高くなっていた場合、この変更は失敗だったのでしょうか。
それはまだわかりません。多くのWeb広告は需要や競合の動きに連動するため、たまたま需要や競合の動きに変化があっただけかもしれません。その変更を正しく評価するためには広告予算や変更内容にもよりますが、最低でも3日、一般的には2週間必要といわれています。

このことを知らずに何か改善施策を実施してそのあとすぐのデータを元にまた違う施策を実施したりしてしまうと、何が要因で数字が動いたのかわからなくなります。頻繁に変更を加えた結果、最適化の見通しが立たなくなってしまうというのは経験の少ない運用者によくあることです。

たとえ一時的に数字が悪化したとしてもすぐに元に戻したりせず、なぜ悪化したのか、本当に悪化したのかがわかるまで計測する。Web広告の運用では非常に重要な原則です。

まとめ|Web広告の5つの原則

今回はWeb広告の5つの原則として「計画段階で広告成果は8割決まっている」「広告成果が上がる=売り上げが上がるではない」「広告費は目標数値から逆算して考える」「LTV(ライフタイムバリュー)で考える」「広告運用は長期戦である」を紹介しました。

特にどれが重要というものはなく、すべて重要な原則です。
Web広告に対しては「効果的らしい」「出稿額が増えている」「最新のテクノロジーが使われている」といったイメージから、出せば効果が出ると考えている企業も少なくありません。
しかし、決してそんなことはなく他のマーケティング施策や営業戦略、事業戦略と同じく、計画して実行して評価して改善するといった流れが重要です。

Web広告を出稿する際はこうした原則を意識してみてください。