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BtoC EC(消費者向けECサイト)の市況規模は、2018年度が19兆3000億円。
年間5~10%の成長が続き、2024年には、27兆2000億円にまで拡大すると予測されています。
また、オムニチャネル・コマースの市場規模は、2018年度が56兆6000億円。年間5%程の成長が続き、2024年の市場規模は76兆1000億円にも拡大すると予測されています。
※オムニチャネル・コマース:最終的な購買がインターネットかリアル店舗かを問わず、一般消費者向けの商品・サービスを、インターネット上の情報を見たうえで購入、利用すること
画像:野村総合研究所
Amazonや楽天といったショッピングモール型ECサイトの進歩、消費者のライフスタイルの変化、キャッシュレス化、AIやIOTの進化など、EC市場の成長材料は限りなくあります。EC市場をとりまく環境は、目まぐるしいスピードで変化しており、市場規模、消費者行動への影響ともに、数年前とは大きく異なります。
実店舗へ足を運び、気になった商品をAmazonや楽天で調べ、レビューを見たり、一番安いサイトで購入するなんて、10年前に想像できたでしょうか。
「アレクサ、ミネラルウォーターを注文して」「アレクサ、ドッグフードを再注文して」と声をかけるだけで商品が届くなんて、5年前に想像できたでしょうか。
今後も成長が予想されるEC業界ですが、どのような変化をとげるのでしょうか。今回は、これから注目されるECトレンドを4つ紹介いたします。
ショールーム型店舗「GU STYLE STUDIO」の登場
画像: GU STYLE STUDIO
「リアル店舗で商品を確認して、ネットで一番安いサイトで買う」
Googleのショッピング検索や、価格ドットコムなどの比較サイトを利用すれば、「どこが最も安いか」はすぐに調べる事はできます。
多くのユーザーは、リアル店舗で商品の品定めを行い、購入を決意した後、特別な理由がなければ、リアル店舗ではなく「最も安いECサイト」からその商品を購入します。
リアル店舗は、品定めのためのショールームと化しており、販売方法に頭を悩ませる店舗も多いのではないでしょうか。
この消費者行動の変化を受けて、2018年11月に東京の原宿に「GU STYLE STUDIO」がオープンしました。「GU STYLE STUDIO」はリアル店舗ですが、商品の販売は行わず、全ての商品がサンプルです。
購入は専用のアプリからECサイトで行います。ショールームの役割に特化した事で、店舗は無駄な在庫を減らす事ができ、消費者も手ぶらで買い物して自宅やコンビニで商品を受け取ることができます。
ファッション業界のECは、サイズ感や色味、質感、組み合わせなど、購入を決める重要な情報をWeb上で伝えることができないなど、課題がありました。一方、リアル店舗では、在庫がない、荷物になるなどの不満もあります。
「GU STYLE STUDIO」は、リアル店舗とECを役割分担し、店舗側、消費者側それぞれにメリットのある形になっています。
ECの影響力が増す中、リアル店舗をどのように活用するかが重要になってきます。消費者のニーズやライフスライルが多様化する中、リアル店舗とECサイトの活用も多様化が求められます。
動画にうつっているものを全て商品化「TIGコマース」
画像:TIGコマース
これまで動画とECは全く別のコンテンツでした。動画で商品の魅力を伝えても、商品を購入するには、動画を停止してECサイトに遷移してもらう必要があります。
動画は商品の魅力を伝えるうえで有効なコンテンツですが、消費者の行動をシームレスに促せるコンテンツではなかったのです。
「TIGコマース」は、動画内で気になる商品があった場合、タップしてフリックすれば、それを簡単にカートに保存する事ができるサービスです。
動画を見て「これ欲しいなー」と思った商品を、後で検索することなく、動画を見ながらそのまま購入できます。
購入までの一連の流れを動画上で行えるため、消費者の購買意欲を鎮める事なく「衝動買い」してもらうことが期待できます。
また、「動画内にうつっているテーブルセットをすべて買いたい」「動画内のモデルと同じコーディネートで一式揃えたい」等のまとめ買いの促進にもつながります。
昨年、大きな話題となったInstagramのショッピング機能「ShopNow」や、今回紹介した「TIGコマース」など、投稿画像や動画から直接購入できる新たな販売導線を持つサービスが登場しています。
今後、各メディアやコンテンツとECがさらにシームレス(境目がなくなる)になっていくでしょう。
声で買い物する「ボイスコマース」
画像:Amazon
「アレクサ、キッチンペーパー注文して」のCMでお馴染み、声で買い物をするボイスコマースも、更に普及が進みそうです。
調査会社eMarketerが2017年に発表した調査結果によると、2017年は5520万人が「Google Home」や「Amazon Echo」といったスマートスピーカーを使用しており、2018年は6240万人が利用すると予測しています。
調査会社のComscoreは、2020年までにすべての検索の50%が音声検索に変わると予測。Gartnerは2020年までに検索行動の3割が音声になると考えています。
そして、その流れはコマースにもやってきます。
今後、AIの進化とともに、音声アシスタントの精度もあがっていくでしょう。また、IOTの普及により、より気軽に(家族におつかいを頼む感覚で)、様々な「もの」に話しかけ、商品購入をお願いする未来がやってくるかもしれません。
すでに「Amazon Echo」では世界最大規模のECサイトAmazonと密接に連携しており、「アレクサ、○○を購入して」「アレクサ、○○をカートに追加して」というだけで、Amazonで買い物を行うことができます。
スマートスピーカーというと、まだまだ普及が先に感じていますが、iPhoneに搭載されているSiriをはじめ、すでに多くのデバイスに音声アシスタントが搭載されており、多くのユーザーが自然に使っています。
消費者のライフスタイル全てが購買ポイント「クロスコマース」
オンライン、オフラインの垣根なく情報を摂取し、シームレスに行動する消費者は、店舗にいるときやECサイトを覗いているときに限らず、どこで購買意欲が高まるかわかりません。
多様化する購買意欲(セールスチャンス)を逃さないための考え方が「クロスコマース」です。
例えば、Instagramはショッピングをする場ではなく、消費者自身が自分のために見ているSNS(コンテンツ)です。
そして、消費者がInstagramに投稿された写真を見て、「欲しい」と思った瞬間の購買意欲をうまくとらえらたサービスが「Shop Now(ショッピング機能)」です。
これ以外にも、消費者のライフスタイル全てにおいて、「購買意欲(セールスチャンス)」がうまれる瞬間があります。
すでに「自社のECサイトをしっかりプロモーションすればOK」という時代ではありません。今後はより様々なチャネルを活用し、セールスチャンスを逃さない施策が重要になります。
- SNS×コマース
- TV×コマース
- ゲーム×コマース
- 旅行×コマース
- 通勤×コマース
- 食事×コマース
上記のように、クロスコマースの可能性は無数に考えることができます。「消費者との接点をいかに増やせるか」と「購買を実現するための仕組み作り」が重要です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、長期間にわたって2ケタ成長が見込まれるEC市場について、今後重要になってくるトレンドを紹介しました。
テクノロジーの進化にともない「オンライン」「オフライン」の垣根は、ほとんどなくなってくるでしょう。
消費者のライフスタイルにあわせ、いかにストレスなく快適に購買させるかが、成功の鍵になりそうです。
今回紹介した4つのトレンドは、どれも重要です。「GU STYLE STUDIO」のようなショールーム型店舗は今後どんどん増えていくでしょう。
TIGコマースのようにコンテンツから直接購買行動につなげる考え方は、今後すべてのSNSやメディアに浸透していくと考えられます。
各調査機関が発表しているように、音声検索の浸透とともにボイスコマースの市場規模もどんどん大きくなっていくでしょう。
また、こうした様々な変化に対応し、どんどん多様化する消費者の購買意欲をとらえるクロスコマースを考えられる人材の価値は非常に高まるでしょう。ECについて詳しいWeb担当者は大勢います。しかし今後は、ECやWeb上のプロモーションだけでなく、SNS運用、リアル店舗と連動したマーケティング施策を考えるスキルが求められます。