Web広告を支える4つの仕組み|Web広告の出稿前に知っておきたい

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Web広告の出稿前に知っておきたい|Web広告を支える5つの仕組み

初めてのWeb広告|広告出稿前に知っておきたいことシリーズ

「初めてのWeb広告|広告出稿前に知っておきたいことシリーズ」というテーマでお送りしているこのシリーズも5回目です。
Twitterを見ると、いろいろな人がこの記事を話題にしてくれているみたいで、とてもうれしいです。

ところで、広告主は広告の仕組みを理解する必要があるのでしょうか?
一昔前だと、「必要ない」という意見が多かったと思います。過去主流だったマスメディア広告は手続きやコネクションが必要ですが、仕組みそのものは単純。購入した広告枠に入稿した広告が掲載されるだけだったからです。

しかし、Web広告が主流となった今、広告主も最低限広告の仕組みを理解しておく必要があると考えています。
なぜなら、Web広告が主流になったのも、Web広告の費用対効果が高いのはすべてWeb広告の仕組みに理由があるからです。仕組みを正しく理解することで、「なぜWeb広告に投資すべきなのか?」「マスメディア広告の予算をWeb広告に分配すべきなのか?」といった判断が可能になります。
仕組みを理解することは、代理店や営業マンに言われたことを鵜呑みにするのではなく、正しく投資判断をするために欠かせません。

今回はDSP広告の仕組み【最新のアドテクノロジー】で紹介しているようなRTB(Real-Time Bidding)やDMP(Data Management Platform)といった複雑な用語は出てきません。
ほとんどのWeb広告に共通して用いられている仕組み、概念として「cookie」「ターゲティング」「オークション」「自動化」の4つを紹介します。

Web広告を支える仕組み① cookie

Webマーケティングを語るうえで欠かせないのが「cookie」という仕組みです。広告だけでなく、アクセス解析やログイン情報の保存、ECサイトのレコメンドなど、Webサービスを提供するうえで欠かせない仕組みです。
GDPRの施行により、EU圏ではcookie情報も個人情報として保護対象になりました。そのほかにも情報漏洩リスクなどが課題となり、cookieに頼らない仕組み構築が急がれています。しかし、当分はcookie用いたWebサービスの提供、広告出稿が中心になるでしょう。

Cookieとは、GoogleChromeやedgeといったブラウザが持っている機能で、ブラウザに情報を保存する仕組みです。似たような仕組みに「キャッシュ」というものがありますが、保存するデータの内容が違います。
広告主が厳密に理解する必要はありませんが、「cookie」やユーザーがブラウザに入力した情報(IDやパスワードなど)を保存し、「キャッシュ」は見ているWebサイトの情報(画像やテキスト)を保存します。

例えば、検索結果やブログ等を読んでいると、一度クリックしたリンクが青色から紫色に変わります。これはブラウザが「このリンクはクリックしたことがある」という情報をcookieに保存しているからです。
また、一度ログインしたサイトにはログイン情報を入力しなくても入ることができます。これも「このサイトのログイン情報はこれとこれ」という情報をcookieに保存しているからです。
一度見たことがあるサイトは読み込みが早いと感じたことはありませんか?これはキャッシュがもう一度読み込むであろう情報を前もって保存しているからできることです。

このようにキャッシュとcookieはWebのいたるところで利用されています。

また、アクセス解析で「ユニークユーザー」という言葉がありますが、これも厳密には「cookieが異なるアクセスの数」です。アクセス解析も解析の基本にcookieがあります。

cookieはWeb広告でも非常に重要な役割を担っています。cookieが存在するため様々なターゲティング、リマーケティングが可能になります。
ECサイトでTシャツを見ていたら、その他のページを見ていても同じTシャツの広告が出てきた…似たような経験をされた方は多いと思います。これはcookieに「このTシャツを見た」という情報を保存しておいて、広告主がその情報を持ったユーザーに広告配信するよう設定しているからです。

キャッシュやcookieが実際にどういうものかを理解する必要がありません。ただ「キャッシュやcookieという仕組みがあり、ユーザーの様々な情報を保存している」とだけ覚えておいてください。

Web広告を支える仕組み② ターゲティング

Web広告とマス広告の最大の違い、それが「ターゲティング」です。ターゲティングとはざっくり言ってしまうと「広告を届けたい人にだけ広告を届ける機能」です。

マス広告にターゲティングという考え方が一切ないわけではありません。電車の交通広告であれば沿線などでターゲティングできます。新聞広告もある程度のエリアを絞ることができます。

しかし、Web広告のターゲティングはマス広告の比ではありません。この時役立つの前述のcookieです。cookieにはユーザーが過去に見たWebサイトやフォームに入力した情報が保存されています。人はWeb上で様々なコンテンツに触れているため、興味関心を特定することはそう難しくありません。
例えば、若年層向けの化粧品について頻繁に調べているユーザーは高確率で若い女性だと考えられます。また、スマートフォンの位置情報から、どこに住んでいるか、どこに頻繁に訪れているかも分かります。

Google広告設定
こちらは、私個人がGoogleにどのように識別されているかを確認したものです。私の場合、25~34歳の男性だと識別されています。実際にその通りなのですが、Googleに年齢を教えた記憶はないので驚きです。
また、音楽が趣味で頻繁に買い物をしたり調べたりしているのですが、DJ用機材やインディーズ映画、オーディオ機器など、音楽関係に興味があると識別されているようです。

Google広告設定
詳しく見てみると、なぜ特定されたかを知ることができます。私の場合、Google検索やYouTubeの閲覧内容、そのほかいろいろなWebサイトの閲覧などから「インディーズ音楽、オルタナティブミュージック」に興味関心があると推定されているようです。

私はGoogleから120個以上の項目で識別されていることが明らかになりました。もちろん「これには興味がないよ」という項目もありますが、意外なほど正確です。
Google広告設定というサイトから確認できるので、ぜひ見てみてください。

Google広告では、こうした無数の項目からユーザーの興味関心などを識別し、ターゲティングします。

ターゲティングの方法や項目は手法によって様々

前述のGoogleであれば数百個の興味関心や購買意向、エリア、年齢性別などのデモグラフィック情報、収入などの項目でターゲティングできます。そのため、Google広告を使って「20代前半の大阪に住む女性で、恋愛映画に興味がある人」といったターゲティングが可能です。

この項目は広告手法によって様々です。
Facebookは実名登録で誕生日も登録します。さらに役職や所属企業、交際ステータスを設定したり、Facebookページにいいねを押したり、グループに参加したりできます。つまり、Facebookは得られるデータが非常に具体的なので、ターゲティング精度が高いという特徴があります。そのため「店舗から半径8km圏内に住んでいて、小学生以下の子供がいる人にファミリーレストランの広告を配信」や「経営者層、個人事業主に対して税理士紹介サービスの広告を配信」といった施策が可能になります。

Facebookで利用できるターゲティング
Twitter広告も興味深く、ツイート内容やフォローしているアカウントによるターゲティングが可能です。
Twitter広告のターゲティングについて、詳しくは「Twitterの特徴を最大限に利用したターゲティング」をご覧ください。

Twitter広告で利用できるターゲティング

また、Twitter広告には「テレビターゲティング」というものがあり、特定のテレビ番組を見ているであろうユーザーを対象にターゲティングできます。これはテレビを見ながらTwitterを利用する人が多いという独特な利用傾向があるからです。
このようにSNS広告はSNSによってそれぞれ特徴的なターゲティングを用意しています。

また、DSP広告も興味深いターゲティングを用意しているものがあります。DSP広告はDMPと呼ばれるデータベースに蓄積されたデータを元にターゲティングを行いますが、この中にはWebサイトの閲覧履歴やIPアドレスなど様々な情報があります。
企業ターゲティングに強みのあるDSP広告3選」で紹介したように、企業データベースと連携し職種や業種、企業規模(従業員数や売り上げ)などでターゲティングする手法も存在します。

完璧なターゲティングは存在しない

ターゲティングはWeb広告のもっともすぐれた特徴ですが、完璧ではありません。
例えば、Googleは検索履歴や閲覧履歴などからユーザーの興味関心を推測しているにすぎません。
Googleは私を「オートバイに興味がある」と推測しているようですが、実際にはありません。YouTubeを自動再生したときにたまたま見ていたか、友人にスマホを貸した際に検索したりしていたのかもしれません。
このように、完璧なターゲティングというのは存在しません。企業IPでターゲティングしても、その人が今もその企業で努めているとは限りませんし、会社のWi-Fiに接続せずに仕事している人もいるかもしれません。
Facebookは実名登録のため精度が高いですが、全員が100%正確な情報を入れているとも限りません。

完璧なターゲティングは存在しない。これは覚えておいてください。
オンラインリサーチの株式会社カンター・ジャパンによると、DSP広告のターゲティング精度は20~80%と大きなばらつきがあるようです。調査結果では、全体の半数を占める「女性」をターゲティングした場合、実際に女性に配信される割合は60~90%だったと述べられています。
ターゲティング精度の信頼できる手法を用いることも重要ですが、こうしたばらつきがあることを前提に置くことが重要です。

Web広告を支える仕組み③ オークション

Web広告最大のイノベーションはGoogleが2002年ごろ、検索連動型広告(リスティング広告)に導入した「オークション」という考え方です。
それまでのWeb広告は、マス広告と同じように枠を買い取るものでした。例えば、「WebサイトAの広告枠を1か月間300万円で買い取ります」と契約したら、WebサイトAの広告枠に1か月間掲載されるというものです。今では「純広告」と呼ばれてる手法です。

オークションという考え方が登場してから、Web広告の柔軟性が格段に上がり、戦略的に費用対効果を上げていけるようになりました。それが「運用型広告」という考え方の誕生です。

オークションとは、特定の広告枠やターゲティング(現在はターゲティングに入札するという考え方のほうが主流かもしれません)に対して入札を行い、最適な広告主(最高額で入札した広告主ではなく)の広告が表示されるという仕組みです。

イメージが付きやすいようにリスティング広告の例で考えてみましょう。
「30代男性が『バイク 中古』と検索したときに広告出稿したい」と考える広告主が10社いたとします。しかし、リスティング広告には4つしか広告枠が用意されていません。
それぞれの広告主が「自分は30代男性が『バイク 中古』で検索した際に〇円まで払ってもいい」と考えています。
リスティング広告では、30代男性が『バイク 中古』と検索した瞬間、これらの広告主がオークションに参加し、オークションに勝った企業が4つの広告枠を手に入れることができます。

セカンドプライスオークション

Google広告をはじめ、Web広告の主流は「セカンドプライスオークション」と呼ばれる形式のオークションです。これは「最も高い値を付けた人が、二番目に高い値を付けた人の入札価格で購入する」というもので、ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者ウィリアム・ヴィックリー氏が考案しました。
理論的には出品者と入札者の双方の機会損失を防ぐことができるため、Web広告では広く用いられています。

セカンドプライスオークションの仕組み
例えば3人の広告主がオークションに参加し、それぞれ80円、100円、120円で入札した場合、120円で入札した広告主が落札しますが、支払うのはセカンドプライスである100円となります。

広告ランクの理解が何より重要

オークションに対して理解しておくべきことに「広告ランク」というものがあります。呼び方は違っても、Google、Yahoo!、Facebook、Twitterなど主要な広告手法が採用している考え方です。
Web広告は単純に高い値段を付けたら広告が表示されるというわけではありません。

少し複雑ですが、Google広告には「品質スコア」という項目があり、「入札単価×品質スコア=広告ランク」となり、オークションでは広告ランクを競います。
つまり、例え入札単価を高く設定しても、品質スコアが低いとオークションに勝てず、広告が表示されません。

品質スコアは「推定クリック率」「広告の関連性」「ランディング ページの利便性」を10段階で評価したものです。

広告ランクが決まる仕組み-品質スコアと上限CPC
こちらはGoogle広告の例で紹介していますが、他の広告手法も似たような仕組みを持っています。
どんなに適切に運用してもランディングページがスマートフォン対応していないなど、品質スコアが低い場合、費用対効果を高めることができません。
広告成果を上げるには、広告費や運用だけでなくランディングページやバナーなどの制作物にも適切な投資を行うことが欠かせません。

Web広告を支える仕組み④ 自動化

Web広告を支える仕組み、今後数年でさらに重要になってくるのが「自動化」の理解です。
広告運用は自動化される範囲がどんどん増えています。
一昔前、広告運用は完全な専門スキルでしたが、最近はそうでもありません。ある程度しっかり勉強すれば成果を出せるようになりました。それは自動で最適化する機能が進み、リスティング広告のキーワード選定や様々な入札設定を機械がやってくれるようになったからです。

自動化について細かな仕組みを理解する必要はありません。ただし、Web広告は自動化が進み、中身がブラックボックス化していることは認識しておいたほうがいいでしょう。
優れた広告代理店、広告運用者でも、担当している広告がどこにいくらで出稿されているかを100%把握することはできません。

自動化にはメリットとデメリットがあるので、最低限そこを理解しておきましょう。

自動化のメリット

  • 運用コストの低下

自動化とともに運用コストが低下しています。リスティング広告の場合、広告運用者の主な仕事はキーワードごとの入札単価調整でした。
男性用サングラスを販売している場合、「サングラス おすすめ」よりも「サングラス 彼氏 プレゼント」のほうが売れる確率が高いでしょう。そうであれば、「サングラス 彼氏 プレゼント」のほうが高く入札したいと考えると思います。
では「サングラス おすすめ」が100円で入札していた場合、「サングラス 彼氏 プレゼント」は120円で入札するのがいいでしょうか。逆に「サングラス おすすめ」を80円に下げたほうがいいでしょうか。
広告運用者はこうしたことを一つ一つ考えて地道に最適化していたわけです。

現在、リスティング広告の入札単価調整はほとんど自動化されています。「サングラス おすすめ」よりも「サングラス 彼氏 プレゼント」のほうが売れる確率が高ければ、勝手に入札単価が上がります。逆に「サングラス おすすめ」の売れる確率が低ければ勝手に下げられます。

そのため広告運用者が運用にかかる時間が少なくなりました。

  • 広告出稿が楽になる

運用コストの低下とも繋がりますが、自動化により広告出稿が非常に楽になりました。数年前、Web広告を出稿しようとすると専用の管理画面に入り、アカウント設定、入稿設定、広告設定、予算設定…と様々なセッティングが必要でした。
しかし、InstagramやTwitterなどのSNS広告はスマホアプリから出稿できます。

Instagram広告の出稿方法
画像:ソーシャルメディアラボ

Instagram広告の場合、ビジネスプロフィールを設定していれば、投稿に表示される「広告を作成」というボタンから目的やターゲットを数回タップするだけで広告が出稿されます。
この手軽さも自動化により細かな設定をしなくてもよくなったからです。

  • 広告効果の向上

自動化によって広告効果も高くなりやすくなりました。前述のような入札調整を全キーワード、ターゲティングごとに広告運用者が設定していたら、途方もない時間がかかりますし、すべてを把握して最適化された状態にすることはほとんどできません。
しかし、膨大なデータを処理して最適な設定を見つける機械学習などの登場により、最適化することが可能になりました。

多くの場合、熟練の広告運用者よりも自動化のほうが効果を出します。
もちろん、自動化に任せておけば効果が出るというわけではありません。広告運用者は自動化の仕組みを理解し、自動化を最大限に活用する戦略立案や、自動化では対応しきれない調整を行う必要があります。

自動化のデメリット

  • 広告運用のブラックボックス化

優れた広告代理店、運用担当者でも、担当している広告がどこにいくらで出稿されているかを100%把握することはできません。これは広告運用に限らず、自動化が進む業界の大きな課題です。
細かく見ていくと「なぜこんなキーワードを400円もの高値で入札しているんだ?」や「なぜこのターゲットに配信される割合がこんなに少ないんだ?」といったことが見つかります。
これらを手動で調整してしまえば自動化の機械学習プログラムを邪魔してしまうため、結局、「まだ最適化に至る途中だから」「学習のためにデータを取る期間だから」「機械学習がこれが最適と判断したから」という結論になります。

広告運用者は自動化が出した結論を説明する能力を身につけなければなりませんし、広告主は自動化という仕組みによりどうしても見えなくなってしまう部分があることを理解する必要があります。

  • 広告運用の柔軟性低下

自動化を活用することでかえって柔軟性が低下することもあります。機械学習による自動化と人の手による運用は基本的に相容れません。手動で運用したほうが最適化まで早いとしても、自動化された広告手法ではそもそも手動で運用できないものもあります。
これは広告関係者にとって大きなジレンマです。しかし、最近はGoogle広告などを筆頭に自動化を使いつつより柔軟に運用する機能が開発されていっています。

Web広告を支える仕組みまとめ

今回はWeb広告の出稿前に知っておきたい、Web広告を支える仕組みを紹介しました。「cookie」「ターゲティング」「オークション」「自動化」はほとんどの運用型広告で欠かせない仕組みです。
今回紹介したことを細かく理解する必要はありません。ただ「こういう仕組みがあるんだな」と知っておいてください。
どれもマス広告にはない、Web広告ならではの仕組みです。Web広告が短期間でテレビCMを追い抜いたのも、こうした仕組みにより圧倒的な広告成果が見込めるからです。

さて、このシリーズも次で最終回。最後は「Web広告の第一歩を踏み出そう」です。

まだWeb広告をやったことがない企業にとって、いきなり数十万、数百万円を投資することは難しいでしょう。
ではまず1000円で始めてみてはどうでしょうか?
最終回はWeb広告の第一歩を踏み出すための方法を紹介します。

初めてのWeb広告|広告出稿前に知っておきたいことシリーズ