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YouTuberの登場、ライブ配信サイトの乱立、動画広告フォーマットの増加、SNSの投稿内容も多くが動画に……。
これまで動画を見る機会といえば、テレビや映画が主流でした。テレビの中ではテレビCMなどの広告が一方向で流れ、新しい商品・サービスの情報や流行を知るうえで重要な情報元となっていました。
現代では誰もがスマホを持つようになり、動画はより身近な存在になっています。これまで、テレビや映画で見ていた動画コンテンツは、YouTubeを筆頭とする動画メディアに代わり、テレビCMは動画広告に形を変えつつ配信されています。
そこで今回は、5G時代の到来により、さらに需要が増すと考えられている動画広告について解説。従来の静的なバナー広告との違いを中心に、動画広告の持つ魅力を余すことなく紹介。今後に備えた実践的な考え方を解説していきます。
動画広告市場が急成長中
上記は株式会社サイバーエージェントが株式会社デジタルインファクトに「動画広告市場」の調査を依頼した際のデータです。2019年時点では、2,312億円となっており、数年後には倍近くの市場規模が予想されています。
去年2018年は、動画市場のターニングポイントといわれていました。動画広告フォーマットの拡大(インフィード広告やインストリーム広告など)、そしてライブ配信サイトの登場により、動画を扱うメディアが増えたことが理由です。
各世代のユーザーが動画を閲覧する機会が増え、とりわけ若年層はテレビから動画メディアへと視聴スタイルがシフトしています。
特に、ソーシャルメディアを中心とした動画広告は静止画と同水準といわれており、より身近な媒体として注目を浴びています。大手企業も動画広告への出稿を増やしており、今後5Gの到来を控えて、盛り上がりを見せているといえるでしょう。
動画広告はバナー広告には敵わない?
顕著な盛り上がりを見せる動画広告ですが、バナー(ディスプレイ)広告と比べるとどうでしょうか。
バナー広告は、いわゆるディスプレイ広告と呼ばれる手法で、Gif画像などで動きをつけたものもありますが、基本的には静的な画像広告です。インターネット黎明期から存在し、現在でも検索サイトやメディアにバナースペースが存在します。
上記は、電通による2018年インターネット広告媒体費の広告種別構成比です。2018年時点では、動画広告はディスプレイ広告の半分程度しかありません。まだまだバナー広告、検索連動型(リスティング)広告に比べると、広告媒体費は少ないように感じます。
ただ、2017年の動画広告は1,115億でしたが、2018年には2,027億円と倍程度に増えています。また、ディスプレイ広告の中には、動画を扱うものもあるため、2019年、2020年には差が縮まり、ゆくゆくは逆転する可能性も十分考えられます。
現時点では、まだバナー広告に敵いませんが、すでに時間の問題といえる規模といえるでしょう。
動画コンテンツの魅力
さて、ここまで動画広告市場の盛り上がりについて解説しましたが、続いては数多くの人がなぜ動画に惹きつけられるのか?バナー広告にはない、動画ならではの魅力を紹介します。
今後、訪れるであろう動画の時代に向けて、魅力を押さえておきましょう。
動画は記憶に残りやすい
ここにラーニングピラミッドと呼ばれる表が存在します。これはアメリカ国立訓練研究所が7つの学習方法をもとに学習定着率をまとめた表です。
動画による学習は「視聴覚」にあたりますが、この表を参考にすると動画で学習した場合の定着率は、読むだけに比べると倍程度の定着率を記録しています。ただ相手に読ませるだけの静的な広告に比べると、動画は記憶定着率が高いため広告との相性がいいです。
動画を通じて具体的なイメージが伝わる
例えば、ある商品を紹介するとき、媒体によって紹介方法が異なります。雑誌なら写真や文章、コピーを使います、ラジオなら言葉で伝えて商品の音を出すかもしれません。またバナー広告なら、雑誌と同じように限られたスペースに写真や文章、コピーを使います。
一方、動画は実際に商品を扱っている風景を撮影できます。映像、音、体験すべてを届けられるので、具体的なイメージを伝えやすいのです。
2019年1月1日発売の日本流通産業新聞で「2018年最新のECサイト・ネット通販売上高ランキングTOP400」が発表されました。この中で4位に輝いているジャパネットたかたの主戦力は動画コンテンツです。テレビを利用した商品の実演販売が大きな効果を生み出しています。
また、Amazonも最近は画像だけでなく商品詳細ページに動画を掲載する例が増えています。
多くの点でテレビCMよりも優れている
【動画広告のメリット】
・動画からサイトに飛ばせる
・効果測定が行える
・コストが少ない など
・クリエイティブの制限が少ない
大手企業がテレビCMよりも動画広告にシフトしている背景には、上記のようなメリットが考えられます。双方向的なやり取り、効果測定、加えてコストが少ない点は、テレビから動画広告にシフトする際に十分なメリットといえるでしょう。
また、テレビCMは15秒、30秒、60秒など、枠が決められており、それぞれ費用が異なります。動画広告には媒体ごとにある程度の制限はありますが、基本的に自由な長さの動画を出稿でき、長さによる費用の変化もありません。
さらに近年では、テレビCMと連動することで、テレビを視聴しない層へのアプローチとして使うケースも増えています。
キリンビバレッジ株式会社では、缶コーヒー「FIRE」のキャンペーンにおいて、テレビCMに加えてYouTubeへと動画出稿を行い、テレビを視聴しない層へアプローチを行いました。
・インクリメンタルリーチ +10.3%
・25〜34歳においての購入意向 +5.5%
・全体に対しての広告想起率 +53.3%
・ブランド関連キーワード検索 +19.6%
・クリエイティブ関連キーワード +209.2%
その結果、上記のような効果を得ました。動画広告単体でも大きな効果を生み出しますが、各媒体との連携により、さらに高い効果が期待できます。
参照:https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/articles/video/x-media/
これから出稿するならバナー広告?動画広告?
最後に、これから広告媒体への出稿を行うならバナー広告か動画広告どちらが良いのか、興味深いデータとともに解説します。
動画広告市場は成長しているが広告成果に大きな差はない
ヤフー株式会社では、2019年に動画と静止画、どちらが広告的に優れているのか、ブランド向け広告「Yahoo!プレミアム広告」のデータをもとに、情報を公開しました。
その中で静止画と動画の広告想起リフトを比較したところ、この2つに顕著な差はありませんでした。動画広告市場自体は盛り上がっていますが、静画との差は今のところないようです。では、なぜフォーマットによる差が出ないのか。
その理由として考えられるのは「静止画と動画の情報量」です。
静止画における情報量はバナーサイズによって変わります。動画における情報量は時間軸によって変わります。一見、情報量の差だけを見れば動画広告の方が優れています。
ただ、動画は再生して最後まで見てもらわなければ内容が伝わりません。一方、静止画は情報量の差こそありますが、接触した瞬間に最低限の情報が伝えられます。
本来、情報量によって差が出るように感じますが、フォーマットごとの特徴により、あまり差のない結果となっています。
ただし、この調査はYahoo!の広告メニューにおける調査結果です。媒体によって動画広告の表示方法には差があります。一概には言えませんが、動画広告のほうが効果的だと示す調査結果も多くあります。
さらに、『日本デザインスクール』を運営する株式会社日本デザインが実施した、全国20代後半~40代の男女を対象とした「Web動画」に関する意識調査では、約4割の方が動画を最後まで見ないと回答しました。
動画広告は、バナー広告に比べて情報量は多いですが、見てもらう努力をしなければ、変わらない結果となります。
動画広告は制作コストがかかるため、バナー広告のように何となく作って出稿することはできません。いかにユーザーの興味を惹く動画を制作できるか。この点に動画広告の未来がかかっています。
動画広告は魅力がなければ意味がない
優れた動画広告を生み出すためには、「魅力」を持たせる必要があります。近年シェアされている動画は、どれも優れた内容で展開されており、思わずシェアしたくなる魅力があります。
何となく動画を制作しているだけでは、広告効果は少ないといえるでしょう。
とはいえ、何をもって「素晴らしい」とするのかは様々な議論があります。
芸人を起用したコメディ調のものがいいのか、商品・サービスのメリットをシンプルに伝えるのがいいのか、ユーチューバーなどインフルエンサーを起用し、起用する人のキャラクターを前面に押し出すのか。
何をもって素晴らしいとするかは、商品・サービス自体とターゲット層、戦略によって変わります。
自社の強みはなんなのか、そしてそれは動画広告と相性がいいのか。新しい広告形態とはいえ、考えるべきことはこれまでのコンテンツと変わりません。常に、ユーザーファーストで魅力が伝わるコンテンツを作成してください。
動画広告の魅力まとめ
今回は、動画広告が持つ魅力を紹介しました。
今後5Gの時代が到来し、より動画広告の需要が伸びることが予想されています。こうした波に乗り遅れないためにも、今のうちから動画広告のメリットを理解して、今後の広告施策に役立てていきましょう。
しかし、紹介したように動画広告には課題が多いことも事実です。まだまだバナー広告を選択し、成果を上げる広告主は多いでしょう。
バナー広告と動画広告、両方を理解しておけばどちらの広告が適しているか理解できます。動画時代の到来はもうすぐです。今からでも遅くないので、施策のための知識を身につけておいてください。