TVer広告はこれから伸びる!テレビとWebの長所を併せ持つマーケティング手法

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2019年、Web広告がテレビCMの広告費を追い抜いたことが話題になりました。2021年には、1.5倍近くの広告費が投じられています。

確かにWeb広告にはターゲティング精度が高い、少ない広告費でも出稿できる、成果にコミットした運用ができるなど様々なメリットがあります。

一方で、テレビCMにはWeb広告にはないメリットがあることも事実です。今後は、テレビCM かWeb広告かの二者択一ではなく、両方のメリットを上手く活用した施策が求められるでしょう。

そこで、今回はテレビCMとWeb広告のいいとこ取りをしたような広告手法「TVer広告」について解説します。

これまでテレビCMを出稿していて、Web広告へのシフトを検討されている方やテレビCMに出稿したいが予算や制作のハードルがあった方、Web広告では達成できない成果を目指している方にとって、TVer広告は有望な選択肢かもしれません。

TVerとは

「TVer」とはスマートフォンやPCなどで、テレビ番組を視聴できるサービスです。

TVer公式サイトではアプリのダウンロード数が4000万件、MUB(月間利用ブラウザ数)が2300万件となっています。また、2022年に入ってから、アプリのダウンロード数が4500万件を突破したと報告しています。

TVerは2015年に登場したサービスですが、アプリのダウンロード数だけでいえば、わずか7年で日本のスマホ人口の内、4割以上が利用するようになったのです。

利用している年齢層は、M2・F2層(35~49歳男性・女性)が一番多いですが、その次はM1・F1層(20~34歳男性・女性)です。いわゆる「テレビ離れ」が進んでいると言われている年齢層ですが、データを見ると「テレビ」というデバイスを離れているだけで、「テレビ番組というコンテンツ」を離れているわけではないと言えそうです。

TVerでは、すでに月間2億5千万回以上も視聴されていますが、今年以降、さらに急増する可能性があります。

2022年4月には日本テレビ、フジテレビなどキー局を始め10局が「地上波リアルタイム配信」を解禁しました。これまではテレビで放送後、TVerで視聴できる「見逃し配信」がメインでしたが、この決定により「テレビはスマホアプリで見る」時代が本格的に到来すると言えそうです。

TVer広告とは

TVerに広告を出稿できるサービスが、2021年4月から本格的に始まりました。非常に新しい広告手法ながら、開始から1年で533社が利用しています。出稿金額は明かされていないものの、1年で20倍近くに増加したと言われています。

TVer広告は番組の視聴前に表示されるプレロール広告、番組の途中に表示されるミッドロール広告、番組の終了後に表示されるポストロール広告といった形式で表示されます。広告の表示タイミングは通常のテレビCMやYouTube広告に近いと言えます。

また、開始して1年程度しか経っていない広告手法なので、様々なアップデートも進んでいます。

元々、TVer広告の課金体系は広告が表示された時にコストが発生する「CPM(インプレッション課金)」だけだったのですが、広告主の要望に応えて2021年10月には「CPCV課金」も導入されました。「CPCV課金」は「Cost Per Complete View」の略で、広告を完全視聴した際に課金される形式です。

YouTubeの場合、インストリーム広告では30秒未満の視聴でコストは発生しません。最初だけ見てスキップした人にはコストがかからないので、無駄のない広告配信が魅力でした。TVerでは、さらに踏み込んで「広告を完全に視聴した場合にのみ課金する」という方法を導入したのです。

さらにCPCV課金では、固定単価による買い付けではなく、オークション制も導入されました。

2022年4月には非常に多くのアップデートが発表されました。配信コンテンツのジャンルによるターゲティングも可能になり、年齢も5歳刻みから1歳刻みにアップデートされています。この年齢ターゲティングはTVer利用時のアンケートで取得したデータを基にしているため、精度は93.7%だと言われています。

また、従来は出稿できる動画広告の長さが「6秒/15秒/30秒/60秒」のいずれかに固定されていましたが、60秒以下であれば任意の長さの動画を出稿できるようになりました。

さらに、「TVer ID」の導入もスタートしました。今まではユーザーが利用するデバイス間での連携が行えませんでしたが、デバイスが変わってもユーザーを識別可能になりました。これにより、広告のフリークエンシー(接触頻度)を最適化できます。

例えば、フリークエンシーを4回とした場合、従来はスマートフォン、PCなどデバイスごとに4回表示されていましたが、IDごとにコントロールできるのです。また、コンテンツの視聴履歴や興味関心、外部データとの連携によってターゲティング精度の向上などが期待できます。

他にも、今後予定されている様々なアップデートがあります。例えば、TVerは2022年の開発目標として「より詳細に利用者を分類できるアフィニティターゲティング」や「動画広告の下や横にバナー広告やテキスト広告を表示するコンパニオン広告」を挙げています。コンパニオン広告はYouTube広告でいう「ディスカバリー広告」と近い役割を果たすと考えられます。

ここまで見てきてわかる通り、TVer広告はテレビCMとWeb広告、両方の要素を持った広告手法です。では、TVer広告への出稿に、どんなメリットがあるのかを見ていきましょう。

TVerに広告出稿するメリット

テレビCMに近いブランディング効果

TVer広告のメリットは、なんといってもテレビ番組を視聴中のユーザーに表示される点です。これは、YouTube広告など動画を使った他のWeb広告との大きな違いです。

YouTubeなどは、個人が投稿するSNSなので、動画の質にバラツキがあります。フェイクニュースや倫理的に問題のある動画に自社の広告が表示されてしまう可能性はゼロではありません。2017年ごろには、アメリカの大手企業が相次いで広告を引き上げたこともあります。問題のあるコンテンツに広告が表示されたことが大きな要因だと言われています。

もちろん、こうした課題にはYouTubeも随時対応を進めており、問題のあるコンテンツに広告が表示されるリスクはかなり低くなっています。しかし、個人が自由に動画を投稿できるYouTubeの特性上、リスクをゼロにすることは難しいでしょう。

一方、TVerで試聴されるコンテンツはテレビ番組です。地上波で放映されるテレビ番組は、厳しい放映基準を通過したものばかりなので、ブランドイメージを毀損するリスクはかなり低いと考えられます。

また、出稿する広告動画にも品質が求められます。早ければ数時間で出稿できるWeb広告と異なり、TVerでは広告主の業態審査・広告素材審査に12営業日ほどかかります。時間がかかることはデメリットとも考えられますが、コンテンツはもちろん、広告主側にも一定の品質が求められるため、ブランドイメージを守るという観点では大きな魅力です。

Web広告に近いターゲティング精度

もう一つのメリットはWeb広告に近いターゲティング精度を持っていることです。前述の通り、成果に基づいたオークション制のCPCV課金の導入や、60秒未満であれば自由な広告の尺など、自由度も上がってきています。

Web広告の魅力は、ユーザーの行動に基づいた詳細なターゲティングと柔軟性の高い運用です。テレビCMに限らず、雑誌・新聞広告などは「枠を買う」という形式なので、一定額、一定期間という運用の縛りがありましたが、Web広告では審査に通れば、自由な金額で、自由な期間、自由な広告を運用できるという柔軟性があります。

TVerはターゲティング、柔軟性というWeb広告の魅力を取り入れながら、ブランド毀損リスクの低いテレビ番組に広告出稿が可能です。まさにテレビCMとWeb広告のいいとこ取りをしている広告手法だと言えます。

TVer広告ではユーザーの年齢・性別や都道府県などのほか、番組のジャンルによるターゲティングが可能です。前述の通り、年齢は1歳単位で指定でき、性別・都道府県もユーザーがTVerを利用する際のアンケートに基づいているため、非常に高い精度のターゲティングが期待できます。

テレビ番組のジャンルターゲティングでは「旅行」「ビジネス」「グルメ」など全36種類が用意されています。そのため、TVer広告では「ビジネス系番組を見ている東京都内の30代男性にビジネスツールの広告を配信する」といったことが可能です。

さらに、TVerは下記の情報を発信しています。

クロスデバイスターゲティングの開発を進めている。あわせてユーザーデータのリッチ化を進め、ファーストパーティーデータを利用したターゲティング精度の向上、ならびにデバイスをまたいだレポーティング機能に関しても強化をしていく予定

引用:TVer広告、コネクテッドTVでも高精度なターゲティングに強み〜TVer Biz Conference 2021レポート(後編)

 

また、TVerはDMP(Data Management Platform:広告に活用できるデータ管理プラットフォーム)との連携も進めています。これにより、TVer以外の動画サービスへの広告出稿が可能になります。今後は広告主が保有するデータ、他サービスで取得したデータを基に、TVer広告でより詳細なターゲティングが可能になっていくでしょう。

まとめ

今回はテレビCMとWeb広告、両方の強みを持つTVer広告を紹介しました。「TVerという存在は知っていてもTVer広告は詳しく知らなかった」「テレビCMを流しているだけだと思っていた」という方も多いと思います。

しかし、実際には、テレビCMのようなブランディング力を持ったまま、Web広告に近い詳細なターゲティング機能や運用の柔軟性が発揮できるのです。

TVer広告は「運用型テレビCM」ともいうべき、多くの広告主にとって新しいブランディング手段になると考えられます。

本格開始して1年しか経っていないサービスであり、今年4月には数多くのアップデートが発表されました。今後もテレビCMとWeb広告のいいとこ取りをする広告手法として、さらに進化していくでしょう。

TVer以外のコネクテッドTV広告配信にオススメの3媒体は下記の記事で紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。

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