バナー広告は商品やサービスを宣伝する際に効果的な方法です。
多くの企業がバナー広告を展開していますが、実際にクリックされるかどうかは、バナーの文章や写真・イラスト、デザインにかかっています。また、リスティング広告ほどターゲティングが明確ではないため、ただクリックされるだけでなく、ターゲットに魅力が伝わってクリックされることが重要です。
ターゲットにとって魅力的ではないバナー広告は、広告費を投下しても高い反応率が見込めません。
魅力的なバナー広告を作るためには、バナーテキストが肝心です。今回はバナーテキストのコツ、そして文字自体をデザインするコツを解説します。
優れた文章に加えて、それを伝える文字のデザインを知っておけば、反応率の高いバナーが作成できます。バナー広告の作りに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
バナー(ディスプレイ)広告におけるバナーテキストの基本
バナー広告を構成する要素は、主に「写真・イラスト」と「テキスト」です。これらの要素をデザインでまとめて、バナー広告を仕上げます。
この中でもバナーテキストは、情報を伝える上で重要な役割を果たします。優れたバナーテキストを生み出せば、情報を伝えるべき人の心を動かし、クリックを促すことが可能です。バナーデザインはもちろんですが、まず誰かの行動を促す文章を作らなければいけません。
ただ基本的にバナーは、「見られない」「読まれない」「クリックされない」ことが前提となります。バナーテキストもターゲットが興味のある内容でなければ見向きもされません。加えて、ターゲットが求めている内容でなければ、興味のある内容でもクリックされません。
【バナーテキストを作る流れ】
1.ターゲットは誰なのか明確にする
2.ターゲットが欲しい情報をまとめる
3.ターゲットに伝わる文章・デザインにする
バナーテキストを作る際には、上記の流れを意識してください。1と2はLP作成や広告戦略を立案するときに作ると思うので、今回は実践的な「3.ターゲットに伝わる文章・デザインにする」のコツを紹介します。
文章編、デザイン編、それぞれのコツを紹介するので、バナーテキストを作る際の参考にしてください。
バナーテキストのコツ 文章編
バナーテキストは文章量が少ないです。詳しい内容はランディングページにて紹介するため、ユーザーが欲しい情報を単純明快に伝えなければいけません
そこで参考にしたいのが、心理効果を用いた文章術です。やみくもに文章を作るのではなく、心理効果を根拠に組み立てれば、優れた文章が生み出せます。
ただ優れたものであることを伝える【バンドワゴン効果】
経済学者のハーヴェイ・ライベンシュタインは、1950年に『Bandwagon, Snob and Veblen Effects in the Theory of Consumers’ Demand(消費者需要理論におけるバンドワゴン効果、スノッブ効果、及びヴェブレン効果)』という論文を発表しました。
この中のバンドワゴン効果は、「他者の消費が増えるほど需要が増加する現象」を指します。「No.1」「世界最大」「国内一」といった言葉をバナーテキストに含めることで、バンドワゴン効果が発生し、ユーザーに行動を促すことが可能です。
映画で一時期よく使われていた「全米が泣いた」というキャッチコピーも、全米がなくほど素晴らしいんだと感じさせるバンドワゴン効果の例です。
ただし広告である以上、利用した言葉に根拠がなければいけません。過剰な宣伝文は景品表示法に引っかかる恐れがあるので注意しましょう。
限定であることを伝える【スノッブ効果】
前述したバンドワゴン効果と同時に発表されたのがスノッブ効果です。バンドワゴン効果は、「他者の消費が増えるほど需要が増加する現象」ですが、スノッブ効果は、「他者の消費が増えるほど需要が減少する現象」です。
バナーテキストに応用すると、「限定」「今だけ」「ここだけ」といった文章が当てはまります。人と同じものを買いたくないという心理効果なので、Webサービスよりは商品のバナー広告に適しています。
より希少性をアピールするなら、限定であることを数字で表しましょう。「限定100名」「10人だけ」「100人まで」といった文章ならより訴求性を高めることが可能です。
続きが気になる内容にする【ツァイガルニク効果】
ドイツの心理学者であるクルトレヴィンの考えを、旧ソビエト連邦の心理学者ブルーマ・ツァイガルニクが実験的に示し、提唱されたのがツァイガルニク効果です。
「人は欲求によって目標指向的に行動すると緊張感が生じ持続するが、目標が達成されると緊張感は解消する」。つまり人間は、達成したことよりも、達成していないことの方が記憶に残る生き物です。
ツァイガルニク効果を応用する場合、あえて続きが気になる文章にします。
一時期、テレビCMで流行した「続きはwebで」といった文言もツァイガルニク効果の一種といえるでしょう。
自社の商品やWebサービスのどこ(価格、サービス内容、キャンペーンなど)を隠せば続きが気になるのか考えた上で文章を作ってください。
ユーザーの深層心理に問いかける【カクテルパーティー効果】
イギリスの心理学者エドワード・コリン・チェリーの代表的な業績が、カクテルパーティー効果の提唱です。カクテルパーティー効果は「音声の選択的聴取」とも呼ばれており、自分が興味のある会話や自分の名前は、複数の人が会話していても自然と聞き取れる効果を指します。
バナーテキストにおいても、ターゲットの興味のある内容や「あなた」といった語りかけは効果的といえます。カクテルパーティー効果を応用するなら、よりユーザーの深層心理に近い文章を作りましょう。
例えば、ユーザーの年齢や悩み、不安に問いかけると効果的です。「30代のあなたに……」「運動不足で気になる体脂肪を……」「退職後に体力が落ちたなら……」など、具体的な内容であればあるほど効果的といえます。
先回りして不安を解消してあげる【マッチングリスク意識】
マッチングリスク意識は、「自分の行動に結果が伴わないことを恐れる意識」を指します。高額の商品やサービスを利用する際、本当に効果があるのか、誰しもが不安に感じます。そこで先回りして不安を解消してあげる文章を作りましょう。
例えば、「無料版」や「サンプル」、「お試し」といった文章を使えば、先回りしてユーザーの不安を解消できます。ターゲットにどんな不安があるのか考えた上で文章を作成しましょう。
バナーテキストのコツ デザイン編
実はどれだけ優れたバナーテキストを作っても、それを伝える文字のデザインがダメでは効果を感じにくいです。バナーテキストは文字のデザインを含めて完成といえます。
意外にもこの文字のデザインを軽視する方は多いです。ほかのバナーテキストと差を付けるなら、文字のデザインにもこだわって作成しましょう。
ジャンルに適した書体を選ぶ【明朝体 or ゴシック体】
文字の種類である書体は、大きく分けて2種類存在します。明朝体は横線に対して縦線が太い、横線の右端に三角の山(ウロコ)があります。一方、ゴシック体は横線と縦線が同じ大きさ、横線の右端に三角の山(ウロコ)がない書体です。
これらの書体は、ジャンルによって得意不得意があります。明朝体は落ち着きのある大人っぽい書体、ゴシック体は元気で親近感のある書体といえます。バナー広告がどんなジャンルなのか考えた上で、適切な書体を選択してください。
心理効果の高い色を使う【色彩の心理学】
赤は危険、青は冷静、緑は安心など、色彩には共通の印象が存在します。こうした色の印象を「色彩心理学」と呼び、バナーテキストにも応用できます。伝えたいイメージの色を用いれば、訴求性が高まるため、さらなる効果が期待できるでしょう。
特に、これまで紹介した心理効果に合わせれば、より一層を高い効果が見込めます。
赤:情熱的・衝動的・生命
橙:家庭・仕事・自由
黄:幸福・好奇心・向上心
緑:安心・平和・自然
青:冷静・安全・誠実
紫:精神・気品・厳粛
白:純粋・神聖・清潔
黒:高級・暗闇・恐怖
銀:上品・洗練・金属
金:高級・豪華・成功
上記に主要な色のイメージをまとめました。バナー広告のジャンルに合わせて、適切な色を利用してください。
伝えたい文章に優先順位を付ける【ジャンプ率を意識】
「1日5分であなたも変われる英会話」という文章があったとして、訴求すべき点はどこなのか?分解して考えてみましょう。もっとも訴求すべき点は”1日5分”、続いて”あなたも”や”英会話”、または”変われる”という部分でも構いません。
ここでは、”1日5分”、”変われる”、”あなたも”、”英会話”という優先順位にします。
バナーテキストを作る過程において、必ず上記のように伝えたい文章の優先順位が生まれます。もし、これらの文章を同じサイズにしてしまうと、ユーザーは何を受け取っていいのか理解できません。
そこで、ジャンプ率つまり文字の大きさの比率を意識してデザインしましょう。”1日5分”はもっとも大きく、”変われる”は2番目……といった具合にジャンプ率を決めれば、より伝わりやすい文章が完成します。
バナー制作でよくあることが、「全部のメッセージが重要」と考えてしまうことです。全部が重要と考えて全部を伝えようとすると、何も伝わりません。
そんな時は「仮に0.2秒しか見られないとして、何を伝えよう?」と考えてみてください。実際、多くのバナーは1秒も見られません。1秒未満で伝えられることを以下に伝えるかが重要です。
写真やイラストと被らないようにする【コントラストの強弱】
多くのバナー広告には、テキストのほかに写真やイラストを利用します。この際、写真やイラストとテキストが被らないように注意してください。
当たり前ですが、白い文字に白い写真やイラストを使えば、文章が読みにくいです。また、同系色を利用してもコントラストの強弱がなければ、ぱっと見でわかりづらいバナーになります。
できるだけ、写真やイラストに対してコントラストを付けたカラーを意識してください。
ぱっと見で文字がわかるようにする【0.2秒の世界】
ユーザーに伝わりやすい文章を作り、それに準ずるデザインができたら、ぱっと見で文字がわかりやすいか判断してください。
人間の第一印象は0.2秒で決まるといわれています。バナー広告も同じように、ぱっと見で印象が残らなければクリックされません。なんどもテストを繰り返し、印象に残るバナーを作りましょう。
効果的なバナーに欠かせないテキストとデザインのポイントまとめ
今回はバナーテキストのコツと、魅力的なテキストをしっかり伝えるデザインについて解説しました。
バナー広告に使用する文章を作る際、多くの方は文章のコツを重視しがちです。もちろん、文章も重要ですが、それを伝えるためのデザインも大切です。
日々無数の広告がユーザーの注意を奪い合っている中、自社のバナー広告をクリックしてもらうことは、広告出稿している無数の競合他社に心理戦で勝つことと同じです。
今回紹介したコツも、心理学効果が中心でしたが、「いかにユーザーの注意をひくか」「いかに競合ではなく自社に興味を持たせるか」はまさに心理学の領域です。
それぞれのコツを組み合わせれば、より反応率の高いバナー広告が作成できます。少しでもバナー広告の効果を上げたい方は本記事を参考にしてください。