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全9回にわたってお送りする、HubSoptのMAツールを活用したインバウンドマーケティングについて、第4回はペルソナとカスタマージャーニーについてご紹介します。
前回は「3つのメディア」として、今後のマーケティングに活用していくべきペイドメディア、オウンドメディア、アーンドメディアをご紹介しました。そして、3つのメディアに対する戦略で、MAがどのように活躍するのかについても触れました。
今回紹介するペルソナとカスタマージャーニーはより「ユーザー」にフォーカスをあてた考え方です。
非常に重要な概念なので、2回に分けてお届けします。
【第1回】インバウンドマーケティングとは?今さら聞けない基礎知識と実践方法
【第2回】MAツールでできること|「HubSpot」の優れた機能
【第3回】優れた戦略に必要な「3つのメディア」
【第4回】ペルソナとカスタマージャーニー(1)
【第5回】ペルソナとカスタマージャーニー(2)
【第6回】スコアリングによるリードの育成と選別
【第7回】インバウンドマーケティングによくある誤解と失敗する理由
【第8回】マーケティングファネルと自動化(ワークフロー)の活用方法
【第9回】HubSpotを用いたインバウンドマーケティング1年計画
MAにはワークフローやリードフローなど、見込み客を獲得し(リードジェネレーション)、顧客へと育てていく(リードナーチャリング)までの流れを自動化する機能がいくつも用意されています。
そうした機能をうまく活用するためには、「この商品を購入する人はどんな人なのか」「顧客はいったい何を望んでいるのか」「顧客になる人はどういった情報に触れているのか」を理解することが欠かせません。
ペルソナとカスタマージャーニーは、それらを理解するためのフレームワークの一つです。
この記事の最後に弊社で使用しているペルソナ、カスタマージャーニーのテンプレートもお渡しいたします。
それでは、インバウンドマーケティングを成功させるためのペルソナとカスタマージャーニーの作り方を見ていきましょう。
ペルソナとカスタマージャーニーとは
ペルソナとカスタマージャーニーについて、マーケティングに携わる方は頻繁に耳にしたことがあるのではないでしょうか。
しかし、実際に「ペルソナを作ったことがある」「カスタマージャーニーをマーケティング戦略に落とし込んだことがある」という話はあまり聞きません。
ペルソナとカスタマージャーニーを活用したコンテンツマーケティングの全体像は、下記の記事で解説しています。
▶コンテンツマーケティングとは?種類・進め方・成功事例を徹底解説
インバウンドマーケティングにおいて、ペルソナ、カスタマージャーニーを作成することは避けては通れません。
そこで今回は、作成する準備から作成手順、実例までご紹介するので、実際に作っていただく事をテーマにお送りします。
下記は飲食店向けのWeb集客コンサルティングサービスを想定したペルソナとカスタマージャーニーの一例です。業種や商材によって細かな項目は変わりますが、自社商材にかかわるプロフィール、各ステージでのタッチポイントやチャネルなどを盛り込むことが重要です。
そもそもペルソナとは、企業や商品の典型的なターゲットとなる顧客像を指す言葉で、カスタマージャーニーは、そのペルソナが購入に至るまでのプロセスを表したものです。
ペルソナとカスタマージャーニーには、「顧客視点の理解」と「関係者間の認識共有」という2つのメリットがあります。
インバウンドマーケティングは顧客中心のマーケティング戦略であり、MAを使いこなすためには関係者全員が施策の目的やターゲットを理解しておく必要があります。
インバウンドマーケティング成功のカギは、いかに的確なペルソナとカスタマージャーニーを作成できるかにかかっているといっても過言ではないでしょう。
それでは、まずはペルソナとカスタマージャーニーを作成するための準備を見ていきましょう。
ペルソナとカスタマージャーニーを作成するための準備
今回に限らず、マーケティング戦略のために何かを作成する場合、まず初めに行うべきは情報収集です。
ペルソナは「仮想の顧客像」「理想の顧客像」であるため、想像で作ってしまうこともできますが、成果に繋がるペルソナは必ず市場調査などによる裏付けが存在します。
記事の最後に、ペルソナとカスタマージャーニーのテンプレートをダウンロードしていただけますが、それを見る前にまずは情報を集めましょう。
本来は様々な調査手法、フレームワークを用いますが、ここでは必ず行いたい「3C分析」を紹介します。
3C分析は顧客から始まり、競合と自社を分析します。ターゲットや自社の立ち位置などが見えてくるため、インバウンドマーケティングを行う上で非常に活躍するフレームワークです。
顧客分析
3C分析を始める際は、必ずCustomer(顧客)から始めましょう。情報が入手しやすい自社の分析から始めてしまいがちですが、顧客を知らずして自社の強みや弱みを評価することはできません。
ここでは、既存顧客のデモグラフィックや興味関心、購入までのフローといった情報が重要になります。
Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを用いたマクロ解析も効果的ですが、ペルソナに落とし込むとなるとより深いニーズ、感情が見えるミクロ解析を行うことがベストです。
既存顧客へのアンケートの実施が可能であれば、ぜひ実施しましょう。
既存顧客がいない新商品の場合でも、類似商品の情報や街頭アンケート、デプスインタビューなどの結果から推測することができます。
ペルソナとカスタマージャーニーに落とし込むためには、次のようなことを意識して情報を集めましょう。
- デモグラフィック(年齢性別など)
- ユーザーの性格や消費傾向
- ユーザーの趣味や情報収集傾向
- 使用しているSNSやアプリ
- 商材を認知したポイント
- 購入を決めた/購入を決めるポイント
意識して集めたい情報は情報収集傾向です。例えば、顧客の多くが新聞で情報を得ているなら、新聞広告が効果的かもしれません。
また、使用しているアプリやSNSの情報もプロモーションを行う上で重要な情報になります。スマートニュースやグノシーではなく、NEWS PICKを利用しているのであれば、NEWS PICK内での広告が効果的でしょう。
このように、情報収集成功と普段使用しているSNSやアプリを知ることで、カスタマージャーニーを作成する際のタッチポイントやチャネル、施策が具体的に見えてきます。
これらに加えて、BtoB商材であれば決裁権の有無や役職、会社の規模や業種なども集めたい情報です。
より深く顧客分析を行う場合は、顧客視点のフレームワークである「4C分析」なども活用しましょう。
競合分析
顧客に関する調査を行ったら、競合の情報を集めます。
競合を分析する目的は、競合がどういったコンセプト、強みを持っているのか、顧客に対してどういった施策をとっているかを把握することです。
インバウンドマーケティングを成功させるためには、競合がひしめく「レッドオーシャン」ではなく、自社の優位性を存分に発揮できる「ブルーオーシャン」で戦うことが重要になります。
Twitterを利用する顧客が多いことが分かっても、Twitterですでにブランドを築いた圧倒的な競合が多くいる場合は、施策を行うチャネルとして適切ではないかもしれません。利用している顧客が少なくても、競合がいないInstagramでのプロモーションを計画したほうが大きな成果が見込めます。
競合分析を行うには次のようなことを意識して情報を集めましょう。
- 競合の商品仕様、価格、強み
- 競合のブランドメッセージ
- 競合の顧客層
- 競合がとっている広告・マーケティング戦略
- 競合SNSの運用状況
- 競合オウンドメディアのSEO
インバウンドマーケティングでは広告施策よりもオウンドメディアの活用が重要になってきます。そのため、競合のオウンドメディアがどのようなキーワードで集客しているのか、SNSアカウントをどのように運用しているのかは可能な限り細かく調べましょう。
競合調査を行う際は、次のようなツールを活用するといいでしょう。
- SimilarWeb…競合サイトの訪問者数やPV数、流入元キーワードや流入元分析が可能
- SEOチェキ…競合サイトのインデックス数や検索順位、keywordの出現頻度などSEOにかかわる情報を入手可能
- Ghostery…競合サイト導入されているマーケティングツールを確認可能
こちらはGrabのサイトをGhosteryで確認した画面のキャプチャです。「Twitter Advertising」や「Twitter Conversion Tracking」といったタグが入っていることから、Twitter広告を行っている、または行っていたことがわかります。
広告だけでなく、どんな解析ツールを使用しているかといったこともわかります。
Ghosteryだけで、どういった戦略をとっているか明確にはわかるわけではありません。しかし、「競合がTwitter広告を使用している」という情報は、自社の戦略を立てるうえで大きなヒントになります。
自社分析
次に自社の商材に対して強みや弱み、ブランドメッセージといった情報を集めます。
本来の3C分析における自社分析では、自社の経営資源などについても調査しますが、インバウンドマーケティングの実施では重視する必要はないでしょう。
かわりに調査すべき内容が、部署間の情報共有方法などについてです。大企業になると、製品開発部とマーケティング部で、戦略や考えが全く共有されていないことも少なくありません。
こうした部署間の壁は、あらゆる情報・施策を1つのプラットフォームで管理するMAツールの導入で大きな障害となります。
MAを導入し、インバウンドマーケティングを効果的に行うためにも、部署間の情報共有をどのようにすべきかを考えておきましょう。
自社分析では、他にも次のようなことを調査します。
- 自社商材の強み・弱み
- 自社のブランドメッセージ
- 現在行っている、過去に行った広告施策の内容と成果
- オウンドメディア、オフィシャルサイトのWeb解析
- 業界での立ち位置や顧客が抱いているイメージ
「業界での立ち位置や顧客が抱いているイメージ」は顧客分析と競合分析をしっかり行っておかないと見えてきません。
また、調査結果をレポートなどでまとめる際は、主語を「顧客」にするよう意識しましょう。例えば「自社は市場内で価格優位性がある」ではなく、「顧客は他社よりも低価格で購入できる」のように書くことです。
顧客を主語にすることで、より顧客目線の分析結果が生まれます。
より深く自社分析を行う場合は、自社の強みと弱みを外部要因・内部要因に分けて考える「SWOT分析」、市場における自社の立ち位置を理解する「ポジショニングマップ」なども活用しましょう。
競争軸の洗い出し
3C分析をはじめ様々なフレームワーク、ツールを活用して情報収集・分析が完了したら、それらをもとに競争軸を洗い出す必要があります。
競争軸の洗い出しは、「多くの商品・サービス、メディアがある中で、いかに自社を発見してもらうか、興味を持ってもらうか」を考えるために行います。
インバウンドマーケティングでは、「企業が伝えたい情報を伝える」アウトバウンドマーケティングとは異なり、顧客自身に発見してもらい、興味をもって入ってきてもらう必要があります。そのため、いかにユニークな競争軸を持てるかが成果を左右します。
競争軸は「顧客」「価値」「接点」の3つで考えます。
顧客の競争軸
顧客の競争軸では、どういった層をターゲットとするかを考えます。
例えば、飲食店を新たにオープンする場合を考えてみましょう。飲食店の場合、ファミリー向け事業は大手チェーン店が握っており飽和しています。新しい店舗でこうした顧客を狙えば、かなり厳しい競争が発生してしまいます。
代わりに、「若い女性の2~5人のグループ」をターゲットとした場合、明確にその顧客ニーズに応える店舗はあまり多くありません。そのため、顧客の競争軸で優位に立つことができます。
実際、最近オープンする飲食店の多くは「女子会向け」や「メニューはスムージーだけ」のように尖ったコンセプトを打ち出すことで、大手と顧客の競争軸をずらしています。
自社が狙うべきターゲットはどこでしょうか。顧客分析、競合分析、自社分析をしっかり行えば、見えてくるはずです。
価値の競争軸
価値の競争軸では、自社の商品・サービスが顧客に提供する価値を考えます。
顧客分析、競合分析、自社分析から優位性のあるターゲットを見つけたら、そのターゲットに対してどんな価値が提供できるのかを具体的に考えます。
例えば、中小企業向けのWeb広告コンサルティング事業を始めるとします。ターゲットはこれまでWebプロモーションを行ってこなかった中小企業です。その際は、次のような価値の競争軸が考えられます。
- 大手コンサルティングファームと比較して安い費用でコンサルティングを提供できる
- 大手では試せない、新しいアイデアで施策を提案できる
- 担当マーケターが専任でコンサルティングにあたる
- 最低出稿金額を設けず、どんな規模のプロモーションにも対応できる
価値の競争軸は、インバウンドマーケティングで“優れたコンテンツ”を提供する際の軸になります。そのため、競合が謡っていない、新しい価値を考えましょう。
接点の競争軸
接点とは、顧客と出会うチャネルを指します。接点で明確な競争軸を持てると、広告施策やプロモーションの段階で競争を避けることができます。また、完全にユニークな接点があれば、競合と比較される機会がなくなるため、価値の競争軸が弱くても成果が期待できます。
BtoB企業であれば、リード獲得の段階でメールアドレスを取得し、メルマガへ誘導する戦略が主流です。もちろん同じ戦略をとっている企業は多く、ターゲットユーザーのメールボックスは競合からのメールも数多く届いているでしょう。
これでは、顧客との接点で優位性がありません。
そこで、最近ではLINE@などをコンタクトの手段に導入する企業が登場しています。LINEというと友達や家族とのメッセージツールのように感じますが、ビジネスツールとして導入している企業も少なくありません。営業担当がクライアントとのやり取りにLINEを用いることは当然になってきています。
とはいえ、まだまだLINEをコンタクトツールとして使っているBtoB企業は少なく、競合と比較されにくい接点になります。
接点の競争軸を考える際は、次のようなことを考えましょう
- 伝えたい情報を提供できるツール、メディアであるか
- 想定するターゲットに届けることができるか
- 競合はどんな接点として持っているか
- 自社の強みをアピールできるか
ここで考える接点はWeb上に限りません。営業担当者が全国各地におり、打ち合わせなどのフットワークが軽いというのも強みとなる接点です。
またBtoC商材であればぜひとも考えたい接点が「インフルエンサー」です。自社の商材とマッチしたインフルエンサーとタッグを組めば、接点の競争軸として非常に有力です。
インフルエンサーについては、「最新のマーケティング手法!「インフルエンサー・マーケティング」の始め方」で紹介していますので、ぜひご覧ください。
【HubSpot 4/9】ペルソナとカスタマージャーニー(1)
今回は、全9回にわたってお届けする、HubSoptのMAツールを活用したインバウンドマーケティングについて、実際の施策を立てるうえで重要になる「ペルソナとカスタマージャーニー」をテーマにご紹介しました。
その前半にあたる今回は、主に準備段階の話が中心です。
今回紹介した準備段階での調査手法や競争軸の考え方などは、インバウンドマーケティングやペルソナ、カスタマージャーニーに限らず、あらゆるマーケティング施策を考えるうえで役立つと思います。
次回は、今回の準備をもとにして、実際にペルソナとカスタマージャーニーを作成する手順と、インバウンドマーケティングでの活用方法を中心に紹介します。
HubSpotを活用したインバウンドマーケティングのシリーズ記事は下記のリンクからご覧いただけます。ぜひ、参考にしてください。
▶HubSpotを活用したインバウンドマーケティング【全9回】
今回出てきた3C分析、競争軸の資料は下記よりダウンロードしていただけます。
実際の作成する手順に入る前に、ぜひこちらの資料から準備を進めてみてください。