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ビジネスの第一線で活躍するために、社会情勢や人々の意識を知ることは欠かせません。
優れたビジネスパーソンは、仕事の専門分野だけでなく、世の中のトレンドや政治、社会情勢、意識の変化などに敏感になり、常にアンテナを張っています。
今回は、1992年から続く博報堂生活総合研究所による定点調査「生活定点」から、多くのビジネスに直結するであろう8つのカテゴリ「消費・お金」「働き」「情報」「国際化と日本」「日本の行方」「社会意識」「メディア」「学び」について、データを紹介するとともに、ビジネスへの影響などを簡単に考察してみたいと思います。
生活定点とは
「生活定点」は、博報堂生活総合研究所が1991年から隔年で実施している時系列観測調査です。日本人の感情や生活行動、消費動向、社会観など、様々な観点から、生活者の意識やニーズの推移を分析しています。
調査地域は首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県)と阪神圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)で、3000人を超える一般消費者を対象に訪問留置法(調査員が対象者を訪問し、調査依頼を行い、後日回答を回収する調査手法)で行われています。
2018年は、5月16日~6月15日にかけて実施され、3080人の有効回答数を経ています。
世の中の変化やトレンドを高い精度で知ることができるため、すべてのビジネスパーソンにとって意味のあるデータに触れることができます。
データ① 消費・お金|電子マネーが大きく普及
お金に関する意識は、マーケティング戦略に直結します。「お金について、あなたに当てはまる物を教えてください」では、お金について興味深いデータが数多く得られました。
- 日常的に電子マネーを使っている 47.6%(+5%)
お金に関する調査で目を惹くのは、電子マネーの普及です。以前、「キャッシュレス決済のススメ」という記事の中で、キャッシュレス決済には様々なメリットがあり、国際的にはかなり浸透していること、日本も国が主導して推し進めていることなどを紹介しました。
その成果は、生活定点のデータに反映されています。2006年、電子マネーの利用者は
12.1%でしたが、年々右肩上がりで、2018年は49.6%にまで普及しました。
電子マネーの利用は地域や年代によって差があり、首都圏では53%、年代別では20代が57.1%となっています。
- クレジットカードを使うことに抵抗はない 58.7%(+5.7%)
こちらも、電子マネーの利用と近いニーズが読み取れます。以前はネガティブなイメージが強かったクレジットカードですが、多くの消費者は抵抗なく活用しているようです。
データを見ると、年々右肩上がりであることはわかりますが、ここ2年は特に上昇しています。また、年代による差がほとんどなくなり、多くの年代で抵抗感が薄れているようです。
- 日常的に電子マネーを使っている 47.6%(+5%)
こちらも電子マネーに関する調査です。日常的に電子マネーを使っている消費者は、前回の調査から5%上昇し、47.6%となりました。
男女差はほとんどありませんが、地域や年代による差は広く、首都圏では53%、20代では57.1%となっています。
- 日常的に企業が発行するポイントサービスを使っている 62.7%(+5.5%)
2016年から始まった新しい調査項目ですが、日常的に企業が発行するポイントカードを利用する消費者は2016年で57.2%、2018年は62.7%となりました。
この調査に対しては、首都圏と阪神圏で大きな差がなく、首都圏で63.8%、阪神圏で59.8%という結果になっています。
日本でポイントというと、TポイントやPontaポイント、ECサイトの楽天ポイント、Amazonポイントなどがあります。
- 近い将来、キャッシュレス社会になった方がよいと思う 9.1%
ここまで、電子マネーやキャッシュレス決済について、ポジティブな調査結果が多くありましたが、「近い将来、キャッシュレス社会になった方がよいと思う」と答えた消費者は9.1%にとどまりました。
現金決済の根強い日本において、電子マネーは「便利なもの」としてあくまで決済手段の一つでしかなく、現金を中心とした経済への信頼は強いようです。
この結果について、地域差はほとんどないものの、男女差は大きく、男性は12.9%、女性は
5.3%となりました。電子マネーやポイントの利用に大きな差がなかったことを考えると、興味深い意識の違いといえます。
なお、この項目は2018年に初めて行われました。次の2020年の調査でどう変化するかが注目です。
消費・お金の消費傾向に関する考察
データを見ていると、電子マネーの浸透が非常に進んでいることがうかがえます。ここ数年、ブロックチェーン、仮想通貨、キャッシュレス化など、金融業界に影響を与えるトレンドが多くありまりました。
国の施策もあり、電子マネーの普及は進んではいるものの、まだまだ先進国と比べると遅いといえます。
電子マネーやポイントを利用する消費者が半数程度に達するにもかかわらず、「近い将来、キャッシュレス社会になった方がよいと思う」と考えている消費者が9.1%しかいないという、意識の変化が進んでいないことが課題といえます。
また、今回の調査から「仮想通貨を持っている」という質問も加わっています。2017年から大きな注目を集めた仮想通貨ですが、保有しているのは1.6%にとどまり、まだまだ事業への影響は少ないでしょう。
しかし、ビックカメラなど、大手小売業で仮想通貨が使えるようになるなど、浸透に繋がりそうな流れもあります。
データ② 働き|ダイバーシティと働きの多様化
BtoB企業であれば、他社の働き方に関する知識は必要でしょう。最近は、ダイバーシティ経営といった言葉も注目され、企業が求めるニーズも変わってきています。
非常に多くの質問項目がありますが、ここでは人材や働き方の多様化に関するデータを紹介します。
- 女性の上司のもとで働くことに抵抗はない 69.8%(+2.9%)
働き方について、「女性の上司のもとで働くことに抵抗はない」と回答した人は69.8%と、緩やかに右肩上がりになっています。地域差はほとんどありませんが、年代、性別では差が見られました。
男女別では、男性が60.4%、女性が79.3%と大きな開きがあります。年代別でも、若年層のほうが抵抗が少ない結果となりました。
- 外国人と一緒に働くことに抵抗はない 58.1%(+2.3%)
外国人といっしょに働くことに抵抗がない日とは58.1%になり、過去最高になりました。2000年代に入ってから大きな変化はありませんが、緩やかに右肩上がりを続けています。
年代別では、若年層のほうが抵抗を持たない傾向がありますが、性別や地域による差はあまりありません。
今後、人口減が予測されている日本では、外国人労働者の活用が重要になってきます。2018年は国会でも外国人労働者に関する規制緩和などが頻繁に議題に上がりました。
- 在宅勤務が認められるようになるとうれしい 36.6%
2018年から新しく加わった項目に「在宅勤務が認められるようになるとうれしい」があり、36.6%が当てはまりました。
安倍内閣で長年話題になっている「働き方改革」には様々な施策がありますが、その中には「テレワーク(在宅勤務)」の推進もあります。柔軟な働き方を実現できる在宅勤務への要望は強いようです。
また、この調査に対しては年代別の差がほとんどなく、20代と60代でも4%程の差にとどまりました。首都圏と阪神圏でもほとんど差はありません。
しかし男女差は思いのほか大きく、男性で30.9%、女性で42.4%となっています。
- 休暇志向 vs 高給志向 休暇志向が47.1%(+2.5%)
働き方の多様化が叫ばれる中、残業時間の制限や企業の収益性の悪化などで給与が低下することへの課題も議論の対象になっています。
しかし、実際に働く人の意識としては、「給料よりも休暇が欲しい」が強くなってきています。
「休暇志向 vs 高給志向」という質問に「休暇志向」と答えた人の割合は47.1%で過去最高となりました。一方、「高給志向」は52.9%で、割合こそ大きいものの過去最低となりました。この数字が逆転するのもそう遠くはないかもしれません。
この調査では、男女差よりも年代差のほうが大きく、休暇志向は20代が57.7%、40代が39.7%、高給志向は20代が42.3%、40代が60.3%となりました。
- 希望リタイア年齢は何歳 70歳 35.3%(8.1%)
平均寿命の延び、年金制度への不安、家族構成の変化による不安など、様々な要因があり、リタイアの希望も伸びています。2018年は希望リタイア年齢を70代と答えた人が35.3%で、2016年から大きく伸びました。
男女別で見ると、女性が大きく伸びており、女性の仕事観の変化がうかがえます。年代別で見ると、やはり60代が自分に直接関係する問題と考えているようで、60.9%となりました。
働きに関する考察
以前、ガートナー社の発表で「多様性と受容性を採用した組織の75%が財務目標を上回る」とあったように、企業は年齢、性別、国籍にとらわれないダイバーシティ経営が求められています。
働き方に関する調査では、まだまだ男女差がありますが、2016年と比べると多くの調査で男女差が縮まった印象があります。
企業は採用や人事について、これまでのやり方が通用しなくなっていることを感じているかもしれません。今後、キャリアや家族のために柔軟な働き方を選択したり、企業という形にとらわれない働き方もどんどん増えてくるでしょう。
データ③ 情報|スマホの普及は情報収集方法にも影響
人々がどのように情報を収集しているか。広告・マーケティング関係者ならだれもが知りたいことと思います。
生活定点の情報についての調査からは、スマートフォンの普及を中心に、人々の意識の変化がうかがえます。
- 広告をしていない商品には、何となく不安を感じる 11.0%(-1.2%)
「広告をしていない商品には、何となく不安を感じる」という人の割合は年々下降傾向にあります。
以前は、マス広告を出していることが企業の資本力のアピールとなり、購買行動に大きく影響していました。広告関連の不祥事や商品のコモディティ化、口コミなどの情報に増える機会が増えたことにより、広告の影響力が低下しています。
しかし、この要因は広告手法が多様化し、インフルエンサーマーケティングのように広告と知られにくい手法や、対象を絞って配信するターゲティング広告が浸透したことも要因と考えられます。
- 携帯電話やスマホは私の生活になくてはならないものだと思う 64.5%(+4.3%)
スマートフォンの浸透は、非常に速いスピードで進んでいます。「携帯電話やスマホは私の生活になくてはならないものだと思う」という人は64.5%に上りました。20代では81.8%にまで登ります。
注目すべきは伸び方で、スマートフォンが普及した2012年ごろから大きく伸びています。
- 情報は自分で検索しながら手に入れたい 3%(4.6%)
Googleをはじめとする検索エンジンの進歩の影響もあり、情報を自分自身で検索しながら手に入れたいという人の割合が増えています。2016年の調査までは地域や年齢性別で差がありましたが、2018年はほとんどで差が縮まりました。
一方、次のデータで紹介するように、レコメンド機能や好みを把握AIの普及により、与えられた情報を受け取ることを好む人も増えています。
- 情報は人やレコメンド機能にすすめられたものから選びたい 5.0%
2018年から、質問項目に「情報は人やレコメンド機能にすすめられたものから選びたい」が追加されました。今回は5%程度で、男女差、地域差、年代差はほとんど見られませんでした。
しかし、今やレコメンド機能のないECサイトはほとんどありませんし、Googleの検索結果も過去の行動履歴や個人情報によってカスタマイズされた、いわゆるレコメンドされた情報になっています。
レコメンドされた情報であることへの認識がまだまだ低いだけで、実際は多くの人がレコメンドされた情報に触れており、抵抗はなくなっていくでしょう。
- インターネット環境の進歩に、何となくプレッシャーを感じる 14.2%(+2.7%)
2016年から始まった「インターネット環境の進歩に、何となくプレッシャーを感じる」という質問に対しては、14.2%が当てはまると回答しています。男女別で見ると、女性の割合が高く17.1%となっています。
「SNS疲れ」「インスタ疲れ」という言葉も広まり、過去の投稿を定期的に削除するユーザーもいます。
これは、「携帯電話やスマホは私の生活になくてはならないものだと思う」という割合が増え、ますます生活に浸透していくにつれ、増えていく課題と思います。
- 情報は主にソーシャルメディアから得ている 10.5%(+3.7%)
インターネットの進歩とともに、マスメディアの力が衰えています。その影響を反映するように「情報は主にソーシャルメディアから得ている」という人は10.5%となっています。2014年から右肩上がりで推移しており、若年層ほど顕著に出ており、20代では26.5%の人が、ソーシャルメディアを主な情報源としています。この数字は今後さらに伸びていくでしょう。
情報に関する考察
今更ですが、スマートフォンとソーシャルメディアの影響は、年々増加しています。検索は8割がスマートフォンで行われ、ECなどの購買行動もスマホシフトが進みます。
ただし、今後もスマートフォンの影響が伸び続けるかというと、スマートウォッチなどのウェアラブル端末、スマートスピーカーなどの音声AIデバイス、IoTの普及などにより、こうした数値は大きく変動しそうです。
次の調査は2020年ですが、おそらくスマートスピーカー関連の調査項目が追加されるでしょう。また、5G(次世代通信技術)により、情報収集傾向は大きく変化すると考えられます。
データ④ 国際化と日本|世界に出るもののネガティブ
国際化も、事業において重要なテーマです。ほとんどの企業が海外向けの事業を展開したり、自社のリソースの一部を海外に移したり、事業計画に海外を含めています。
- 海外に移住する日本人が増えると思う 33.3%(+2.4%)
「海外に移住する日本人が増えると思う」については、33.3%と前回よりも2.4%増加しました。国際化はここ数年で始まったことではないので、長期的なデータが見たいですが、この項目については2016年からとなっています。
男女差や地域差はありませんが、年代差では、多くの年代で割合が上昇しているのに対し、40代のみ低下している特徴があります。
- 海外で活躍する日本人が増えると思う 51.9%(-3%)
海外へ移住する日本人が増えると思う人が増えた一方、「海外で活躍する日本人が増えると思う」割合は3%低下しました。
大きな差ではありませんが、地域別で見ると阪神圏のほうが活躍すると思っている人の割合が多く出ています。2016年調査から逆転しており、首都圏に独特な意識変化があったと考えられます。
- 世界の中で日本が今より愛されるようになると思う 20.3%(-3.2%)
「世界の中で日本が今より愛されるようになると思う」については、地域差や年代差、男女差があまりなく、2014年から下降傾向にあります。
- 日本人の雇用が悪化すると思う 26.9%(-0.8%)
「外国人就労者の規制緩和」、「AIに奪われる仕事」など、雇用に関してはネガティブな意識があるようで、「日本人の雇用が悪化すると思う」に対しては年々低下し、2018年は26.9%と過去最低になりました。
しかし実際、外国人就労者が増加したり、AIが進化したとしても、むしろ仕事は増えるという専門家の意識もあります。
とはいえ、現状は大企業のリストラが発表されたり、「AIでなくなる仕事リスト」が発表されたりと、人々の意識はネガティブな方向に向く要因が多いようです。
国際化と日本に関する考察
国際化に関して、日本人はネガティブな意見が強まっているようです。
「海外に移住する日本人が増えると思う」「海外で活躍する日本人が増えると思う」「世界の中で日本が今より愛されるようになると思う」の3つのデータをまとめると、国際化により海外に出る人は増えると感じている人は多いものの、外に出た日本人が活躍したり、より日本の評価が上がったりはしないというネガティブな意識があるようです。
雇用に関しては2012年から2016年にかけては大きく低下しましたが、2018年は少しの低下にとどまりました。今後、AIや働き方改革、外国人就労者への理解が進むにつれ、ポジティブな意識が見られると考えられます。
データ⑤ 日本の行方|外国に誇れるものがなくなってきている
- 日本人が外国に誇るものは多くが低下
これは、「日本の国や国民について、あなたが誇りに思うことはどんなことですか?」という質問に関するデータです。割合が伸びたのは20個中1個で「アニメやファッションなどの若者文化」だけでした。そのほかすべての項目で、誇りに思うことがなくなっています。
- 高い科学技術の水準 24.6%(-4.8)
こちらは、「高い科学技術の水準」の推移です。高度経済成長期、日本は高い工業生産性と研究開発力で先進国の地位を築きました。しかし、1992年の調査開始から下降し始め、2000年代に少し回復しましたが2012年からまた低下しています。
- 高い教育水準 21.1%(2.6)
こちらは「高い教育水準」の推移です。「高い科学技術の水準」と同じく、調査開始から全体的に下降しています。
年代による差が大きく、20代は13.0%、60代は29.9%と、若年層ほど教育水準に不満を感じているようです。
日本の行方に関する考察
「日本の国や国民について、あなたが誇りに思うことはどんなことですか?」で、ほとんどの項目が低下していることは驚きです。このデータは、日本人が日本のブランドではなく海外のブランドを選択する可能性が高まることを示唆しています。
スマートフォンやIoT、通信技術など、日本はこれから伸びるであろう市場で海外に大きく遅れました。しかし、依然として「メイドインジャパン」というブランドは海外で強力です。海外で評価されている日本の良さを日本人が認められなくなっています。
特に若年層ほど海外に対して誇れるものが少ないと感じていることは、日本全体の課題でしょう。
しかし「アニメやファッションなどの若者文化」に関しては、20代の47.3%が海外に誇れると答えており、「オタク文化」に代表される独自の新しい文化基盤が広がっていくかもしれません。
データ⑥ 社会意識|今後も男女平等は大きなテーマ
社会意識では、日本人の世界への関心や技術進歩・経済への意識、男女平等に関する調査が行われました。
男女平等は何年も前から認識されているテーマですが、今後も課題があると思われます。
様々なデータがありますが、ここでは男女平等に焦点を絞って紹介したいと思います。
- あなたの職場では、男女は平等になっていると思いますか? 男性優位25.2%(-1%)
職場における男女平等について、「どちらかといえば男性が優遇されている」という回答は25.2%となりました。決して少ない数字ではありませんが、過去最低となっており、男女差も大きくありません。各企業が積極的に体制改善を進めた結果と考えられます。
- 法律や制度では、男女は平等になっていると思いますか? 男性優位43.5%(3.8%)
「法律や制度では、男女は平等になっていると思いますか?」という質問に「どちらかといえば男性が優遇されている」と答えた人の割合は、43.5%と、2016年より3.8%上昇しました。
さらに男女差が広く、女性の52.7%は法律・制度が男性優位と考えているようです。
割合が高いことも問題ですが、それ以上に男女差で認識の差が大きいことが課題です。先見性のある企業が積極的に体制改善を行っているのに対し、法律や制度は改善スピードが遅いことも、こうした数字の要因と考えられます。
- 社会全体では、男女は平等になっていると思いますか? 男性優位58.8%(+3.4%)
社会全体で、どちらといえば男性が優遇されていると感じている割合は58.8%となりました。また、男女差が非常に大きく、男性で50.5%、女性で67.3%となりました。
職場での男女平等が年々進んでいるのに対し、社会全体ではここ数回の調査で上昇し続けています。
社会意義に関する考察
職場での男女平等が進んだにもかかわらず、社会全体では進んでいないのはなぜでしょうか。
こちらは、Googleトレンドの「男女平等」の検索数推移です。2004年から2006年にかけてと比較すると、検索数が減っていることがわかります。
もちろん、検索数の変化だけで社会全体のニーズを反映することはできませんが、一時期と比較すると男女平等が注目される機会が減っていると考えられます。
その結果が、今回の調査結果につながったのであれば、もう一度問題提議を行うべきかもしれません。
データ⑦ メディア|スマートフォンの普及とマスメディアの減少
消費者の利用メディアの変化も、事業戦略、特にマーケティング分野で大きく影響します。
今回の調査からは、スマートフォンの影響力とマスメディアの減少が見えました。
- どのような情報関連機器・サービスを持っていますか? スマートフォン83.9%(+12.4%)
保有しているデバイスに関して、2010年の調査開始からスマートフォンの割合が飛躍的に伸びています。20代、30代では90%を超えました。60代も、2014年ごろから利用が増え始め、60%を超えています。
他のデータからも明らかですが、現在の情報関連機器は「スマートフォン」が圧倒的1位です。
- 自宅で無線LAN・Wi-Fiが利用できる環境 76.5% (+17.4)
スマートフォンの普及とともに、無線LANやWi-Fiの普及も進みました。現在では、ほとんどの人が自宅でWi-Fiに接続し、スマートフォンでYouTubeなどの動画コンテンツを消費しています。
2016年から2018年にかけて17.4%と大きく伸びていますが、通信料が安くなったり、プランの選択肢が増えたこと、デバイスの多様化でキャリア通信だけではニーズを満たせなくなってきたことが考えられます。
今後、IoTや5Gといったキーワードにより、この数字は100%に近づいていくでしょう。
- 平日、テレビ放送を見ていますか? 見ていない 4.6%(+0.5%)
- 平日、ラジオ放送を聞いていますか? 聞いていない 65.9%(+1.6%)
- 平日、新聞を読んでいますか? 読んでいない 52.5%(8.7%)
- 平日、雑誌を読んでいますか? 読んでいない 66.2%(+6.9%)
上記は、マスコミ4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)の利用傾向です。テレビに関してはまだ小さな割合ですが、すべてのマスメディアで利用しない割合が増加しています。新聞に関しては年齢差が大きく、20代の79%は読んでいません。
メディアに関する考察
メディアに関しては、ユーザーが使用するデバイスの影響を強く受けます。スマートフォンが普及したため、頻繁に触れるメディアもスマートフォン端末からアクセスできるものに移っていくでしょう。
根強いファンがいるテレビやラジオは増加が緩やかですが、新聞と雑誌は速い速度で増加しており、Webメディアやニュースアプリなどに流れていると考えられます。
データ⑧ 学習|多くの項目で学習意欲が低下
教育と学習は国の将来的な力に直結します。国が持つ最大の資産は人で、人の価値は多くの割合で学習によって高まっていくからです。
- いくつになっても、学んでいきたいものがある 36.1%(-1.4%)
「いくつになっても、学んでいきたいものがある」という質問は、調査開始から右肩下がりで、2018年は36.1%でした。地域、年齢、性別による差はほとんどなく、日本人全体で学習意欲が低下していると考えられます。
- 知識・教養を高めるための読書をよくしている 16.7%(-2.6%)
「知識・教養を高めるための読書をよくしている」という人の割合も年々低下しており、16.7%となりました。知識・教養を高める手段として、読書は基本と考えられています。それが低下していることはネガティブなデータと考えられるかもしれません。しかし、インターネットの進歩により、Web上での動画学習も普及しており、学び方が変わってきているとも考えられます。
- 社会人が気軽に学べる場がもっと増えるべきだと思う 25.6%(1.3%)
「社会人が気軽に学べる場がもっと増えるべきだと思う」も、調査開始以来右肩下がりで、25.6%でした。
今は人生100年時代といわれリカレント教育に注目が集まっています。また、技術革新のスピードが速いことから、1つのスキルで何十年も活躍し続けることが難しく、社会人の学びなおしや継続的なスキルのアップデートの必要性が高まっています。
それにもかかわらず、社会人の学びの場の必要性を感じている人の割合が減っていることは驚きです。
また、情報の項目で希望リタイア年齢70歳の割合が増えているデータを紹介しましたが、今の20代はこれから50年働き続けることになります。学びの場は必須といえますが、人々の意識はそうなっていないようです。
学習に関する考察
学習についても、ネガティブな変化が多いように感じます。「世界で活躍するための知識や思考法、対話術等の学びが必要だと思う」という項目に対しては、2016年から6.3%も減少し、29.5%となりました。企業の活動が国際化に向かっているのに対し、人の意識が内に向いていくのは、危険と考えられます。
しかし、一方で今回から項目に加わった「こづかいや副収入につながる技術や資格、免許を得たい」は31.8%と、比較的多くの人が、働き方の多様化への対応を考えていることがわかります。
当記事のデータは【博報堂生活総合研究所「生活定点」調査】を元としています。