【マーケティング戦略の軸】オウンドメディア運営のメリットと目的

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【マーケティング戦略の軸】オウンドメディア運営のメリットと目的

Webマーケティングに携わっている方なら、「オウンドメディア」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
しかし、「ペイドメディア」「アーンドメディア」まで聞いたことがある方はあまり多くはないかもしれません。
「オウンドメディア」「ペイドメディア」「アーンドメディア」の3つの違いや役割を説明できる方となると、ほとんどいらっしゃらないかもしれません。

これらを合わせて「トリプルメディア」といいますが、トリプルメディアと聞いて古い考え方だと思う方もいらっしゃるかもしれません。確かに、トリプルメディアという考え方は2010年頃に登場し、変化の速いWebマーケティングではかなり古い考え方です。
確かに、当時DSP広告もまだなく、オーディエンスターゲティングも登場したばかりで未熟なものでした。
今は世界で最も影響力のあるSNSの一つであるInstagramも2010年の10月に登場しましたし、今や当たり前となったスマートフォンも、当時の普及率は10%未満です。

とはいえ、「ユーザー行動が多様化しており、一つのメディア戦略では効果が出なくなってきている」という背景は変わりません。
むしろ行動の多様化、メディアの増加が加速している現在ほど、トリプルメディアの考え方は重要になっています。

今回は、トリプルメディアの中でも軸となる「オウンドメディア」に焦点を当て、「オウンドメディア」とは何か、どうして注目を集めているのか、何に有効なのか、などなどについて、一挙に解説していきます。

オウンドメディアとは

オウンドメディアは企業自らがコンテンツを発信し、マーケティング戦略の軸となるメディアを指す

オウンドメディアは企業自らがコンテンツを発信し、マーケティング戦略の軸となるメディアを指す

オウンドメディアとは、「自社で保有するメディア」のことを指します。
本来は、パンフレットのようなオフラインのメディアも含む言葉ですが、Webマーケティングの文脈においては、自社で運営しているWebサイトやブログのような情報発信メディアを指すことがほとんどです。
また、FacebookTwitterなどのSNSの自社で運営している企業公式アカウントも、本来の意味ではオウンドメディアなのですが、一般的にSNSはオウンドメディアとは呼ばないことが多いです。
SNSを総称して「アーンドメディア」ということがありますが、アーンドメディアの本質はユーザーが作り出すメディアという点にあります。自社発信の場である自社のSNSアカウントは、アーンドメディアの一部にあるオウンドメディアという立ち位置になります。

オウンドメディアが注目されている理由

アーンドメディア、ペイドメディアの活用は、オウンドメディアを軸に置くことで循環し、より大きなマーケティング効果を得ることができる

アーンドメディア、ペイドメディアの活用は、オウンドメディアを軸に置くことで循環し、より大きなマーケティング効果を得ることができる

オウンドメディアが注目されている理由は、SNSの普及が背景にあります。2011年~2014年頃に、FacebookやTwitterといったSNSが国内で普及したことで、それをビジネスに活用しようとする動きが起こり、SNSマーケティングのブームが起こりました。
しかし、SNSマーケティングだけではビジネスの成果には結び付きにくいことがわかり、SNSブームは長くは続きませんでした。
SNSは、企業とユーザーが気軽に接触できる場ではありますが、その気軽さゆえに、ユーザーの購買意向が高まり切らず、実際の成果には繋がらなかったのです。もちろん、SNSマーケティングで成果を上げている企業も多くありますが、非常に難易度が高く、運営コストにかかるだけのリターンが獲得できている例は多くありません。

そこで、自社のWebサイトをブログのようにコンテンツメディア化して、SNSマーケティングと併用してユーザーの購買意向をより高める機会を作り出すとともに、SEO対策によりより大きな市場、幅広いユーザーニーズに対応するためにオウンドメディアに再び注目が集まりました。
SNSでリーチできるユーザーは、基本的にそのSNSの利用者が、利用中に限ります。しかし、オウンドメディアはSNSからはもちろん、検索やリファラなど、様々な経路からリーチすることができます。
SNSでリーチしたユーザーにさらに追加の情報を与え購買意向を高める事もできますし、検索ですでに強いニーズを持ったユーザーに直接アプローチすることもできます。まとめサイトやニュースサイトから、潜在層を連れてくることもできます。
SNSマーケティングほど気軽ではないけれど、より幅広いユーザーニーズに答え、顧客接触、顧客獲得の機会を最大化する。オウンドメディアの注目には、SNSマーケティングの課題が裏側にあったわけです。

ペイドメディア、アーンドメディアとの違い

ペイドメディア、アーンドメディアとの違い
オウンドメディアを語る際に必ず出てくるのが、オウンドメディアを含めて「トリプルメディア」と呼ばれる、ペイドメディア、アーンドメディアと呼ばれる3つのメディアです。
まずオウンドメディアは、英語の「owned」=「保有する」から来ています。つまり、自社で保有しているメディアのことです。
自社で保有しているので、情報発信するのにかかるコストは新規コンテンツの作成とWebサイトの構築管理だけ、かつ過去に発信したコンテンツが蓄積されていくというメリットがあります。

後述しますが、発信したコンテンツが蓄積されていくことで、SEO対策として非常に高い効果を持ったり、継続的な集客に繋がったりと、数多くのメリットが生まれてくるので、この「コンテンツの蓄積」こそがオウンドメディアのカギになります。

次に、ペイドメディアは、英語の「paid」=「有料の」から来ています。有料のメディア、つまり広告のことです。Web広告やオフライン広告などがペイドメディアにあたります。
ペイドメディアは、不特定多数のユーザーに短期間で接触することができるというメリットがあります。
そのため効果がわかりやすく、広告主の意思通りに訴求をすることができます。しかし、名前の通りかかるコストが大きく、広告を停止すれば効果がほとんどゼロになる(ブランディング広告の場合は別です)ため、中長期的なマーケティング戦略では、オウンドメディアやアーンドメディアをサポートする、サービスリリース時やキャンペーン時にプッシュする、といった目的で利用されます。

最後に、アーンドメディアは、英語の「earned」=「獲得する」から来ています。獲得するメディア、というとピンと来ないかもしれませんが、これは信用や評判を獲得するメディア、つまりSNSなどユーザー自身のコンテンツで成り立つメディアを指しています。
アーンドメディアは、SNSを使って、自社の商品・サービスを売り込まずに信用や評判を得るためのメディアです。
そのため、ブランディングとして重要な役割を持つメディアとも言えます。

オウンドメディアはSEO観点で有効

オウンドメディアは、SEO的な観点からの有効性が非常に大きな強みと言われています。
その理由としては、オウンドメディアは、過去に発信したコンテンツが積み重なって資産となって蓄積されていきます。そうなると、オウンドメディア全体の情報量が豊富になっていき、ドメインパワーがどんどん強くなっていきます。
コンテンツが蓄積されていくことで、外部からの被リンクを受けることも増えていきますし、検索結果の上位に表示される記事も増えやすくなってきます。

つまり、コンテンツを公開するとサイト全体のコンテンツ量が増え、被リンクを得られる機会が増え、ユーザー数も増え、サイト全体の評価が上がる、という現象が起こります。
ペイドメディアに月100万円投資し続けたら、1年後も100万円の効果があります。しかし、オウンドメディアはコンテンツが蓄積されるという特徴から、月に10万円投資し続けたら1年後には10万円の投資で120万円分の効果を得ることができるのです。

結果として、SEO対策が盤石になり、安定した右肩上がりの成長を続けられることが、オウンドメディアの強みです。
この「過去のコンテンツが蓄積される」という特性は、ペイドメディアやアーンドメディアにはない、オウンドメディア特有のもので、オウンドメディアが注目される最大の理由です。

オウンドメディアで得られるメリット

オウンドメディアで得られるメリット
オウンドメディアは、マーケティング戦略の基盤になるほど、多くのメリットがあります。
ここからは、企業がオウンドメディアに取り組むべき理由について、一挙にまとめていきます。

オウンドメディアのメリット①継続的な集客に有効

オウンドメディアのメリットの1つ目は、継続的な集客に有効であることです。繰り返しになりますが、コンテンツが蓄積されるという特徴から、オウンドメディアは運営すればするほど成果が安定し、また右肩上がりになります。
Web広告と比べてかかるコストは小さく、必要なものは発信するコンテンツだけです。最近は動画メインのオウンドメディアも増えてきていますが、まだまだテキストコンテンツの需要も少なくありません。

そして、先述の通り、過去に発信したコンテンツは、オウンドメディア上にどんどん蓄積されていき、消えてしまうことはありません。そのため、コンテンツの発信を続ければ続けるほど、過去のコンテンツからの流入が増えていきます。
一度軌道に乗せてしまえば、過去のコンテンツが自動的に流入を集めてくれるようになるので、安定的かつ継続的な集客ができるようになるのです。

オウンドメディアのメリット②ファンを作るのに有効

オウンドメディアのメリットの2つ目は、ファンを作るのに有効であることです。オウンドメディアを立ち上げる前は、「自分の会社は何も発信できるコンテンツがない…」とお悩みの方も多いかもしれません。
しかし、そういったお悩みが、逆にオウンドメディアを成功させることがあるというのも少なくない話です。
というのも、読者はオウンドメディアのコンテンツに、専門性やオリジナリティを求めています。
ニッチな業界の企業であれば、そのニッチさを武器にして専門性で勝負してみたり、そうでなければ、社内の様子などがわかるオリジナリティを活かしたコンテンツを発信してみたりと、戦略はいくらでもあるのです。
そして、そういった戦略が、その会社のオウンドメディア独自のファンを生み出します。
会社、サービスのファンを増やすことは、マーケティング最大の目標です。ファンはブランドスイッチされにくく、良いクチコミによって他のユーザーの購買意向を高めてくれたりします。
最近はSNSでファンを獲得する企業も増えていますが、基本的にはオウンドメディアで獲得したファンをSNSで繋ぎ止める、関係性を持続させることになります。濃いファンを得るには、SNSだけではなく、オウンドメディアで濃く独自性の高いコンテンツを出していくことが重要です。

オウンドメディアのメリット③広告費カットに貢献できる

オウンドメディアのメリットの3つ目は、広告費カットに貢献できることです。
オウンドメディアは、基本的に自然検索、またはSNSやリファラからの流入を軸にして集客を行います。
そのため、オウンドメディアの集客自体には、一切コストがかかりません。

リスティング広告に代表されるWeb広告は、即効性はあるもののコストがかかり続ける上、ユーザーは広告慣れしたことでリスティング広告よりも自然検索をクリックするようになってきています。
オウンドメディアでコンテンツを蓄積して流入を増やすことは、リスティング広告への依存から脱却し、広告費なしで集客できるようになることと同義であり、広告費カットに大きく貢献することができます。

オウンドメディアのメリット④売り込まないブランディングができる

オウンドメディアのメリットの4つ目は、売り込まないブランディングができることです。
オウンドメディアで発信するコンテンツは、コラムやお役立ち情報などが多く、オウンドメディアで直接販促を行うということは基本的にはしません(記事の最後に誘導をつける等はあります)。
そういった情報の発信を続けていると、読者の中で信頼感が作り上げられていきます。
これが、売り込まないブランディングです。
オウンドメディアの中で直接売り込んでいるわけではないのに、オウンドメディアの読者は結果的に成約率が普通のユーザーと比べて高まるという現象が起こります。
オウンドメディアの読者に対してブランディングが行える状態が作り出せれば、営業の効率もアップしますし、広告費もカットできますし、いいことづくめです。
売り込まないブランディングができることは、オウンドメディアの非常に大きなメリットです。

オウンドメディアの目的とは

オウンドメディアの目的とは
ここまで、オウンドメディアとは何か、オウンドメディアのメリットとは何かについて説明してきましたが、最後にオウンドメディアの目的を考えてみましょう。
オウンドメディアの目的は、オウンドメディアを運営する企業によって異なりますが、多くの場合、「集客」「ブランディング」「リード獲得」の3つです。
順番に解説していきます。

オウンドメディアの目的①集客

オウンドメディアの目的の1つ目は、集客です。オウンドメディア自体への集客を目的としている場合もあれば、オウンドメディアを通じてコーポレートサイトや商品サイトへ誘導することを目的としている場合もあります。
目的としては一番シンプルで、とにかくより多くの流入を集めることが目標になります。
そのためには、より多くのコンテンツを発信し、より多くのキーワードで掲載順位の上位を獲得することが重要です。
集客を目的としてオウンドメディアを運営している場合は、ペイドメディア(Web広告)も併用して運用している場合が多いのではないでしょうか。
ペイドメディアで顕在層を獲得しながら、オウンドメディアで潜在層を獲得していくイメージになります。
その場合、オウンドメディアの役割としては、潜在層への初回接触、認知獲得となります。

オウンドメディアの目的②ブランディング

オウンドメディアの目的の2つ目は、ブランディングです。オウンドメディアがブランディングに強い点に関しては、オウンドメディアのメリットの4つ目で既に解説した通りです。
ステップとしては、目的①の集客よりも1歩先になり、一度集客したユーザーに対して繰り返しコンテンツを読んでもらうことでユーザーとの信頼感を強めていき、ブランディングに結び付けていくことになります。

ブランディングを目的としてオウンドメディアを運営している場合は、SNSも併用して運用している場合が多いのではないでしょうか。
SNSも、ブランディングとしては非常に優れたメディアです。SNSでブランディングに成功している有名な事例としては、家電メーカーのSHARPやタニタ、ゲーム機メーカーのSEGAなどが挙げられます。
しかし、SNSでブランディングを成功させるのはオウンドメディアよりも難易度が高いものです。
その理由としては、SNSはオウンドメディアと違って2つの弱点を持っているためです。

それは、①コンテンツが蓄積されない、②検索エンジンを頼れない、の2つです。SNSの投稿は、蓄積されず流れていってしまい、かつ検索エンジンではあまり引っ掛かりません。
そのため、投稿した「現在」しか見ることができず、フォロワーを増やさないと見てもらうことすら難しいのです。
その点、オウンドメディアであれば、発信したコンテンツは全て蓄積されていきますし、過去のコンテンツも検索エンジンで閲覧することができます。ブランディングをより成功させやすいのは、やはりオウンドメディアと言えるでしょう。

オウンドメディアの目的③リード獲得

オウンドメディアの目的の3つ目は、リード獲得です。インバウンドマーケティングというマーケティング手法が浸透してきていますが、インバウンドマーケティングにおけるオウンドメディアはリード獲得が主な目的になります。

リード獲得は、オウンドメディアの目的の中では最も売上に近い目的と言えます。そのため、オウンドメディアを立ち上げるときに最初の目的としてリード獲得を設定する方も多いのですが、いきなりリード獲得を目指すのは失敗の元です。
オウンドメディアは、あくまでも情報発信の場であって、営業をかける場ではありません。まずはコンテンツを多く発信して集客を行い、時間をかけてユーザーとの信頼感を作り上げてブランディングを成功させ、そこまでいってようやくリード獲得が目的として見えてきます。

オウンドメディアがリード獲得に向いているのは事実ですが、いきなりリード獲得を目指すのはやめておいた方が良いでしょう。逆に、オウンドメディア内でブランディングがしっかりできていれば、リード獲得は自ずとできるようになってきます。
まず集客目的でオウンドメディアを運営し、ある程度集客ができるようになったらブランディングのため、メールマーケティングやSNSマーケティングを併用。そして、集客、ブランディングの基盤がある程度できたら、リード獲得に向けてコンテンツオファーなどの仕組みを強化していく、という順序があります。

Grabも最初一年は集客に奔走し、その後、リピーター向けのシリーズ記事企画などを行ってきました。最初からリード獲得を目的に運用していたら、そもそも集客できないメディアになってしまっていたかもしれません。

目先の売上を追いかけるのではなく、じっくり腰を据えて、顧客のライフタイムバリューを考えてオウンドメディア運営を行っていきましょう。
そうすれば、リード獲得という目的も必ず達成できるようになるはずです。

オウンドメディアを運営することで得られるメリットと目的まとめ

今回は、ウンドメディアとは何か、オウンドメディアを運営することで得られるメリット、オウンドメディアを運営する目的について、一挙に解説してきました。近年非常に注目を集めており、多くの企業が取り組んでいるオウンドメディアについて、理解を深める手助けになれたでしょうか。

オウンドメディアは、今ではWebマーケティングを行う上では運営は必須といっても過言ではないほど存在感を増してきているメディアでもあります。
特に、リスティング広告に依存してしまっていて、広告費が膨れ上がって困っているという方は、リスティング広告依存の状態から脱却するためにも、ぜひオウンドメディアの運営を始めてみるべきです。
オウンドメディアは、本文中で解説した通り、低コストで継続的に集客できるのが大きなメリットの1つでもあります。
少ないリソースでも始めることができますから、この記事をご覧になった方は、この内容を参考にして、オウンドメディアの立ち上げを検討してみてください。