目次
前回はWebサイト制作に必要な知識(サーバー、コーディング、CMS等)について解説しました。デザイナーといっても、画像や動画などのビジュアルばかり作っているわけではなく、HTMLやCSSなどでコーディングしたり、JavaScriptやPHPを使って簡単なプログラミングを行うこともあります。
1.Webデザインとは?-アート、グラフィックとの違い
2.ノンデザイナーがデザインする際の考え方
3.これだけでプロっぽいデザインに!デザインの原則
4.“意味のある”ロゴデザイン
5.これだけ抑えれば大丈夫!広告バナーのデザイン
6.ノンデザイナー向け広告バナーデザインツール
7.Webサイトの構造とレイアウト
8.Webサイト制作に必要な知識
9.デザイナーのための広告・マーケティングの基礎知識
本シリーズ最後の今回は、デザイナーとして知っておきたい広告・マーケティングの基礎知識を解説します。
最後がデザインの話じゃないことに違和感があるかもしれませんが、デザイナーにとって、広告やマーケティングの知識は重要です。こうした知識を理解しておくと、デザインに役立つだけではなく、周りの方と連携をとる際にも役立ちます。ノンデザイナーの方もこれらの知識を理解して、より良いデザインを作りましょう。
なぜデザインに広告・マーケティング知識が必要なのか?
デザイナーは、常に理想的なデザインを目指します。それは、最新のトレンドだったり、アート性の高いデザインだったりとさまざまです。しかし、そのデザインがビジネスに直結するか?と問われたら、なかなか直結してくれません。
最新のトレンドやアート性の高いデザインを反映しても、ビジネスの目標が達成されるとは限りません。むしろ、こうした理想を押し付ければ、商業的に失敗する可能性があります。
デザインはあくまで問題解決の手段です。トレンドやアートを反映しただけのデザインでは人の心は動かし、ビジネス的に意味のある行動をしてもらうことはできません。問題解決を意識したデザインのみ、人の心を動かし、ビジネスの目標が達成されます。そして、その延長線上に美しいデザインが存在するのです。
数あるデザインの中には、デザイン視点とマーケティング視点が組み合わされた成果物が存在します。デザイナーが目指すべきは、こうしたゴールです。
デザイン視点とマーケティング視点
デザインには、デザイン視点とマーケティング視点が存在します。この2つの視点がどちらかに偏りすぎると、成果物のクオリティが下がる場合があります。
例えば、デザイン視点の強い「トレンド重視」「かっこよさ重視」のデザインは、マーケティング的な目的を達成できない可能性が高いです。もちろん、ファッションブランドでも家電ブランドでも、製品のコンセプトに合ってトレンドやかっこよさを追い求めるのであれば問題ありません。
続いて、マーケティング視点の強い「情報量が多い」「選択肢が多い」デザインも、実は目的が達成できない場合が多いのです。ユーザーにとって、何を選択して良いのかわからない一方的なデザインは不親切といえます。マーケティング視点が強いと、デザイナーが考えて構成したデザインを否定しがちです。理論的には正しい提案でも、マーケティングのゴールにつながるかはわかりません。
そのため、マーケティング視点とデザイン視点の両方を持つことが重要です。デザイナーがマーケティング視点を持っていれば、デザインとマーケティングの間にあるベストな成果物を作ることができます。これは当然、マーケターにも同じことがいえます。マーケティングとデザインは多くの場合、一つの成果物や企画としてアウトプットされます。マーケターもデザイン視点を持つ必要がありますし、デザイナーもマーケティング視点を持つ必要があります。
デザイナーにとって広告・マーケティング視点は大きな武器
デザイナーがマーケティング視点を持つと、デザインに大きな説得力が出ます。常に、論理に基づいたデザインが展開できるので、改善する際もスムーズに進むことでしょう。
またこれからのデザイナーは「デザイン+α」が大切です。各+αの中でも、マーケティング視点は特に役立ちます。将来的に独立した後も自分でデザインやマーケティングができるので心強いです。
今からでも広告・マーケティングの知識を身につけて、大きな武器を手に入れましょう。
デザイナーが知るべき広告・マーケティングの基礎知識
ここでは、デザイナーが知るべき広告・マーケティングの知識を紹介します。マーケティングも非常に幅広く、奥が深い分野です。とりあえず用語だけ覚えて、関わる機会が来たときにしっかり学びましょう。
ディスプレイ広告
ディスプレイ広告は、「サイトやアプリ上に表示される画像や動画、テキスト広告」を指します。本シリーズでも紹介したバナー広告もディスプレイ広告の一種です。バナーの作り方で完成したバナー広告は、掲載先の媒体で表示されます。
ディスプレイ広告の多くは、Googleが提供するGDN(Google Display Network)、Yahoo!が提供するYDN(Yahoo Display Network)などに出稿します。そのほかにも、サイトが独自に設けた広告枠に出稿可能です。
DSP広告など、新しくユニークな広告施策も数多く誕生しています。全部の役割を覚える必要はありませんが、デザイナーとして、ディスプレイ広告とはどういうもので、どんなところに表示されるのかは知っておきましょう。
SEM
SEM(Search Engine Marketing)は「検索エンジンマーケティング」の略です。「Webサイトへの訪問者数を検索エンジンから増やすマーケティング手法」を指します。SEMの基本は「SEO」と「リスティング広告」です。
SEO
SEO(Search Engine Optimization)は「検索エンジン最適化」の略です。「GoogleやYahoo!などの検索エンジンで、特定のWebページを上位表示させる施策」を指します。一般的には、SEO対策と呼ばれており、オーガニックサーチ(自然検索)による検索需要を狙います。
SEOは古くからWebマーケティングの軸として活躍しています。これだけSNSやアプリが普及しても、消費者の多くは何か知りたいとき、探したいとき、行きたいとき、やりたいときに検索エンジンを利用しています。
リスティング広告
リスティング広告は、「GoogleやYahoo!で検索した結果に応じて表示されるテキスト広告」です。よく検索結果の上部に「広告」というマークのついた結果が表示されますよね。この欄に表示されている検索結果は、すべて出稿されたリスティング広告になります。
リスティング広告はWeb広告の基礎で、費用対効果を求められる広告施策ではほとんど間違いなく活用されるでしょう。
SNSマーケティング
SNSマーケティングとは「TwitterやFacebook、Instagram、LINEなどを利用した集客施策」です。各SNSに用意された広告枠を利用したり、日々の投稿による施策で集客したりと、あらゆる手法でユーザーを集めます。近年、SEMよりも重視されることが多く、活用される機会が増えています。
LP
LP(ランディングページ)とは、「広告のリンク先など、集客とクロージング力に特化したページ」を指します。一般的なWebサイトとは違い、集客とクロージングを目的としているため、テーマとなる情報以外は掲載しません。
基本的にLPは、ディスプレイ広告やリスティング広告から遷移します。少しでも製品に興味を持った人が訪れるため、コンバージョン(成果)が得やすいです。ただし、LPの質が悪いと、ユーザーが離脱する恐れがあります。
いいLPを作るには、高度なデザイン視点とマーケティング視点を両立させる必要があります。また、Webマーケティングで最も重要なデザイン成果物といっても過言ではありません。どんな広告施策も、効果的なLPがなければ成果につながることはありません。LPのデザインをする機会があるということは、デザイナーとして力を試されている時と思いましょう。
LPO
LPO(Landing Page Optimization)は「ランディングページ最適化」の略です。LPを用意しても、必ず用意したコンバージョンに達するとは限りません。そんなときに行うのがLPO対策です。
LPOは「より良いテキストやコンテンツを用意して、離脱を防ぐことコンバージョンを上げる手法」です。LPのコンバージョンが少ない場合は、LPO対策を行い、改善を図ります。
EFO
EFO(Entry Form Optimization)は「入力フォーム最適化」の略です。「Webサイトにある入力フォームをユーザーがわかりやすいように改善する施策」です。
広告・マーケティングにおいて、ユーザーが入力フォームまで到達した時点であと一歩です。ここで、ユーザーがわかりにくい入力フォームになっていると、せっかくの機会を失ってしまいます。
そこでEFO対策を行い、ユーザーが入力しやすい環境にすることで、コンバージョンを高められます。
ステップメール
ステップメールは、「ユーザーに対して段階的にアクションを促すメールを送るメールマーケティングの一種」です。ちなみにメルマガも同じメールマーケティングになります。
メルマガは、企業の好きなタイミングに好きな情報を送信する「企業主体」のメールマーケティング。一方、ステップメールでは、資料のダウンロードや会員登録など、アクションを起こした方に配信される「ユーザー主体」のメールマーケティングです。
ユーザーが関心を向けているタイミングに配信するステップメールは、メルマガよりも好意的な反応が返ってきやすいとされています。
ステップメール自体は古くからある施策ですが、最近はCRMはMAと連動して、より個人の行動や興味関心にカスタマイズされたOne to Oneのメールマーケティングが注目されています。
PDCA
PDCAは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(確認)」「Action(行動)」の略です。このP・D・C・Aを高速で回すことで、「成果物をブラッシュアップしていく手法」です。
PDCAは、もともと品質管理手法のひとつでした。現在では、ビジネスをはじめ、多くの場面で使用されています。そのため、デザインを制作する上でもPDCAは有用です。
まとめ
第9回では「デザイナーとして知っておきたい広告・マーケティングの基礎知識」と題して、広告・マーケティングの基礎知識を解説しました。ノンデザイナーの方も広告やマーケティングの基礎知識を身につけて、実戦に生かしてください。
本シリーズでは、全9回にわたり「ノンデザイナーがデザインを作る」というテーマで記事を更新してきました。現代は昔に比べると、さまざまなコンテンツが登場し、だれでもデザインが作れる環境になっています。ただし、デザインツールの使い方や知識を身につけなければ、魅力的なデザインは作れません。
そこで本シリーズでは、できるだけ難しい話は除いて、デザインの心構えやツールの使い方、基礎知識などを解説しました。ノンデザイナーとして、片手間にデザインを作るなら十分な情報だと思います。見様見真似でとりあえずデザインしていたノンデザイナーの方は、こうした知識を知っておくだけで、品質がグッと上がるはずです。
ノンデザイナーとしてデザインを作る中で、さらに興味を持った方はより深い知識をつけてください。デザインの世界は奥が深く、タメになることばかりです。本シリーズが少しでもノンデザイナーの方の役に立てれば幸いです。
1.Webデザインとは?-アート、グラフィックとの違い
2.ノンデザイナーがデザインする際の考え方
3.これだけでプロっぽいデザインに!デザインの原則
4.“意味のある”ロゴデザイン
5.これだけ抑えれば大丈夫!広告バナーのデザイン
6.ノンデザイナー向け広告バナーデザインツール
7.Webサイトの構造とレイアウト
8.Webサイト制作に必要な知識
9.デザイナーのための広告・マーケティングの基礎知識