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最近のWeb広告のトレンドと言えば、動画広告を欠かすことはできません。
中でも、動画投稿サイトのYouTubeでの動画広告の出稿量の爆発的な増加には目を見張るものがあります。
余談ではありますが、ユーチューバーの年収ランキングが発表され、1位と3位が8歳、5歳ということが話題になりましたね。1位のライアン・カジ君は8歳で年収28億円、3位のアナスタシア・ラジンスカヤ君は5歳で年収20億円です。
凄い数字ですよね。アナスタシア君が動物園で子どもたちに人気の曲「ベイビー・シャーク」を踊るシーンを摂った動画は再生回数7億6700万回だそうです。
何が言いたいかというと、それだけ大量の人がYouTubeを見ているということが一つ。もう一つは、彼らの収入の大部分はYouTube動画の広告収入で、それだけYouTubeに広告出稿している広告主がいるということです。
今回は、そんなYouTube広告の成功事例と、YouTube広告を成功させるためのコツについて解説していきます。
これから動画広告を始めようとしている方はもちろん、現在YouTube広告を運用してあまり成果が出ていないという方も、ぜひ参考にしてみてください。
YouTubeの動画広告の形式は2つ
YouTubeに出稿できる広告の形式としては、動画広告以外に、静止画のバナーを表示するディスプレイ広告もありますが、ここでは動画広告に限って解説していきます。
その動画広告にも、「インストリーム広告」と「バンパー広告」の2種類がありますので、ひとつずつ解説していきます。
YouTubeに出稿できる広告の種類については、「動画だけじゃない?7種類のYouTube広告【種類と特徴】」をご覧ください。
YouTubeの動画広告①:インストリーム広告
インストリーム広告は、動画の前後、あるいは途中に挿入される、6秒より長い動画広告のことです。
スキップ可能なものとスキップ不可のものがあり、スキップ可能なものは再生開始から5秒経過するとスキップができるようになり、スキップされた場合、広告費は発生しません。
YouTubeの動画広告②:バンパー広告
バンパー広告は、動画の前後、あるいは途中に挿入される、6秒間の短い動画広告のことです。
6秒間という制約がある代わりに、ユーザーは広告を途中でスキップすることができないので、最後まで確実に広告を見てもらえるというメリットがあります。
YouTube動画広告の成功事例から学ぶポイント
YouTube広告で成功を収めるためのコツとしては、どのようなポイントを意識すればよいのでしょうか。
YouTube広告の動画クリエイティブを作る際には、インストリーム広告とバンパー広告のどちらの形式で出稿するのかをまず決めることが大切です。
インストリーム広告とバンパー広告では、広告の中で伝えるべき内容が異なってくるからです。
ここでは、インストリーム広告とバンパー広告に共通するポイント、インストリーム広告で重要なポイント、バンパー広告で重要なポイントの3つに分けて解説していきます。
インストリーム広告とバンパー広告に共通のポイント
インストリーム広告とバンパー広告に共通の、YouTube広告全般に言えるポイントとしては、YouTube広告は基本的に「潜在層向け」の広告であるということです。
潜在層とはつまり、自社の商品・サービスに対して明確なニーズを持っていない、言い換えれば自社の商品・サービスに対して「興味が無い」ユーザーということです。
そのため、YouTube広告を出稿する際には、ユーザーはその広告に興味が無いという前提を必ず意識することが大切です。
また、潜在層向けの広告であるということは、消費者行動のファネルに当てはめて考えれば、「認知獲得」の段階にあたるのがYouTube広告とも言えます。
自分からアクションを起こしているユーザーにアプローチする検索広告と違って、まずは広告を見てもらって、自社の商品・サービスを知ってもらい、興味を持ってもらうところからスタートしなければならないということを念頭に置いておきましょう。
インストリーム広告で重要なポイント
インストリーム広告は、スキップ可能なものとスキップ不可のものがありますが、スキップ不可の動画広告を長時間見続けることをユーザーに強制することはユーザーにとってストレスが大きいため、スキップ可能なものが主流となっています。
「スキップ可能な動画広告」は、ユーザーにとっては興味のない動画広告を長時間見続ける必要がなく、広告主にとってはスキップされた場合は広告費が発生せず、予算を効率よく使うことができます。ユーザーと広告主の双方にメリットがある形式です。
しかし、上述の通り、動画広告を見るユーザーの大半は、そもそも自社の広告や商品・サービスに興味がありません。もちろんYouTube広告でも興味関心やプレースメントでターゲティングして、潜在顧客に広告を届けます。しかし、ユーザーには見たい動画があり、その前や途中に差し込まれるわけですから、見てもらうことは簡単ではありません。
インストリーム広告がスキップ可能になるまでの5秒間は、どうしてもスキップボタンを注視してしまいがちになります。
スキップボタンばかりに目が行って、肝心の広告部分が全く見てもらえないとなると、広告費は発生しないとはいえ、広告主にとっては機会損失が大きいと言えます。
つまり、インストリーム広告で一番大事なのは、「最初の5秒間でいかにユーザーの興味を惹いてスキップすることを忘れさせるか」というポイントにあります。
インストリーム広告の全体の尺自体は、15秒や30秒のものが主流ですが、実質的には最初の5秒間が勝負なのです。
バンパー広告で重要なポイント
バンパー広告は、6秒間と非常に短い制約がある代わりに、インストリーム広告と違ってスキップボタンが表示されません。そのため、スキップボタンにばかり注目が集まってしまうということがなく、ユーザーの意識を動画広告自体に集めることができます。
そもそも6秒間という短い時間でユーザーに訴求を伝えなければならないので、インストリーム広告と同じくこの短い時間でユーザーの興味を惹く必要があります。しかし、インストリーム広告の場合は「動画を最後まで見てもらうこと」を目的として興味を惹くクリエイティブ作りをする必要があるのに対し、バンパー広告の場合は最後まで見てもらうことは前提としてあるので、「ユーザーの意識に残ること(商品・サービスを認知してもらうこと)」が大切になります。
スキップさせないためのインパクトを作り出すのではなく、6秒間という短い時間で必要十分な情報を詰め込むことが重要です。
YouTube広告の成功事例3選
YouTube広告の種類と、成功のためのコツについて簡単におさらいしたところで、YouTube広告の成功事例を見ていきましょう。
アウディ:インストリーム広告であえてスキップさせる
1つ目に、インストリーム広告の成功事例として、アウディの事例をご紹介します。
自動車メーカーのアウディは、新型のR8の発売時にインストリーム広告を出稿することに決めましたが、いかにインストリーム広告をすべてのユーザーに見てもらうか、そしていかに少ない広告予算で費用対効果を高めるかに主眼を置いていました。
そこでアウディは、インストリーム広告がスキップ可能になるまでの5秒間と、新型R8の特徴である、停止状態からわずか3.5秒でトップスピードに達する加速性能に着目しました。
その結果、アウディが導いた答えはこうです。
まず、インストリーム広告の再生開始と同時にR8を発進させ、3.5秒でトップスピードに達するまでの映像を流します。そして、残りの1.5秒で商品名と企業名を表示します。
ここまでで、インストリーム広告がスキップ可能になるまでの5秒間は終了です。
その後は何の映像を流したかというと、「もうこの広告をスキップしても大丈夫です」という文言を表示したのです。
つまり、インストリーム広告をすべて見てもらうために最初の5秒間でユーザーにインパクトを与えるのではなく、最初の5秒間だけを広告として使い、残りの時間は広告を表示せずあえてスキップさせるという戦略を取ったのです。
※実際にYouTube広告として流れたシーンは34秒から※
この戦略の優れたところは大きく2点あります。
1つ目は、広告部分はユーザーが広告をスキップできるようになるまでの5秒間だけなので、確実に動画広告すべてをユーザーに見てもらうことができるということです。
まるでバンパー広告のような出稿の仕方ですが、バンパー広告ではなくインストリーム広告で出稿することでもう一つの価値が生まれます。
2つ目は、ユーザーにあえて動画広告をスキップさせることで、「インストリーム広告はスキップされた場合は広告費が発生しない」という仕組みを逆手に取り、ほとんど広告費を使うことなく、より多くのユーザーに動画広告を見せることに成功したのです。
まさに発想の転換で、アウディはこの戦略によってR8の広告宣伝で大きな成果を上げました。
インストリーム広告という広告形式と、ユーザーのほとんどは広告をスキップするというユーザー行動をよく理解していたことで生まれた成功事例と言えます。
スマイルゼミ:認知拡大だけでなく同時に顧客獲得にも成功
2つ目に、同じくインストリーム広告の成功事例として、日本の通信教育サービスを展開しているスマイルゼミの事例をご紹介します。
スマイルゼミは、小中学生向けにタブレット端末を使った通信教育を行っているサービスで、新規顧客獲得を目指し、新たなメディアへの広告出稿を検討していました。
そこで、YouTubeへの動画広告の出稿を決めたのですが、YouTube広告は顧客の獲得よりも認知拡大に向いている広告です。
認知だけでなく、顧客としてコンバージョンの獲得を狙うために、スマイルゼミはTrue Viewアクションという機能を活用しました。
True Viewアクションは、インストリーム広告の配信中に、自社サイトへのリンクやユーザーに行動を促すボタン(CTA)を表示することで、ただ動画広告を見てもらうのではなく、その先のサイト誘導を促すための機能です。
一般に、YouTube広告は教育系の商材と相性が良いと言われています。
その理由は、教育系の商材に興味があるユーザーは、それについてもっと知りたいという意識を持っていることが多く、YouTube広告のような潜在層向けの広告であっても、広告に対して興味を持ち、サイトに訪問する可能性が比較的高いからです。
そうした、元々商材が持っているYouTube広告との相性の良さと、True Viewアクションの相乗効果によって、ディスプレイ広告の1.3倍ほどのCPAで新規顧客の獲得に成功しました。
繰り返しになりますが、YouTube広告は認知拡大のための広告という面が強いので、基本的にコンバージョンの獲得効率は良くなく、CPAは非常に高い数値になってしまいがちです。
そのYouTube広告で、ディスプレイ広告のわずか1.3倍という低単価で新規顧客の獲得増加に成功したことは驚異的です。
認知拡大だけでなくコンバージョン獲得の目的でYouTube広告を配信して成功を収めた事例と言えるでしょう。
ダンボール・ワン:地域を限定して認知拡大・ブランドリフトに成功
3つ目に、YouTube広告での認知拡大に成功した事例として、梱包資材の販売を行っているダンボール・ワンの事例をご紹介します。
ダンボール・ワンは、石川県に拠点を置く企業で、ダンボールや梱包資材の販売では業界トップの地位を築いていますが、地元の若者に対しての知名度が低く、人材を募集してもなかなか集まらないという課題を抱えていました。
一般的な採用メディアにも募集の出稿はしてみたものの、応募する学生から見ると、名前も知らない企業にエントリーするという意識はあまりなく、お金を払って出稿しているのに応募が集まらず、費用対効果が悪くなっていました。
そこで、一般的な採用メディアではなく、YouTube広告に着目したのです。
YouTube広告であれば、見ているユーザー層も若者が多く、かつ企業の名前を知らなくても広告を見てくれる可能性があり、高い費用対効果が見込めるというのが決め手でした。
RGB風の動画クリエイティブで、社員の顔を見せることで、ユニークさ、アットホームな雰囲気などの魅力が伝わってきます。
結果としては、わずか15日間で、約47万人のユーザーに約168万回広告を表示させ、15万回以上の再生回数を記録しました。
加えて、YouTube広告でどれだけ認知拡大に成功したかを判断するためのブランドリフト調査も同時に実施したところ、動画広告を見たユーザーは、見ていないユーザーに比べてブランド想起率が2.5倍と非常に高い数値を残すことができました。
採用メディアへの出稿ではほとんど成果を上げられなかったのと比較すると、YouTube広告の認知拡大の効果がいかに大きいかが窺えます。
また、YouTube広告での認知拡大はオンライン上の施策ですが、その後実施した企業説明会でも、動画広告を見て参加した学生が多く集まり、オンラインだけでなくオフラインでのコミュニケーションを行うことで、より密に自社について知ってもらうことにも成功しました。
YouTube広告の一番の強みである、認知拡大の面で非常に大きな成功を収めた事例と言えます。
この動画広告により、従業員29名の小規模の会社ながら、質の高い学生からの応募を28件も獲得したそうです。求人担当者なら、28件の応募を獲得するのにどれだけコストがかかるか、イメージできると思います。
「当社はほかの地方の企業に比べて平均年齢も低く、勢いのある会社です。こうした若さや勢いを伝える上では、動画というフォーマットが最適でした。また、同じエリアで動画広告に取り組んでいる企業が少なかったことも、当社が差別化できた要因の 1 つだと考えています。
採用活動での動画広告の成功を活かして、来年度の採用活動はもちろん、実際の販売にも動画を積極的に活用していきたいと考えています。商品の販売でも、地域のターゲティングなどをうまく活用し、費用対効果の高い集客が実現できるのではと考えています。」
引用;Google
YouTube広告の成功事例まとめ
今回は、YouTubeの動画広告の成功のためのポイントと、実際に成功した事例について一挙に解説してきました。
YouTube広告は認知拡大の目的で絶大な効果を発揮する広告ですが、認知拡大だけに限らず、新規顧客の獲得にも有効であると言えます。
また、動画クリエイティブを作る上では、インストリーム広告とバンパー広告のどちらの形式で出稿するかをあらかじめ決めた上で、目的に合わせて制作することが重要であり、どちらの場合であっても、5秒間(6秒間)という短い時間でいかに有効な訴求ができるかがカギであるということも大切なポイントです。
今回ご紹介した成功事例を参考にして、YouTube広告の運用のヒントにしてみてください。