2020年、2021年はBtoB企業のマーケティング戦略を大きく転換する必要があったと思います。テレワークの導入で、テレアポでも担当者につながらない、対面営業で商談が進まない、展示会やイベントが開催されないなど、従来の集客方法が使えなくなった企業も多いでしょう。
そこで今回は2022年に取り組むべきマーケティング施策を5つ紹介します。
データドリブンマーケティング
最初に紹介するのは具体的なマーケティング施策というよりも、マーケティングそのものの考え方です。
マーケティングのデータ活用は数年前からいろいろなところで話題になっている一方で、BtoBマーケティングの担当者にとっては、活用方法やメリットがわかりにくかったのではないでしょうか。
しかし、2020年春ごろからその認識が大きく変わったという人も多いでしょう。
データを分析するとは、顧客を知ることです。これまでは顧客の情報管理を営業が行っている企業がほとんどでしたが、前述したようにコロナ禍でオフラインでの情報収集が難しくなりました。2022年以降も一度オンライン化されたことの多くは、オフラインに戻ることはないでしょう。
データドリブンマーケティングとは、オンライン・オフラインで収集した見込み顧客のデータをもとにマーケティング施策を実行することです。
データドリブンマーケティングのメリットは大きく2つあります。
1つはデータを通じて正直なフィードバックが得られることです。担当営業を通じて「以前ダウンロードいただいたPDF資料はどうでしたか?」と聞いても正直なフィードバックは得られないかもしれません。ですが、PDFの閲覧時間や閲覧されたページのデータを収集すれば、顧客がどの程度その資料に目を通したのか一目瞭然です。
うまくデータを活用すれば、顧客のニーズや顧客の行動をリアルタイムに計測できます。このようにして顧客を理解しておけば、商談もスムーズに進められます。
もう1つは、顧客育成や成約以降のコミュニケーションが可能になることです。例えば、メールマガジンによる情報発信やウェブセミナー・オンライン商談を通じたコミュニケーションなど。
もちろんこれらはデータがなくても実施できますが、顧客ごとに役に立つ情報だけを適切なタイミングで届けることは、データ活用なしにはできません。
2020年以降、BtoBマーケティングが一気にWeb化されましたが、Webの強みはデータが取れることです。データドリブンマーケティングという考え方を取り入れ、1つ1つの施策にデータを活用できる企業とそうでない企業では、マーケティングの費用対効果に大きな差が生まれるでしょう。
YouTubeチャンネル運営
次のマーケティング施策はYouTubeチャンネル運営です。
こちらは世界のウェブサイトのアクセス数ランキングを図式化したものです。2019年のものですが、すでにYouTubeはFacebookを越え、Googleに次ぐサービスになっています。そして2020年、2021年は動画コンテンツが大きく注目されていたので、おそらく現在のYouTubeはもっと拡大しているでしょう。
ご存知と思いますが、YouTubeはGoogleのサービスなので、Googleの検索エンジンで検索した時も検索結果にYouTube動画が表示されます。
つまり、YouTubeチャンネルを運営するということは、世界で最もアクセスのある2つのサービス、GoogleとYouTubeの両方からのアクセスが獲得できるということです。アクセス数を増やす、リーチを増やすという観点では利用しない手はありません。
さらにここ数年、教育系やノウハウ系などの動画が目立つようになりました。上の画像では助成金の受け取り方を検索しています。こういった助成金というビジネス向けのジャンルでも1万回以上再生されている動画がいくつもあります。
助成金のように専門的な知識が必要なジャンルの解説は、テキストで説明されても理解しにくい場合があります。そのようなジャンルでも、図やアニメーションを使った動画であれば、わかりやすく解説できます。
独立系の税理士の顧客は中小企業、ベンチャー企業の経営者だと思います。助成金について分からない、相談できる専任税理士もいないという経営者の中には、YouTubeで助成金について調べ、こうした動画を見て助成金を受け取ることができた人もいるでしょう。
その会社が成長し、税理士に依頼する機会があった時、わざわざ見ず知らずの税理士に相談するでしょうか?助成金を受け取る時に役に立った、この動画を上げている税理士に相談しようと考えるのが自然です。
このようにBtoBビジネスでも、動画を通じて見込み顧客の役に立つことは将来的な顧客獲得に役立ちます。
コンテンツマーケティングといえばブログサイトを持つことが一般的でしたが、これからはYouTubeチャンネルを使った事例が増えてくるでしょう。
駅中・タクシー広告
続いて、2022年にBtoBマーケティングで取り組むべき手法は、駅中・タクシー広告です。意外に感じるかもしれませんが、考え方によっては駅中・タクシー広告は今、大きなチャンスがあると言えます。
その理由の1つは、大手広告主の撤退です。
今年は週刊文春が中吊り広告を終了したことが大きな話題になりました。週刊文春の中吊り広告は、車内で興味を持った会社員が駅の売店で雑誌を購入するというビジネスモデルでしたが、スマートフォンの普及により中吊り広告を見る人が減り、スマホニュースが普及したことで、売店で紙の雑誌を買う人が減ったことが要因だと思います。
しかしこれは中吊り広告から駅の売店での購入というビジネスモデルが時代にそぐわなかっただけで、中吊り広告そのものの効果がなくなったわけではないでしょう。中吊り広告を見て、興味のある見出しをスマートフォンで検索したことがある人は多いのではないでしょうか。
もう1つの変化がデジタルサイネージです。最近は駅のホームや中吊り広告がデジタルサイネージ化されている例も増えてきました。
この2つの変化が、BtoB企業のマーケティング施策に大きなチャンスになる可能性があります。
デジタルサイネージの割合が増えたら、これまでのように枠を買い取って印刷したものを設置してもらうのではなく、Web広告のように入札制になるかもしれません。もしそうなれば、大手広告主の撤退は広告単価の削減という形でチャンスになります。
駅中広告が入札制になるのは少し時間がかかるでしょうが、デジタル化により、印刷費・設置費が不要になるため、数万円から出稿できる枠はすでに登場しています。
これまで大手広告主が独占していた枠に、中小企業も進出できるというのは大きなチャンスではないでしょうか。
テレワークが浸透したとはいえ、オフィスに出社する人は少なくありません。企業の決裁者クラスとなるとなおさらです。オフィス街の駅中広告を低コストで出せば、認知拡大の費用対効果は高いでしょう。
営業担当であれば打ち合わせの時に「そういえば駅で御社の広告を見ましたよ」と言ってもらえることに価値を感じてもらえるのではないでしょうか。そうしたブランディング効果が数万円程度のコストで獲得できるのは魅力といえます。
もちろん、位置情報・企業IPターゲティングに強みを持ったDSP広告と同時に出稿するといった工夫によって、直接問い合わせ獲得を狙うこともできます。同様の理由で、タクシーの車内動画広告もBtoBマーケティングにおいては魅力的な選択肢になります。
ウェビナー
続いてはウェビナーです。ウェビナーはWebとセミナーを掛け合わせた造語で、インターネット上でセミナーを開催することです。数年前までウェビナーという言葉は一般的ではありませんでしたが、今では当たり前に使われています。
ウェビナーの開催者側にとっては会場を手配する必要がない、キャパシティの上限がないといったメリットがあり、参加者側にとっては移動の手間がなく、気軽に参加できるというメリットがあります。
オフラインのイベントや展示会が減っている今、BtoB企業にとってそれに変わる集客手法がウェビナーなのです。
ウェビナーの開催方法にはいろいろなものがありますが、Zoomなどを使えば月々数千円程度のシステム利用料だけで、チャットで質問を受け付けたり、アンケートを取ったりと参加者を巻き込む仕組みを活用したウェビナーが開催できます。
毎回リアルタイムで開催するのではなく、2回目以降は録画したものを流すウェビナーも増えてきました。この方法の場合、参加者と双方向的なコミュニケーションが取れませんが、労力なくウェビナーを開催することができます。
先述したYouTubeチャンネル運営を合わせて行うと、かなりの集客数が期待できるのではないでしょうか。
CRM・MA導入
2022年に取り組むべきBtoBマーケティング、最後はCRM・MAの導入です。最初にデータドリブンマーケティングを紹介しましたが、データを活用するには専用のツールが必要で、それがCRMやMAと呼ばれるものです。
CRMやMAを導入すれば何ができるようになるのか、簡単に紹介します。
・顧客の一元管理によるマーケティングリソースの最適化:顧客がどこからやってきて、何を見て、どんな商談を経てどれだけの売上につながったのかを可視化して一元管理できます。こうしたデータを活用し、売上に繋がりやすいチャネル(経路)の改善に力を注ぐなど、効率的な施策が可能になります。
・アクセスした見込み顧客に最適な資料ダウンロードを案内する:商品Aのページを訪れた人には商品Aの資料ダウンロードを、商品Bのページを訪れた人には商品Bの資料ダウンロードを、といった具合に顧客の行動に合わせた行動訴求が可能になります。
・メールマーケティングの自動化、最適化:見たページ、ダウンロードした資料など顧客の関心に合わせたメールマーケティングが可能になります。顧客は自分が関心を持っている、必要な情報だけが届くため、関係・信頼構築に繋がります。
これらはほんの一例で、CRMやMAを使えば、オンライン/オフラインのさまざまな情報を統合し、最適なマーケティング施策が実施可能になります。
CRMやMAは何年も前から重要性が説かれていますが、ゆっくりとしか普及していない印象です。その理由は、これまでのマーケティング戦略ではそこまでデータを統合しなくてもなんとか顧客を獲得できていたからでしょう。
ですが、今や見込み顧客が顧客化する流れのすべてがオフラインで完結する例はほとんどないでしょう。この傾向は2022年以降も変わらないと推測できます。CRMやMAの導入には手間、コストもかかりますが、無料で利用できるツールもありますし、導入の支援サービスも増えてきています。
データは早く蓄積すればするほど効果的に活用しやすくなります。データを使ったマーケティングで競合と差別化するなら、ぜひCRM・MAの導入を検討してみてください。
効果が証明された手法に取り組もう
今回はBtoB企業が取り組むべきマーケティングをテーマに、5つの施策を紹介しました。
BtoBマーケティングでは顧客化までにさまざまなステップがあり、1件の成約が大きくなりやすい傾向があります。売上増加を目指し、取り組むべき手法を検討している場合は、すでに多くの実例があり、効果が実証されたものにしっかり取り組むべきといえるでしょう。
この中でどれか1つだけ実施するとしたら、最後に紹介したCRM・MAの導入をお勧めします。どんな施策においても“データ活用”は欠かせないキーワードで、そのためのツールがCRM・MAなのです。
最初はデータをどう活用するか分からなくても、少しでも早くデータを蓄積し始めることが重要です。
CRM・MAを導入すれば、データドリブンマーケティングが実践でき、顧客のニーズを把握してYouTubeチャンネル運営などのコンテンツマーケティング、駅中広告のような広告施策を実施できます。そうして獲得した見込み顧客を、MAツールを通じてセグメントし、メールマーケティングによりコミュニケーションすることで、ウェビナー集客などに繋げることもできます。
まだCRMやMAを導入していないのであれば、2022年はデータ活用の土台を作るためにも導入を検討してみてください。
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