マーケティングオートメーションの導入に潜む5つの課題と解決策

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公開日:2019年11月19日/更新日:2022年11月1日

マーケティングオートメーション(MA)が日本に登場して以来、MAに関する認知度は高まり、国内でも導入する企業が年々増えています。MAの導入事例や成功事例を取り上げられる機会も多くなりました。

一方でMA導入でつまずいてしまったり、成果が出ずに失敗したりするケースも残念ながらあります。

そこで本記事では、MA導入の失敗例や課題となりやすいポイントを解説し、MA導入の課題をクリアする方法もあわせてご紹介します。

マーケティングオートメーション(MA)のおさらい

MA導入の課題について触れる前に、まずはマーケティングオートメーション(MA)の基礎知識をおさらいしましょう。

そもそもマーケティングオートメーション(MA)とは、マーケティング活動を効率化して売上向上を目指す仕組みのことです。

MAには主に以下の機能があり、Web上の顧客行動可視化やリードの育成、マーケティング業務の一部自動化を可能としています。

  • 顧客管理
  • メール配信
  • 行動トラッキング
  • スコアリング
  • シナリオ作成 など

MA実現のために上記の機能を有しているソフトウェアを「MAツール」と呼びます。つまり「MA導入」とは「MAツールを社内に導入してマーケティング活動を効率化する」という意味です。

また、MAは顧客の個性に合わせたマーケティング活動ができることも特徴です。正確な顧客情報の収集と高度な分析が可能であり、「インバウンドマーケティング」や「1to1マーケティング」を実現できます。

なお、MAは顧客管理システムを指す「CRM」と機能が似ており、混同されるケースもあります。MAとCRMの違いやMA導入のメリットについては下記記事で紹介していますので、気になる方はご一読ください。

▶ MAとCRMの違い|目的・機能・役割でわかりやすく解説|マーケティングオートメーションと顧客管理システム

▶ マーケティングオートメーション(MA)導入のメリット・デメリットを解説!

MAは難易度が高い!

MAには多くのメリットがあるものの、MA導入で期待した通りの成果を出すことは簡単ではありません。MA導入はマーケティング担当者が広範な領域にかかわる必要があり、成功させるための難易度が高いのです。

そもそもMAツールは社内のネットワーク環境で利用するアプリケーションであるため、マーケティング担当者にはITスキルが必要不可欠です。クラウド型のMAツールは大規模な開発が不要であるものの、ツールと社内システムの連携やセキュリティ対策、多角的なデータ分析を行う際にITスキルが求められます。

マーケティング担当者がMAツールを使いこなし、得られたデータを基に効果的なマーケティング戦略を組み立てて、初めてMA導入は成功と言えます。

また「自社が必要とするMAツール」をしっかりと考えて選ばなければならない点も、MA導入の難易度が高い原因です。

さまざまなMAツールが販売されており、機能の種類や費用・仕様は製品ごとに差があります。機能が豊富でも、運用コストが高すぎたり、自社の顧客行動を詳細に追跡できなかったりする製品ではマーケティング活動の効率化にはつながりません。

マーケティング担当者自身にITのスキルや知識がなかったり、自社に合ったMAツールを見誤ったりすると、MA導入失敗の可能性が高くなります。

MA導入の失敗例

MA導入で失敗する原因はある程度決まっています。導入前に失敗する原因や対策をおさえておきましょう。下記に、MA導入の失敗例を2つ紹介します。

●MA担当者の負担が大きく、運用ができなくなった

MAはマーケティング活動を完全に自動化できるわけではなく、担当者による綿密な運用が必要です。「マーケティング活動を自動化できる」というイメージだけでMA導入を進めると、MA担当者にかかる負担が大きくなり、運用がうまくいかず失敗してしまうのです。

MAはマーケティング活動の広い範囲をカバーするため、1人の担当者が複数のプロセスを兼任する体制では運用にかかる負担が大きくなります。MAを問題なく運用するためには、全体を管理するマネージャー1人と、各プロセスに担当者を最低1人ずつ配置しましょう。

●集客やリードの獲得ができない

MAを問題なく運用できていても、集客やリードの獲得といった成果が十分に得られず失敗するケースもあります。集客やリードの獲得ができない失敗例は、顧客の分析ができていないことが原因です。

例えばオウンドメディアに魅力的なコンテンツがなければ、顧客はオウンドメディアを訪問せず、行動データの収集もできません。MA導入による成果を得るためには、顧客の行動を収集するための基盤整備が重要です。

また、企業自体にインバウンドマーケティングを実施できる体制が整っていない場合も、MA導入失敗の可能性は高くなります。下記ページではインバウンドマーケティングが失敗する3つの理由を詳しく解説しておりますので、MA導入の前にぜひご一読ください。

▶ 【HubSpot 7/9】インバウンドマーケティングによくある誤解と失敗する理由

MA導入に潜む5つの課題

多くのMAツールは、Googleアナリティクスのようにタグを1つ入れるだけで導入できます

しかし、導入までの準備や導入後の運用は簡単ではありません。特にMAの導入準備では、選ぶツールや行いたい施策、また現在使っている社内システムとMAの互換性などの要因により、さまざまな課題が発生します。

MA導入はツールベンダーにサポートしてもらいながら社内で行うほかに、代理店に依頼する方も多いでしょう。

以下ではいずれの導入方法においても起こりうる課題を5つご紹介します。

世界シェアNo1のMAツール「HubSpot」を導入し、8割もの企業が売り上げを伸ばしている。一方で、これから紹介するようなハードルが超えられず、売り上げが変わらない、減少したという企業も少ないながらも存在している。

シナリオの設計

シナリオとは、MAのプログラムを実装するための設計図のようなものです。リードの購買プロセスをもとに、どのセグメントに対しどのような施策を実施するのか、それをMAでどのように組んでいくのかを計画します。

例えば、「マンションの選び方」の資料をダウンロードしたリードは、その後の成約率が高いというデータがあるとします。資料閲覧によるリード育成の効果が高いと分かるため、マンションをテーマにしたコンテンツをリードに配信しながら、資料のダウンロードに誘導することが、MAにおけるシナリオの手法です。

MA導入が難しいとされる理由の1つが、このシナリオ設計です。シナリオの設計が難しい理由はいくつか考えられます。

シナリオ設計は様々な観点から顧客行動を分析する必要がある。

まず、リードの購買プロセスが不明であるケースです。リードの購買行動が把握できていないと、注力するセグメントや訴求内容も決まらず、シナリオの作成が難しくなります。

もう1つの理由は、購買シナリオをどのようにMAに置き換えて良いかわからないケースです。MAの機能や仕組みを理解しながらの作業となるため、特に導入初期は課題となりやすい傾向があります。

シナリオ設計は、さまざまな観点から顧客行動を分析する必要がある。

スコアリングの設定

スコアリング設定も、MAの導入においてつまずきやすいポイントの1つです。スコアリングとは、リードの属性や行動など、一定の条件に対して点数やグレードを付与する仕組みです。

スコアリングがハードルとなる理由は、確度の高い行動や属性が把握できていても、各条件にどの程度のスコアを配分するか判断が難しいためです。

スコアリングの配点が適切でないと、商材への興味が高まっているリードを逃したり、逆に、初期段階のリードに営業をかけてしまったりする可能性があります。配点基準はスコアリングの経験を通して最適化する必要があり、解決に時間のかかる課題です。

上記のようなスコアリングと施策を考えた場合、「メルマガ開封は本当に1点でいいのか?」「LINE@に登録したユーザーは、5ページ以上閲覧したユーザーよりも確度が高いと考えていいのか?」といったことを問い続ける必要がある。

スコアリングによるリードの育成についてはこちらをご覧ください。

▶ 【HubSpot 6/9】スコアリングによるリードの育成と選別

自社の運用体制

運用体制面では、大きく分けて「MAの運用」と「その後の営業フォロー」にそれぞれ課題があります。

MA運用の課題は「リソースの確保」です。確保すべきリソースは導入するツールにより異なりますが、MA運用に費やす時間が取れない・ITスキルを持った担当者が見つからないなど、が課題になります。

また、MAの導入においては営業体制も重要です。リードの関心が高まったタイミングで即座にアプローチできるかどうかは、その後の顧客行動にも影響します。MAでせっかく良質なリードを集めても、フォローする営業体制がないとMA導入効果は半減してしまいます。

顧客データの精度

意外と見落としがちですが、MAのマーケティング施策において鍵となるのが「顧客データの精度」です。データの精度が低いと必要な条件でのセグメントが困難になります。

例えば、従業員規模が1000人以上の企業にアプローチしたい場合、顧客データには正確な従業員規模の登録が必要です。そもそも顧客データに従業員情報がなかったり、1000人や1,000人など表記ゆれがあったりすると、条件に合致する顧客が少なくなり施策実施の効果が薄くなります。

また、担当者同士の情報共有ができておらず、企業やコンタクトユーザーの重複が生じることも精度が落ちる大きな要因です。

コンテンツの作成

MAの運用にはコンテンツが不可欠です。具体的にはメール配信やブログ・ホワイトペーパー・ウェビナーなど、オンライン上で提供できるコンテンツが該当します。

自社のコンテンツ資産を把握しないままMAを導入した場合、自社のコンテンツを活用するための機能がMAに搭載されていない可能性がある点に注意しましょう。MAのためにコンテンツの充足を急ぐ必要が生じ、結果として導入後しばらくの期間は十分な成果が得られない状況になります。

特に配信頻度やセグメントの種類を多くするほど、コンテンツのパターンが必要です。十分な量のコンテンツを継続的に用意できるかどうかは、MAの運用において大きな課題となり得ます。

MA導入の課題をクリアするには

MA導入の課題を一つひとつ見ていくと、「MAを導入するのは大変なのでは」と考えてしまう方もいるでしょう。しかし、多くの企業がMA導入の課題と向き合い、問題なく運用できる体制を構築して成果に繋げています。

最後に、MA導入の課題をクリアするための重要なポイントを4つご説明します。

顧客の購買プロセスを明確にする

MAに限らずどのマーケティングツールにも共通するポイントですが、自社の顧客像や購買プロセスを明確化することが大切です。

購買に至るまでに、どのような属性のリードがどのような行動をとるのか、過去の営業やマーケティングの結果をもとに整理をします。自社の顧客像や購買プロセスを把握することは、シナリオの作成やスコアリングの設定がしやすくなる点もメリットです。

新商材など購買プロセスが不明な場合は、まずは仮説ベースで始めます。後から改善がしやすいよう、プログラムの実装に負担の少ない仮説から検討すると良いでしょう。

顧客の購買プロセスを知るには、一般にカスタマージャーニーを作成する。カスタマージャーニーからMAを使ってアプローチできる部分を探し、実装していく

MAのシナリオ設計に役立つ顧客購買プロセスについては、下記で詳しく紹介しています。

▶︎ 【HubSpot 4/9】ペルソナとカスタマージャーニー(1) 

▶︎ 【HubSpot 5/9】ペルソナとカスタマージャーニー(2)

シンプルまたは限定的な施策で小さく始める

2つ目のポイントは、小さく始めるということです。「スモールスタート」という言葉がよく使われるように、新しいシステムやツールを運用するときは小さな施策から始めることで、導入時の課題がクリアしやすくなります。

「小さく始める」方法の1つは、シンプルな施策から行うことです。例えば、下記のように単純な施策をつないでいく方法で顧客育成を進めます。

(1)一斉配信メールを送信する

(2)特定の行動を取った顧客にスコアを付与する

(3)スコアが一定以上になった顧客には次のアプローチをする

最初からシナリオをしっかり組むのではなく、シンプルなフローにしておくことで、ツールの使い方に少しずつ慣れながら施策を進められます。MAには無料のプランを提供する製品もあるため、導入初期は最低限のプランで開始し、慣れてきたらより高機能なプランにアップグレードをする使い方でも良いでしょう。

もう1つの方法は、優先度の高いセグメントに絞って施策を行うことです。いくつかある購買パターンのなかから、どれか1つのセグメントのみに施策を行います。最も確度の高い属性や該当数が多い条件など、特定のセグメントに限定すると、シナリオやスコアの設定がしやすくなります。データ整備やコンテンツも限られた工数で進めることが可能です。

ベンダーやコンサルティング会社に依頼する

社内の体制だけでは運用が難しい場合、運用の一部またはすべてを外部に依頼するという手段もあります。例えば、導入後の3か月までベンダーのサポートを受ける、あるいはシナリオやスコアリングなど設計だけを外部に依頼するという方法です。

特に、リード育成のシナリオやスコアリングは複数を並行することが一般的であり、1つのみに集中できないケースがあります。シナリオやスコアリングの見直しが必要な場合は、見直しの時期に設計のみを外部に依頼するという使い方も良いでしょう。

インサイドセールスは不可欠

MAが必要とされる商材は、検討時間が長いBtoBの商材や、高額のBtoC商材がほとんどです。その場合、顧客はWeb経由で購入を決めるというよりは、他社と比較をしたり販売担当者から話を聞いたりなど、検討を重ねた上で購入に至ります。

MAとはいわば、1,000人のリストからより確度の高い100人のリードを抽出するためのツールです。その100人を売り上げにつなげるには、リードに対して電話・メール・DMなどで継続的なアプローチを行い、営業フェーズへとつなぐ役割が欠かせません。

このアプローチ手法は「インサイドセールス」と呼ばれ、MAの普及とともに導入する企業も増えてきました。インサイドセールスは営業担当者が実施することもありますが、できるだけ専任の担当者が行う体制作りをおすすめします。

まとめ|MAの導入ハードルを越える方法

MAは難易度が高く、問題なく運用するためにはマーケティング担当者の配置や、自社に合ったMAツールの選択が不可欠です。シナリオ設計・スコアリング設定・コンテンツ作成など、MA導入時の課題もクリアしなければなりません。

MA導入を成功させるためには、あらかじめMAのマーケティング戦略をしっかりと設計しておきましょう。紹介した課題クリアの方法を実践することで、スムーズなMA導入ができ、成果も期待しやすくなります。

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