日本市場でも広がるか?マーケティングオートメーションの国内・海外事情

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日本市場でも広がるか?マーケティングオートメーションの国内・海外事情

マーケティングオートメーション(MA)元年といわれる2014年以来、日本でもMAを導入する企業が年々増えています。自社でも導入すべきか、導入するならどの製品がよいか判断に迷われている企業も多いでしょう。

そこで本記事では、MAのなかでもどのような製品が主に利用されているのか、日本よりMAが進んでいる海外の情報も含めて、市場シェアや導入している企業の傾向についてご紹介します。

国内・海外におけるマーケティングオートメーション(MA)市場規模

MAはもともとアメリカで注目され始めました。国土が広いアメリカでは、いわば“足で稼ぐ”営業活動の効率がよくありません。ニューヨークのウォール街とカルフォルニアのシリコンバレーは車で40時間以上、飛行機でも5時間以上かかります。そのため、技術の発展とともに営業活動を効率化するためのツールが次々と登場しました。
その代表がセールスフォースです。セールスフォースは非効率的な営業活動を効率化するためのツールとしてアメリカで広く普及しました。
その後、ビジネス取引のほとんどがインターネット上で行われるようになり、営業活動よりも前、マーケティング領域も積極的に効率化する動きが生まれました。

その中で生まれたのがMAに代表されるティングプラットフォームです。今やアメリカのビジネスシーンにおいて、マーケティングプラットフォームの導入は当たり前です。

一方、国土が狭い日本では、まだまだ“足で稼ぐ”営業活動が中心です。営業が直接訪問し打ち合わせを行うことが一般的で、Web会議でさえようやく受け入れられるようになってきたばかりです。
こればかりは国土の広さ、地理的、文化的要因なのでいいも悪いもありません。

当然、MAの利用目的や活用方法にも違いがありますが、働き方改革などが叫ばれるようになり、日本でも普及が広がってきました。
まずは、MAの市場規模について国内と海外に分けてみていきます。

国内におけるMAの市場規模

市場調査や分析を専業とする矢野経済研究所は、国内のMA市場について2017年に調査を実施しました(※1)。
この調査によると、MAの市場規模は2016年では245億円、2017年は前年比23%増の301億円、2022年には530億円の見込みと年々増加傾向となっています。調査開始の2016年から6年後の2022年までに市場規模が2倍以上に達する予測です。

この増加の見込みには、One to Oneマーケティングへの注目やAIの活用による分析時間の短縮、顧客行動予測への期待が背景にあると本調査では述べられています。実際に、AIを取り入れたツールやサービスはMAに限らずあらゆる技術で活用が増えており、One to One マーケティングにおいてもAIによる学習能力が期待できることから、今後もMAを導入する企業が増えていく傾向は確かであると考えられます。

海外におけるMAの市場規模

海外のMA市場について、アメリカの調査会社が2014年に行った調査では(※2)、MAの市場規模は、2014年の36億ドルから2019年には55億ドルに達する見込みといわれています。
また、ITの先進国であるインドの調査会社が2019年から2024年の期間を対象に調べた結果では(※3)、世界のMA市場は2018年に50億ドル、2024年には140億ドルの成長が予測されています。最大の市場は北米ですが、中国や日本を含めたアジア地域が最も成長率が高いであろうと同調査では述べています。

以上のように、国内・海外共にMAの市場拡大が予測されており、今後もMAの利用が増えていく動きは間違いないようです。北米での市場拡大の勢いがアジア地域に広まり、日本でもますますMAの利用率が高まると考えられます。

マーケティングオートメーション(MA)の市場シェア

アメリカ、アジア各国で成長が見込まれるMAですが、どのような製品が主に利用されているのでしょうか。
ここからは製品別のシェアを見てみましょう。SaaS型のサービスでは、利用者が増えれば増えるほど規模の経済に従い、価格が安く、高機能になっていきます。特別なこだわりがなく、MAがどういったものか知り多ければシェアが高いものを選ぶといいでしょう。

海外のMAツールシェアトップ5

以下は、企業のツール利用状況をドメイン単位で調査するDatanayze社によるツール利用状況の結果です(※4)。対象としている350のMAツールのうち、世界で利用されている製品のトップ5になります。

【海外のMAツール 市場シェア】
1位:HubSpot 19%
2位:Beeketing 16%
3位:Oracle Marketing Cloud 14%
4位:Adobe Marketing Cloud 12%
5位:Active Campaign 5%

1位は日本国内でも代表的なMAの一つであるHubSpot (19%)であり、続く2位がBeeketing (16%)、3位がOracle Marketing Cloud (14%)という結果です。このサイトで対象とされている全MAツールのうち、1位のHubSpotだけで全体の2割、上位3位までのツールで市場の約半分を占めている状態です。
BeeketingやActive Campaignは日本では馴染みのない製品ですが、BeeketingはECに特化したMA、Active Campaignはメールマーケティングツールのため、その他の統合型MAとは少し異なります。

※統合型MA=いわゆるマーケティングオートメーションの機能だけでなく、SFAやCRM、CMSの機能を兼ね備えたもの

国内のMAツールシェアトップ5

次に、日本国内におけるMAツールのトップ5です。
【国内のMAツール 市場シェア】
1位:Salesforce Pardot 17%
2位:List Finder 10%
3位:Marketo 9%
4位:Adobe Marketing Cloud 8%
5位:Drawbridge 8%

2位のList Finder以外はアメリカの製品であり、日本国内でも早くから使われていた海外ツールの普及率が高い傾向がうかがえます。上位5位までの製品がシェアの半数を占めており、日本では導入ツールの傾向はやや分散しているようです。1位のPardotは、SalesforceのCRMを利用している企業が日本では多いことが影響していると考えられます。5位のDrawbridgeは本調査ではMAに含まれていますが、実際には広告分析プラットフォームのツールになります。
なお、国内に関しては、DataSign社も同様の調査を実施しています(※5)。この調査によるMAツールの市場シェアは以下の通りです。

【国内のMAツール市場シェア】
1位:Salesforce Pardot 20.9%
2位:Bow Now 13.5%
3位:Marketo 12.6%
4位:List Finder 11.2%
5位:HubSpot 6.7%

Pardot、Marketo、List Finderが上位に入っており、先ほどのDatanyzeの結果と同様の顔ぶれです。それ以外では、Adobe Marketing Cloud やDrawbridgeに代わり、Bow NowやHubSpotが5位内に入っています。

以上の結果から海外・国内どちらにおいても、Pardot、Marketo、HubSpotなどの代表的なMAツールのシェアが高いようです。海外ではインバウンドマーケティングに強みのあるHubSpotが1位であることから、インバウンドマーケティングが日本より進んでいると考えられます。今後日本でもインバウンドマーケティングを実践する企業が増えるに伴い、MAツールの利用傾向も変わってくるかもしれません。

MAを利用している企業の規模および業種

それでは、具体的にはどのような企業がMAを利用しているのでしょうか。
以下はNexal社が2017年に国内の企業を対象としたMAの実装調査です(※6)。企業のWebサイトに設置されているタグをもとに導入ツールを分析しました。

企業規模別のMA利用率

この調査によると、国内の約33万社のうちMAを導入しているのは1677社と0.5%の導入率です。このうち上場企業3654社に絞った場合では導入率は4.3%となり、上場企業ほどMAを利用している割合が高くなります。

資本金別では、導入企業数全体を100%とした場合、資本金3千万円から1億円未満が26.4%と最も導入率が高く、次に1億円以上10億円未満が25.2%を占めています。

【導入企業全体における資本金別MA導入率】
1位:3千万円以上1億円未満 26.4%
2位:1億円以上10億円未満 25.2%
3位:1千万円以上3千万円未満 18.4%

一方、資本金別の国内企業数を100%とした場合は、10億円以上50億円未満が4.0%と最も高い結果です。

【国内企業全体における資本金別MA導入率(調査対象のみ)】
1位:10億円以上50億円未満 4.0%
2位:50億円以上 3.6%
3位:1億円以上10億円未満 2.6%

日本国内は中小企業の数が全体の9割を占めるため、企業全体を母数とした場合に大企業の割合がより高くなる傾向です。大企業の場合、部署ごとに異なるツールを使用している傾向もあると本調査では述べられています。また、グローバル企業の場合は、海外本社の導入に伴い国内でもMAを導入するケースも多く、導入率に影響している要因の一つではと考えられます。

業種別のMA利用率

次に、業種別のMA導入率の傾向です。業種別では、導入企業数全体のうち「情報通信・広告・マスコミ」が31%と最も高く、次いで「製造・機械」が17.9%、「卸売・小売」が11.7%という結果です。

【導入企業全体における業種別MA導入率】
1位:情報通信・広告・マスコミ 31.1%
2位:製造・機械 17.9%
3位:卸売・小売 11.7%
4位:サービス業 11.5%
5位:建築・建設業 5.3%

一方、業種別の国内企業数を母数とした調査では、以下のような結果です。

【国内企業全体における業種別MA導入率(調査対象から上位7業種を対象)】
1位:情報通信・広告・マスコミ 1.3%
2位:サービス業 0.6%
3位:コンサル・会計・法務 0.5%

国内企業全体でみても、「情報通信・広告・マスコミ」が最もMAの導入率が高い結果となりました。
情報通信業はデジタルツールを取り入れやすい環境にあること、広告やマスコミは顧客への提案も含めてマーケティングツールへの意識が高いことなどが要因の一つではと考えられます。

次に、ツールごとにみた業種別の利用企業の割合です。

業種別で最も利用率の高い「情報通信・広告・マスコミ」では、Shanon、Satori、List Finder、Oracle Eloqua、HubSpotがそれぞれ導入企業の3割以上と高い傾向です。

【MAツール別導入企業:情報通信・広告・マスコミ】
Shanon 41.0%
Satori 38.8%
List Finder 38.8%
Oracle Eloqua 37.7%
HubSpot 36.9%

またサービス業では、HubSpotが17.8%と最も高く、次にOracle EloquaやSynergy!、Marketoが続きます。

【MAツール別導入企業:サービス業種】
HubSpot 17.5%
Oracle Eloqua 14.8%
Synergy! 13.6%
Marketo 13.0%
Satori 12.1%

上記はツール別の導入企業数を100%とした結果であり、業種別の導入率ではありませんが、ベンダーごとに実績のある業種の傾向が把握できます。

まとめ

今回ご紹介した調査結果が示す通り、今後も海外および日本国内においてMAの市場は拡大を続けることは間違いないでしょう。特に国内では、北米に続くMA市場の拡大が予測されていることから、導入企業がますます増えていく動きは確実といえます。

現在注目されているOne to One マーケティングやインバウンドマーケティングを実現するツールとしてMAが欠かせないことからも、導入企業が増えていくと考えられます。

一方で、MAがメール配信や広告配信ツールと混同されており、MAの定義が曖昧である点も課題になっています。MAは高機能なメルマガツールではなく、マーケティング施策を効率化、最適化、自動化するものです。MAの意味や役割を理解した上で、自社にあったツールを選びたいものです。
GrabではMAやインバウンドマーケティングについて理解が深まる記事をご提供しています。今回の記事とあわせてMA導入の検討の際に、是非お役立てください。

出典元:

1 株式会社矢野経済研究所 「2017年版DMP/MA市場~デジタルマーケティング市場の現状とビジネス展望」

2 MarketsandMarkets「Marketing Automation Software Market worth $5.5 Billion by 2019」

3 Mordor Intelligence「Marketing Automation Software Market – Growth, Trends, and Forecast (2019 – 2024)」 

4 Datanyze「Marketing Automation Market Share」

5 株式会社DataSign「Webサービス調査レポート 2019.3」

6 株式会社Nexal 「2017年上期 国内33.3万社のMAツール実装調査」