業界別CRM事例紹介|サービス業界編【4選】

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業界別CRM事例紹介|サービス業界編【4選】

CRM(顧客関係管理システム)とは、文字通り顧客情報の管理や顧客との関係構築を強化するために使われるツールです。CRMの定義は広く、ツールの種類も多いため、自社で導入すべきか、導入した場合どのように活用できるのかわからないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。

そこで本記事では、CRMを導入した企業について、導入背景や導入する前の課題、CRMを使うことでどのように業務が改善されたのかなど、企業の事例を業種別にご紹介します。今回のテーマはサービス業界です。

沖縄ツーリスト株式会社(Synergy!)

沖縄ツーリスト株式会社は、国内外に約20店舗以上の支店をもつ沖縄旅行を専門とした旅行会社です。
同社では、広告による新規顧客の獲得が施策の中心でしたが、国内旅行者の減少など市場の変化に伴い、施策の転換が必要だと感じていました。今後は固定客やリピート客を増やすことを重視し、自社のファンを作りたい。そう考えたことからブランディングとCRMに力を入れることになりました。

CRMの取り組みにおいては、各部署からメンバーを集めてプロジェクトを立ち上げ、自社のCRMのあるべき姿を考えることからスタートしました。ツールはSynergy!を導入し、ベンダー支援のもと顧客分析からメール配信の施策、DMPを使った広告配信などを実施しました。

顧客分析では、CRMに蓄積されたデータをもとに、顧客属性や購買状況だけでなく旅行の時期や旅行に求めていることなどもあわせて調査。社員が描いている顧客像を実際のデータを用いて客観的に認識するとともに、関係構築に必要な顧客の価値観や傾向を知るための分析を行いました。その結果、リピート客は1年以内に数回沖縄へ旅行に行くなど、それまで気づかなかった顧客像が見えてきました。

また、CRMと連携しDMPを使った広告を実施。従来の広告では、旅行の検討段階で自社を想起してもらうことが目的であったのに対し、CRMの顧客データを組み合わせた配信を行うことで、より確度の高い検討層にアプローチを行い、直接申し込みまで誘導できる施策となりました。今後は、CRMデータをもとにソーシャルの施策にも力を入れ、口コミによって自社を選んでもらえる仕組み作りも行いたいと考えています。

トライオン株式会社(Kintone)

トライオン株式会社はオンラインの英語学習支援を主な事業とする会社です。受講生1人に対して講師とコンサルタントが1人ずつ担当となり、3人が1つのチームとして1年間1000時間の学習を目標に進めるというカリキュラムを提供しています。受講生はレッスン以外でも自己学習を行い、その時間をオンライン上で報告することで、学習の累積時間が把握できるようになっています。

同社では当初、受講生管理をExcelで行っていました。基本的な顧客情報のほか、受講内容や学習時間などの進捗状況も含めて管理をしていました。サービスを開始した当初は、まだ受講生が少なかったことからExcelでの管理や共有も可能でしたが、徐々に受講生とコンサルタントが増えていき、現状の管理方法に限界を感じていました。また、コンサルタントは複数の受講生を抱えており、それぞれの学習状況をわかりやすく把握できるインターフェースが必要だったことから、Excelでの管理をやめ新たにツールを導入することにしました。

導入にあたっては、パートナー企業の勧めもあったことや、管理内容の変化にも対応しやすいなどの理由からKintoneが選ばれました。導入開始から約1か月で、受講生が外部から学習時間を入力し、マイページで累積時間を表示するという仕組みを完成。その後、メール送信や検索など、必要な機能を社内の担当者がプラグイン機能を使って追加していきました。CRMの導入により、受講生の学習時間の累積が一目でわかるようになっただけでなく、週ごとに学習時間の集計を行うなど細かな進捗もすばやく把握できるようになりました。その結果、品質を維持しつつ、1人のコンサルタントが担当可能な受講生の数も増えるなど生産性が向上。今後もさらに、受講生にとって使いやすく、モチベーションを維持できるようなサービスやインターフェースをCRMを使って進めていきたいと考えています。

伊藤忠フィナンシャルマネジメント株式会社(Dynamics 365)

伊藤忠フィナンシャルマネジメント株式会社は、伊藤忠商事及びグループ企業に対して経理業務サービスを提供している会社です。

同社では、商材ごとにカンパニー制をとっており、支払指示書のチェック項目はそれぞれ異なるルールで運営していました。特殊な条件などは、各担当者がExcelやWordのファイルに記録していましたが、検索や閲覧がしづらいという点が課題でした。スピードが求められる業務であるうえ、人材のローテーションも多いことから、各担当者の知識やノウハウを一元的に集約管理し、すぐに更新や参照ができる仕組みが必要と考え、システムの導入に踏み切りました。

データベース管理ツールなども候補にあがったものの、情報の共有化という点でCRMを使ったナレッジ管理システムを構築することになりました。ツールの選定においては、伊藤忠商事のIT部門の勧めもあり、ExcelやWordと同じMicrosoft社の製品であるDynamic 365が選ばれました。

導入プロジェクトでは各部署から担当者が集まり、普段の業務をもとに意見を聞きながら画面レイアウトや操作などを開発していきました。また、特殊な支払条件は定型のフォーマットに移行し、誰でも参照できるような仕組みにしました。

CRMの導入により、それまで各ファイルに分かれていた情報が一か所に集約され、どのカンパニーの支払いであっても情報をすばやく検索することが可能になり、作業効率が大幅に向上しました。誰が支払い業務を担当しても同じように対応できるようになったことから、引継ぎや共有にかかる業務負荷やコストが軽減され、従業員の業務形態に関わらず対応できるようになりました。
今後は支払チェックだけでなく、受付台帳など他の業務に対しても活用範囲を広げていきたいと考えています。

LAPRAS株式会社(HubSpot)

LAPRAS株式会社は、2016年に創業したスタートアップ企業です。人材を探している企業に対して、人工知能(AI)技術を用いて条件にマッチする候補者をレコメンドしたり、転職の可能性が高まったタイミングにアラートで知らせたりといったサービスを提供しています。

同社は、業務開始からわずか1年目でCRMを導入しました。他の多くの事例のように課題を抱えていたという理由ではなく、ツールを使うことで業務のフレームワークを取り入れることが目的でした。ツールに合わせてオペレーションを設計することが、業務フローを最適化するための近道と考えたためです。
サービスの選定においては、複数のツールを連携するのは使いづらいと感じた経験から、CRMやMAなどの機能が統合されたHubSpotのGrowth Suite を導入することにしました。マーケティング、セールス、カスタマーサクセスという自社にとって必要なフロント業務を一つのツールで完結できるという点や、HubSpotがインバウンド手法というフレームワークをもとに設計されている点なども選ばれた理由でした。

創業時は従業員も数名だったため、顧客情報やタスク管理などは無料のツールを組み合わせて使っている状態でしたが、HubSpot導入後は、ツールに合わせてオペレーションを最適化することで、リードジェネレーションから顧客とのコミュニケーションまですべての業務をHubSpotに集約することができました。

具体的にはまず、ブログ記事やダウンロード資料をフックにリード獲得を行います。獲得した情報は営業担当者に引き渡し、営業は顧客に対して訪問やトライアル提案を行ったり、自社が定期的に開催しているイベントに案内したりと次のフェーズにつなげます。受注が決まった顧客に対しては、HubSpot Sales Hubを使って商談の管理をし、その情報をもとにカスタマーサクセスへ引き継がれるという流れです。以前は、担当者間の情報共有が不足していることで受注後の対応に時間かかることもありましたが、HubSpot導入後は、ツールに早くから業務フローを設定したことで引継ぎ時の情報精度が向上し、スムーズで質の良い対応ができるようになりました。また、サポート業務では、問い合わせの一次受けにHubSpot Service Hubのチャット機能を使い、まさに見込み客の獲得から受注、既存客のサポートまで、HubSpotですべての業務が完結されるプロセスを確立しました。

今後は、受注からサポートまでHubSpotに業務が集約されている利点を活かして、一度解約した顧客が再度戻ってくるような仕組みづくりを行いたいと考えています。

CRM導入事例サービス業編まとめ

今回はサービス業に着目して、CRMの導入事例を紹介しました。
CRMの導入においては、営業の業務効率の改善といった例がBtoBでは多く見られますが、今回のようにBtoCのサービスでは、顧客関係構築という文字通りの目的に主眼を置いたものや、業務プロセスを確立するための手段など、導入背景や効果も企業ごとにさまざまな傾向が見られます。同業界の方はもちろん、それ以外にも同様の課題を抱えている方は、事例の中から自社にあったやり方を取り入れて、是非CRMを業務の強い味方として活用いただければと思います。