コンテンツマーケティングで一番大切なコンセプトメイキングの方法

7a8733e2aaa3cc5e966e21755bc59ea1a710a057
コンテンツマーケティングで一番大切なコンセプトメイキングの方法

コンテンツマーケティング、インバウンドマーケティング、呼び方はいろいろありますが、要するにコンテンツを発信することで見込み顧客との接点を増やす、見込み顧客自身に見つけてもらう、見込み顧客自身に商品理解やブランドメッセージを深めてもらうことを目的としたマーケティングが広がっています。
当記事では、コンテンツを発信し、顧客、見込み顧客自身から積極的にアプローチしてもらう手法を「コンテンツマーケティング」と呼びます。

見込み顧客は広告や営業で“捕まえるもの”と考えていた人からすると、見込み顧客自身に“見つけてもらう”、“積極的に関わってもらう”という考え方は違和感があるかもしれませんね。
しかし、消費者行動・ニーズが多様化し、広告や営業の影響力が限界に達している中、売上を継続的に伸ばすためにはこうしたマーケティング施策が欠かせません。広告をやめてしまったら、優秀な営業が退職したら成長が止まる、ではだめなのです。

そこで今回は、コンテンツマーケティングに一番重要な「コンセプトメイキング」の方法を見ていきたいと思います。
コンテンツマーケティングは企業がリードを獲得する新しい方法であり、他のリード獲得方法よりも優れたメリットがあります。しかし、コンセプトがあいまいなコンテンツマーケティングが成功する可能性は非常に低いのが実情です。
ぜひ、コンテンツマーケティングを始める前に、当記事をヒントにコンセプトメイキングに取り組んでください。

コンテンツマーケティングとは

コンテンツマーケティングとは

すでに説明したように、当記事では「コンテンツを発信し、見込み顧客との接点を増やす戦略」をコンテンツマーケティングと呼びます。
分かりやすい例を挙げると、今読んでいる「Grab」は弊社アイビスのコンテンツマーケティング施策の一つです。GrabではWeb担当者向けに、Web広告・マーケティングの様々な情報を発信しています。あなたも、Webマーケティングについて何か知りたくて検索し、このサイトを訪れたのではないでしょうか。
このようにコンテンツを発信し、ニーズのある見込み顧客の課題解決をサポートすることで、弊社の名前や技術力、サービスについて知ってもらうことが目標です。実際、Grab経由で見込み顧客から月数百件のアプローチがあり、その一部の方は弊社の広告運用代行サービスなどをご利用いただいています。

このように、広告施策やテレアポなどの営業(アウトバウンドセールスといいます)ではなく、見込み顧客から積極的にアプローチしてもらうことが、コンテンツマーケティングの目的です。

コンテンツマーケティングには様々な手法がありますが、Grabのようなブログメディアを持つことが一般的です。これをオウンドメディアといいますが、これについては下記記事で詳しく紹介しています。

【マーケティング戦略の軸】オウンドメディア運営のメリットと目的

成功事例から学ぶ~初めてのコンテンツマーケティング

コンテンツマーケティングの目的

コンテンツマーケティングは何のために行うのか、それはもちろん企業の売上を伸ばすためです。しかし、細分化すると大きく「リード獲得」「ブランディング」「顧客育成」に分けられます。
この3つは互いに独立しているわけではなく、一つ達成すると他の二つも同時に達成できます。ただし、コンテンツマーケティングの軸として、この3つのどれを重視するかは、これから紹介するコンセプトメイキングにおいて非常に重要です。

リード獲得

Grabはリード獲得をメインの目的において運営している。

Grabはリード獲得をメインの目的において運営している。

おそらく、現在オウンドメディアを使ってコンテンツマーケティングに取り組んでいる企業のほとんどは、リード獲得を目的としているのではないでしょうか。Grabもメインの目標はリード獲得です。
リードとは見込み顧客のことですが、企業によって若干定義が異なります。例えば弊社では「電話番号またはメールアドレスが分かっていて、連絡が可能な企業のWebマーケティングの関係者」と定義しています。つまり、電話番号とメールアドレスが分かっていても、連絡がつながらない、Webマーケティングの担当者ではない(学生や個人など)はリードにカウントしません。

マーケティングの原則として、ニーズのある潜在層をリードに転換し、ニーズを明確化したうえで商談につなげ、売上を創ることが一連の流れとなります。
コンテンツマーケティングでは、「ニーズのある潜在層をリードに転換する」ことをオウンドメディアで行います。これはテレアポや広告施策でもできるのですが、長期的に見たときオウンドメディアが一番効果的なのです。
なぜオウンドメディアが効果的なのかは、「27のリード獲得テクニック」という記事で紹介しているので、ぜひご覧ください。

リード獲得は、「リードの質」と「リードの数」の2つで評価します。
例えばテレアポリスト等はリードの質が非常に低いといえます。相手の名前や電話番号、企業名などは分かりますが、ニーズが分らないからです。一方、オウンドメディアで獲得したリードは、過去の閲覧記事や、ダウンロードした資料などからニーズを明確に知ることができます。当然、オウンドメディアの記事や資料は何らかの形で自社のビジネスと関連しているので、リードは間違いなく関連したニーズを持っています。

オウンドメディアはリードの数でも優れています。テレアポの場合、一日にテレアポする件数を2倍に増やすには、人を2倍にするしかありません。一人が一日にテレアポする数を2倍にするのは現実的ではないからです。
一方、オウンドメディアはコンテンツがリードを生みます。なので、非常に単純化すれば、コンテンツを2倍にすればリード獲得数も2倍になります。人を2倍にするのは大変ですが、コンテンツは蓄積されていくので運営していればそのうち2倍になります。
Grabでは現在500本近い記事がありますが、記事が100本程度だったころ比べてリード獲得数は5倍以上に伸びています。しかし、月々の記事制作コストなどはずっと一定です。

ブランディング

TuneCoreが運営する「THE MAGAZINE」はブランディングのために専門家にとっても質が高い記事を配信している。

TuneCoreが運営する「THE MAGAZINE」はブランディングのために専門家にとっても質が高い記事を配信している。

コンテンツマーケティングはブランディング目的で運営されることもあります。どんな分野にせよ、自社のメディアをもち情報を発信していくことは、その分野の専門家とみなされることになります。
例えば、音楽配信サービス(AppleMusicやSpotifyなど)への一括登録サービスを提供しているTuneCoreは「THE MAGAZINE」という音楽業界に関する様々な情報を発信するオウンドメディアを運営しています。TuneCoreはアーティストが使うサービスで、今のところ代替サービスはなく、それぞれの音楽配信サービスごとに登録設定することが面倒なアーティストのほとんどが活用しています。そのため、リード獲得意味合いは強くありません。実際、THE MAGAZINEにはリード獲得のための仕組みがあまりありません。

TuneCoreがTHE MAGAZINEに求めるのは、アーティストに対するブランディングです。他メディアがやっているようなプレスリリースではなく、濃い情報を発信することで、配信音楽業界の専門家として見られるために運営しています。

ブランディングというと一部大企業のものに感じるかもしれませんが、実際はニッチなBtoB企業などのほうが有益です。営業担当者なら、「あの○○を運営されている株式会社▲▲さんですか!」と言われることがどれほど重要か想像できると思います。
弊社もGrabを運営することで、数あるWeb広告代理店の一つではなく、Grabを運営するWeb広告・マーケティングの専門家とみられるようになりました。
オウンドメディアはそれ自体が一つの営業ツールになるのです。

顧客育成

「HubSpotブログ」はリード獲得だけでなく、既存顧客のサポートの役割も兼ねている。

「HubSpotブログ」はリード獲得だけでなく、既存顧客のサポートの役割も兼ねている。

コンテンツマーケティングは顧客獲得が主な仕事ですが、獲得した顧客とのコミュニケーションにも役立ちます。
多くのビジネスにおいて、1回の購入よりも継続してどれだけ購入してもらえるかが重要ではないでしょうか。また、最近注目されているサブスクリプションモデルのビジネスの場合、いかに利用してもらうか、継続してもらうかが肝になります。

眼鏡のEC販売、店舗運営を行うオーマイグラス株式会社は「OmgPress」というオウンドメディア運営を通じ、新規顧客獲得だけでなく既存顧客の育成、関係構築を行っています。
OmgPressでは、眼鏡の選び方や目のケア、眼鏡と合わせるコーデなど、眼鏡のあるライフスタイルに役立つ情報を発信しています。こうした関係構築により、顧客は「次に眼鏡を買うときもオーマイグラスに行こう」と考えてくれます。

もう一つ例を紹介すると、SaaS型マーケティングプラットフォーム「HubSpotブログ」があります。HubSpotはインバウンドマーケティングを提唱した企業なので、メインの目標はリード獲得でしょう。実際、リードを獲得するための優れた仕掛けがあります。
しかしそれだけでなく、HubSpot利用者にとっても非常に有益です。マーケティングプラットフォームは運営・活用が非常に大変で、専任者が計画的・戦略的に使わないと効果が出ません。しかし、マーケティングプラットフォーム管理に専任者がいる企業ばかりではなく、試行錯誤しながら使っていくのが現状です。
そこで重要になってくるのが、マーケティングの知識、ノウハウです。HubSpotはブログでマーケティングプラットフォームを効果的に活用する方法を届けることで、顧客が失敗しないようにサポートしています。
実際、私もGrabが伸び悩んでいる時、HubSpotブログから多くのヒントをもらいました。HubSpotブログがなければHubSpotを解約し、別のマーケティングプラットフォームを探したり、Grabの運営自体をあきらめたりしていたかもしれません。

成功したコンテンツマーケティングに共通するポイント

ここまで、コンテンツマーケティングの目的を紹介しました。どれか一つだけを目的に運営されている例はほとんどありませんし、どれかを達成すると同時に他も達成されるケースが多いようです。Grabはリード獲得を目的に運営していますが、ブランディング、顧客育成にも役立っています。
じゃあ目的なんてなくても大丈夫じゃないか、と思うかもしれませんが、芯となる目的を持つことは重要です。目的を何に置くかで、評価する指標も作成するコンテンツのタイプも変わるからです。

それでは、続いて成功したコンテンツマーケティングに共通するポイントを見ていきましょう。

コンセプトが明確である

「サイボウズ式」は競合と被らないユニークなコンセプトを掲げ、オウンドメディアの主要集客チャネルである自然検索よりもSNSを重視している。

「サイボウズ式」は競合と被らないユニークなコンセプトを掲げ、オウンドメディアの主要集客チャネルである自然検索よりもSNSを重視している。

まず、今回の本題でもありますが、コンセプトが明確であることが挙げられます。

サイボウズ式」は「新しい価値を生み出すチームのための、コラボレーションとITの情報サイト」という明確なコンセプトを持っています。SEO対策の知識を持つ人が、サイボウズ式の記事を見ると、あることに気付くと思います。それは、「あまりSEO対策に気を使っていない事」です。記事タイトルを見ても、検索されそうなキーワードを積極的に使っているわけではありません。
サイボウズ式のコンセプトにある「チームのための」という言葉が重要です。一人で読んで学びになってOK、ではなく、チームで共有されることが重要なのです。
そのため、サイボウズ式はSEO対策による自然検索の流入数より、SNSシェアなど共有される、共感されることを重視しています。

Grabには「Web広告・マーケティングのノウハウ、最新技術が学べるメディア」というコンセプトがあります。そのため、有益であればプレスリリースも掲載します。SNSでシェアされることよりも課題をもって検索して調べている人に答えられる実用性を重視しています。

このように、コンセプトによって作る記事や評価基準が変わってきます。

コンテンツファーストである

コンテンツファースト

コンテンツファーストとは、コンテンツを一番重要視し、優先するという意味です。コンテンツマーケティンはコンテンツを使ったマーケティングなので、コンテンツが重要なのは当然ですね。
しかし、実際にはコンテンツファーストではなく、PV数ファーストのような考え方で運営されているメディアも少なくありません。成功しているメディアが口をそろえて言うことは「PV数は重要ではない」ということです。PV数より、オリジナリティのある高品質なコンテンツのほうが、コンテンツマーケティング成功には重要です。

リード獲得が目的のオウンドメディアであっても、リード獲得のために大量のフォームやバナーを張り付けて、コンテンツの体験を阻害するようなことがあってはいけません。目立つ位置にCTAを設置し、記事の途中にバナーを差し込めば、確かに一時的にリード獲得数は増えるでしょう。しかし、コンテンツは資産であると考えたとき、こうした方法は資産を食いつぶしているにすぎません。リード獲得の仕組みも重要ですが、コンテンツ体験とのバランスを意識することが大切です。

長く続けている

これも非常に重要で、成功しているオウンドメディアにはいろいろな特徴がありますが、「長く続けている」という点で共通しています。コンテンツマーケティングは非常に長期的な取り組みです。一般に100記事程度あればメディアとして効果が見え始めるといわれていますが、月に10本作っていても効果が見えるまでに10か月かかります。
Grabも最初数か月は何のためにやっているのかわからないくらいアクセスが少なく、リード獲得も全くない期間でした。それでも続けることで、1年を超えたあたりから効果が見え始め、2年経つ頃に大きく飛躍しました。
成功しているオウンドメディアの多くは、最低1年は運営されています。3か月で効果を実感したという例もありますが、始める時点で数十記事を用意し、プレスリリースなどの広告施策も積極的に利用した結果です。

逆に数年続けていて何の成果もないという例もほとんど見かけません。小規模の運営であっても、続けることでコンテンツという資産は確実に蓄積され、徐々に成果を産んでくれます。

コンセプトメイキングの完成図

コンセプトメイキングの完成図

さて、ここまでオウンドメディアの目的と成功しているオウンドメディアに共通するポイントを紹介しました。これらを踏まえたうえで、コンセプトメイキングを進めていきます。
ここでは、コンセプトメイキングの結果出来上がる成果物を紹介します。コンセプトメイキングというと、明文化されたコンセプトの一文を作ることのように思えますが、実際には多岐にわたる資料が出来上がります。

明文化されたコンセプト

まずはコンセプトメイキングと言えば、コンセプトを明文化したものが出来上がります。
サイボウズ式であれば「新しい価値を生み出すチームのための、コラボレーションとITの情報サイト」、Grabであれば「Web広告・マーケティングのノウハウ、最新技術が学べるメディア」、名刺管理サービスSansanが運営する「名刺管理Hacks」であれば、「名刺管理で見なおす働き方改革」です。
これらのようにオウンドメディアのキャッチコピーとしてサイト上に表示するケースが一般的ですが、表示しないケースもあります。

コンセプトは汎用性がありながら軸がぶれないことが重要です。コンセプトは新しい記事を書いたり、新しい施策を企画したり、過去の成果を振り返ったりするときに自問自答します。サイボウズ式であれば、「この記事は“新しい価値を生み出すチームのための、コラボレーションとITの情報サイト”というコンセプトに見合った内容か?」と自問自答しますし、Grabであれば「この企画は“Web広告・マーケティングのノウハウ、最新技術”の学びにつながっているだろうか?」と考えます。

中長期ロードマップと成果フロー

中長期ロードマップと成果フローは運営計画の成果物ですが、コンセプトメイキングの段階で行います。ただし、これらは一定のものではなく、運営する中で定期的に見直す必要があります。
コンテンツマーケティングが成果につながるにはある程度長い期間がかかることをお伝えしました。この部分をステークホルダーが認識していないと、「3か月もたつのに成果につながっていないのはなぜだ?意味がないんじゃないか、方針が間違っているんじゃないか?」となってしまいます。
なので、運営し始める前、コンセプトメイキングの段階で中長期ロードマップと成果フローが重要になります。

まずは成果フローから作り始めましょう。これは、オウンドメディアの集客がどういった流れで売上につながるのかをフロー化した図になります。いろいろな形がありますが、マーケティングファネルという形で表します。

マーケティングの重要な指標になるマーケティングファネルの例

マーケティングの重要な指標になるマーケティングファネルの例

マーケティングファネルでは、集客がリードになり、リードを育成して確度を高め、引き合い・商談化につなげ、成約する、という流れを表します。

集客から成約までのフローを図式化したもの

集客から成約までのフローを図式化したもの

上図のようなフロー形式で表すこともあります。個人的にはこちらの方が実用的な印象です。上図は以前Grab運営にあたり作成した成約フローです。もちろん今とは少し形が違いますが、コンテンツマーケティングの構造がよく分かります。それぞれに目標数値や転換率を入れることで、成約目標に対して何件リードを獲得すればいいのか、そのためにそれぞれのチャネル(集客経路)でどれくらい集客すればいいのかガわかります。

こうした形式で成約フローを作ったら、今度はこれらを時間軸に落とし込み、中長期ロードマップにしていきます。1ヵ月単位の数字を追いかけるのは大変なので、PC数、リード獲得数は3か月おき、成約数は半年おきといったスパンで立てることも有効です。
精度の高い中長期ロードマップを作るのはとても大変ですし、正直ムリだと思います。私が過去に作った中長期ロードマップも、計画通りに進んだことなどほとんどありません。
大切なことは、現実的な目標を立て、それに向かっていく指針になることです。

どういった形で作るかは人それぞれです。私はスプレッドシートなどで縦に項目を、横に月単位の期間を設けた表を作成します。よりビジュアライズされたグラフ等を使った方が良い場合もあるでしょう。

この時の注意店は、数値目標だけでなく行動目標も設けることです。まだ立ち上がっていないメディアの3か月後のPV数を予測することはできません。様々な市場調査(検索クエリのボリュームと想定順位と想定クリック率から算出できる、自然検索流入の想定値など)で精度を高めることはできますが、参考程度の数値でしかありません。
そこで重要なのが行動目標。つまり、やれば達成できるタイプの数字です。オウンドメディアで多いのは「月間の記事更新回数」。Grabも当初はアクセスが全然増えない中、この行動目標を追いかけて続けていました。
SEOを重視するなら、「記事本文の内部リンク数」とかでもいいかもしれません。記事本文の内部リンクはUIの観点からも重要ですし、過去記事に内部リンクが貼れる内容にしようというのは、記事作成の手がかりになります。

ペルソナとカスタマージャーニー

ペルソナの例 カスタマージャーニーの例

ペルソナとカスタマージャーニーはコンセプトメイキングの初期で作成するもので、運営においても重要な指針になります。
明文化されたコンセプトのところで紹介したGrabのコンセプト「この企画は“Web広告・マーケティングのノウハウ、最新技術”の学びにつながっているだろうか?」には、「ペルソナにとって」という言葉が隠れています。この部分を意識しないと、専門的すぎたり、ニッチすぎたりしてしまいます。
当然のことですが、情報を発信する側は受け取る側の何倍もの情報を持っています。書き手にとって学びがある、最新技術であると感じるものは、受け取る側、読み手にとって高度過ぎるかもしれませんし、興味の方向性が違うかもしれません。記事制作はもちろん、運営施策の全体において、「ペルソナにとって」という言葉を意識しましょう。

カスタマージャーニーは成果フローや中長期ロードマップに大きく影響します。課題を感じ、検索などで情報を探し自社のリードになるまでどれくらいかかるでしょうか。リードになってから、成約するまではどんなフローをたどって、どれくらいの期間がかかるでしょうか。
成果フローや中長期ロードマップはこれらを考えて作成する必要があります。

ペルソナとカスタマージャーニーについては、下記記事で詳しく紹介しているので、併せてご覧ください。

ペルソナとカスタマージャーニー(1)
ペルソナとカスタマージャーニー(2)

3つの要素を紹介しましたが、順序としてはまずペルソナとカスタマージャーニーを作成し、中長期ロードマップとカスタマージャーニーを作成。最終的に、コンセプトを明文化した一文を作成します。

コンセプトメイキングの事前準備

さて、ここまでコンテンツマーケティングのコンセプトメイキングについて様々な角度から紹介してきました。
おそらく、もっと具体的な方法が知りたいという方も少なくないと思います。しかし、コンセプトメイキングの方法について、こうすればいい、こういうコンセプトにすればいい、というものはありません。千差万別、世の中に存在するすべてのメディアが違うコンセプトを持っています。
Grabの「Web広告・マーケティングのノウハウ、最新技術が学べるメディア」というコンセプトはありふれたものに聞こえるかもしれません。しかし、その背景にある目的や運営方針、描いているペルソナは違います。

最後に、コンセプトメイキングの準備を簡単に紹介したいと思います。本当はもっと細かな準備が必要で、オウンドメディアの立ち上げには無数の中間成果物が出来上がります。
今回紹介しないもので我々が用意したものの一つに、「コンテンツマップ」があります。これはマインドマップ形式で、Grabで今後作っていきたいコンテンツを書きだしたもので、それをもとにカテゴリやタグの構成を決めていきました。

他にもいろいろありますが、今回は抜けがちで重要な3つの準備を紹介します。

Grabで作成した「コンテンツマップ」運営初期はコンテンツマップに従い、そのコンテンツを満たす記事を作っていた。

Grabで作成した「コンテンツマップ」運営初期はコンテンツマップに従い、そのコンテンツを満たす記事を作っていた。

目的の明確化

目的がなく運営されているオウンドメディアもありますが、コンテンツマーケティングとして成果を得ることは難しいでしょう。コンテンツマーケティングは地道で時間がかかるうえ、広範囲に及ぶタスクです。目的がなければ、みんながバラバラの施策を打ち出し、メディアとしての一貫性がなくなりますし、成果がるまでの苦しい期間を乗り切ることができません。

コンテンツマーケティングそのものの目的は、この記事で紹介している「リード獲得」「ブランディング」「顧客育成」のどれかを軸にすることになると思います。ただし、実際にオウンドメディアを運営しこれらの目的を達成するにはより小さな目標も考える必要があります。

Grabであれば、運営当初は記事更新数を目標に定めました。頑張れば達成できるタイプの行動目標で、成果が見えない初期フェーズでは一般的な目標です。
続いて、PV数、UU数といった効果の前段階に目標を定めました。当然、目標が変わると、施策も変わります。当初はメディアとしての形を保つために更新頻度を重視していましたが、このフェーズにくると記事の品質やSEO効果なども考慮し始めます。このころは、新しい記事の更新はもちろん、過去記事のリライトにも力を入れていきました。
その次に目標をリード獲得数に切り替えました。ここでも施策が大きく変わりました。リードを獲得するためには、ただ記事を書いてアクセスを集めるだけでなく、コンテンツオファーやセミナーなどスポットで注力するタイプの施策が重要になってきます。

続いて、インサイドセールスによる引き合い獲得数を目標に切り替えました。コンテンツオファーを強くアピールし、簡単にダウンロードできるようにすれば、リード獲得数は増えます。しかし、電話やメールがつながらないなど質の面で課題がありました。そこで、リード獲得数を犠牲にしてでもリードの質を高める必要が出てきます。
リードの質、という観点で考えると、書く記事の質も変わってきます。当初はSEO対策を意識して検索ボリュームなどを中心に記事テーマを考えていましたが、このフェーズでは自社サービスへのニーズの有無が重要になります。

このように運用フェーズによって成果が変わります。マーケティングファネルなどの成果フローの上層から下層に、目標が深くなっていくイメージです。
Grabはリード獲得を目的としたコンテンツマーケティング施策ですが、ブランディングや顧客育成の場合でも、同じようにフェーズによって目標が変わってきます。

まず、コンテンツマーケティングの大目標を設定し、そこから逆算してまず何を目標とすべきかを考えましょう。この目標は中長期ロードマップにも組み込まれるはずです。

市場・競合調査

市場・競合調査

市場調査をせずにコンテンツマーケティングに取り組む例もあります。Grabの場合、自社が長年広告・マーケティングサービスを提供しているため、市場は明確でした。大切にしたのは競合調査です。
Web広告・マーケティングが学べるメディアは数多くあります。Grabは後発なので、こうした競合といかに差別化するかが重要です。質のいい記事を書いてSEO対策にお金をかけても、10年前から運営して一定の地位を持っている競合を超えられるわけではありません。
そもそもコンセプトをずらす、ということも重要です。そのうちの一つが、自社の情報を出すことです。例えばこの記事は、Grabの立ち上げで実際にやったこと、今振り返ればもっとしっかりやっておいたほうが良かったと築いたことを盛り込んでいます。コンテンツマーケティングの専門家は数多くいますが、この記事と同じ内容が書ける人は他にいません。
HubSpotシリーズ記事の最終回「インバウンドマーケティング1年計画~成果に繋げる21ステップ」も、Grabを立ち上げて1年半分の学びを盛り込みました。

このように圧倒的競合がいる場合、単純な情報量やスピードで勝負してもかないません。いわゆる独自性を高めるアイデアが必要になります。

逆に市場が新しく、競合がいない場合も調査は重要です。コンテンツマーケティングはどんな業界業種でも活用できると思いますが、ブログのようなオウンドメディアが最適解とは限りません。そもそもターゲット層が課題を検索しない場合、ブログよりもSNSに力を入れたほうが良いでしょう。

市場はあるのか、競合はいるのか、競合はどんなことをしているのか。
これらを知るための効果的な手法も数多くあります。「効果的な競合調査・分析の手法」という記事で紹介しているので、参考にしてください。

リソース・スキル把握

最後にもう一つ、個人的には一番重要というか、多くのケースで見落とされている準備です。

コンテンツマーケティングに取り組むとして、そのためのリソースやスキルはありますか?
コンテンツマーケティングに取り組むには、基本的なマーケティングスキルはもちろん、ライティングスキル、解析スキル、目標設計スキルなど様々なスキルが必要です。
小規模な運営体制で成果を得ているケースも珍しくありませんが、ほとんどの場合1人は専任者がいます。

いざオウンドメディアを運営し始めると、ある程度の頻度での記事更新、全体のアクセス解析、評価、リード獲得のための施策など、継続的なタスクが大量に発生します。
最初から強固な運営体制を用意する必要はありませんが、スモールスタートであってもこうしたタスクをこなすリソース・スキルがあるかは確認し、不十分な場合は何らかの対策をしましょう。
ライティング作業の大半を外注することも一つですが、多くの場合お勧めできません。コンセプトメイキングからかかわるコンサル型であれば問題ありませんが、記事単体で依頼する場合、どうしてもコンセプトや目標からずれたコンテンツが増えてしまいます。

まとめ

今回はコンテンツマーケティングのコンセプトメイキングについて、全体像を紹介しました。本当は具体的に「コンセプトメイキングの3ステップ」や「10のチェックリスト」みたいな内容にしたかったのですが、書いていて実用性がないことに気付きました。
コンセプトメイキングは、コンテンツマーケティングの施策全体の方向性の指針となる考え方です。その考え方を、フレームワークに当てはめてパッと作ってしまうことはできません。

コンテンツマーケティングに取り組む企業は増えており、多く相談いただきます。しかし、コンテンツマーケティングは楽に成果が生まれる方法ではなく、貯金のように毎月コツコツと工夫しながら継続して、ある程度時間がたった時にようやく効果を実感できるものです。
貯金も無計画にとりあえず始めたら成功しませんよね。具体的に目的や目標を決め、どういう方針(食費を削るのか家賃などの固定費を削るのか、収入を増やすのか、など)で貯金するのか決め、工夫と改善を繰り返していきます。それも、最初の1,2か月では全く効果が見えないでしょう。しかし、1年2年と続けたときには大きな貯金になっているはずです。

コンテンツマーケティングも同じように、長期的な施策であることを念頭に、コンセプトメイキングから取り組んでみましょう。