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SNSやウェブサイトで動画コンテンツが当たり前になりましたが、ここ数年、急速に広がっているのが「ショートムービープラットフォーム」です。YouTubeのような動画投稿プラットフォームとも違う、SHOWROOMや17LIVEなどのライブ配信とも違う、数分程度のTwitterやInstagramの動画投稿とも違う、数秒〜数十秒の短編動画です。スマートフォンで気軽に動画を撮影・編集し投稿できるため、新しいインフルエンサーが次々と誕生しています。
記事執筆時点では、こうしたショートムービープラットフォームをビジネスに活用する事例やノウハウは決して多くはありませんでした。10年前はTwitterやInstagramも、ビジネス活用できるものとは考えられていませんでした。しかし今ではこうしたSNSのビジネス活用は当たり前になりつつあります。
おそらく今後数ヶ月〜数年の間に、こうしたショートムービープラットフォームをビジネスに活用する事例が次々と出てくるでしょう。
特に若年層に向けて商品・サービスを提供しているなら、新しい波に乗り先行者利益を得るためにも、今のうちからショートムービープラットフォームを理解しておきましょう。
新しいショートムービープラットフォームが次々と登場していますが、今回は日本で主に使われているInstagramリール、TikTok、YouTubeショートの3つについて、それぞれの違いやビジネス活用の可能性を考えてみましょう。
Instagramリール
Instagramリールは2020年8月5日にリリースされた新しいショートムービー機能です。Instagramは元々写真共有SNSですが、2013年6月に動画が投稿できるようになりました。
そして2016年8月、今では通常投稿より多く使われているストーリーズ機能をリリースします。2018年6月には、長編動画を投稿するIGTVをリリースしました。
こうして歴史を振り返ると、Instagramがどんどん動画を重視するようになっていることがわかります。
Instagramリールの特徴
Instagramリールは、Instagramに備わった15秒のショートムービー作成・投稿機能です。似たような機能にストーリーズがありますが、こちらは24時間で消えるのに対し、リールは削除しない限り残り続けます。
またリーチが多いことも大きな違いです。Instagramの中でも新しい機能なので、アプリのUIでもかなり目立つ場所に表示されます。発見タブでも大きく表示されますし、ハッシュタグの検索結果でも、他投稿より優先的に表示されます。またアプリのメインメニューの中にもリールタブが用意されています。こうした特徴から、フォロワーが少なくても多くのユーザーに届けることができるのがリールの特徴です。
そしてもう一つの特徴はテキスト量です。Instagramの通常投稿と同じく、最大2200文字の入力が行えます。これは他プラットフォームの数倍以上で、リール動画で惹きつけてさらに内容をしっかり説明する、といった使い方ができます。
動画の作成手順やエフェクト・コラボ機能など、小さな点ではTikTokと違いがありますが、ほとんど同じと考えて問題ありません。リールはアメリカで流行したTikTokに対抗して作られたと言われています。リールがリリースされた頃、アメリカではTikTok規制が話題になっていたこともあり、投稿の多くはTikTok投稿を転載されたものです。今後色々な差別化が行われると思いますが、現状ではTikTokを使わない人のためのショートムービープラットフォームという印象です。
Instagramリールのビジネス活用
Instagramリールはビジネスに活用できるでしょうか。
Instagram自体がかなりビジネス向けの機能を増やしていることから、ビジネス活用の可能性は非常に大きいと考えられます。Instagramが主に力を入れているのはショッピング機能なので、小売・ECとは特に相性が良いでしょう。
現在リール投稿にショッピングタグを付けることはできませんが、将来的には何らかの形で実装されるでしょう。ショッピングタグもリールと同じく、Instagramアプリのメインメニューに用意された重要な機能だからです。
またInstagram広告ではインプレッションの大半がストーリーズです。今はリールに広告出稿することはできませんが、こちらもゆくゆくは実装され、ストーリーズのように主要な広告出稿先になる可能性があります。そうなれば、求められるクリエイティブも数秒〜15秒の動画が主流になってくるでしょう。
そしてもう一つ、今すぐできるビジネス活用が、アカウントの育成です。企業がInstagramアカウントを持つことは珍しくありませんが、珍しくなくなったからこそ、フォロワーを増やすことはどんどん難しくなっています。
そこで活用したいのがInstagramリールです。通常投稿の場合ハッシュタグで上位化しない限り、フォロワー以外にはなかなか届きません。そしてハッシュタグで上位化するためには、ある程度のエンゲージメントが必要なので、新しくアカウントを開設してもなかなか見てもらえません。
しかしInstagramリールは多くの場所で優先的に表示されるため、より多くの人に届けることができます。通常投稿の数倍のインプレッションが獲得できることも珍しくありません。
将来リール広告がリリースされた時のため、今からリールを積極的に活用し、フォロワーを増やしながらどういったコンテンツがリールで人気になるのか調べてみてはいかがでしょうか。
TikTok
TikTokはショートムービープラットフォームの火付け役といえるでしょう。15秒のショートムービー、リップシンク、倍速再生、AIによる動画レコメンドなど、多くのイノベーションを起こしました。
TikTokの特徴
TikTokの特徴は、TikTokが生んだイノベーションそのものです。
例えば15秒のショートムービーであること、倍速再生機能、BGMの利用などです。こうした機能により、TikTokはスマートフォンでの動画投稿のハードルを下げることに成功しました。TikTokに動画を投稿しているのは、像編集技術や特殊なソフトウェアを使うプロではなく、スマートフォンしか使っていない一般の人たちです。これは全く新しい市場なので、まさにイノベーションです。
以前はBGMに合わせたダンスやリップシンク(口パク)動画が基本でしたが、最近はファッション・お笑い・あるある・ノウハウなど、いろいろなジャンルの動画が増えています。
それもTikTokがスマートフォンでの動画投稿のハードルを下げたからでしょう。料理風景を撮影し、切り貼り、倍速再生、テキスト、BGM、エフェクトを工夫するだけで簡単におしゃれな料理ノウハウ動画が作れてしまいます。
もう一つの特徴はAIの活用です。運営元のバイトダンス社にはAIラボがあり、機械学習を用いた様々なサービス開発も行っています。
これまでSNSは個人の選択によって繋がることが一般的でした。自分の友だちや趣味が合いそうな人、参考になる情報を出してくれる人をフォローして、投稿を見る、という繋がりです。
TikTokにもフォロー/フォロワーの関係はありますが、多くの人はおすすめ動画やトレンド動画を見ています。おすすめ動画ではAIがその人の好みを学習し、動画をレコメンドしてくれます。そのため、常に新しい発見、新しい繋がりが増えます。
AIがその人の好みを学習しているので、使えば使うほど自分の好みにあった動画ばかり見ることができます。そのため「TikTok中毒」という言葉が生まれるほど、多くのユーザーがのめり込んでいるようです。
TikTokのビジネス活用
TikTokはショートムービープラットフォームの中では歴史があるため、ビジネス活用の事例も増えています。とはいえショートムービー投稿の機能しかなく、熱中する人は多いもののフォロー/フォロワーの長期的関係を築く文化があまりないことから、自社アカウントを運用している企業は少ないでしょう。
一方で広告事例はかなり増えており、ゲームアプリなどでは既に主力の広告媒体といえるかもしれません。
TikTokにはいくつかの広告プランがありますが、UGC(ユーザー生成コンテンツ=口コミなど)が重要な商品・サービスとの相性が良い印象です。「ハッシュタグチャレンジ広告」は、ユーザーに特定のハッシュタグで動画をTikTokに投稿することを促す広告メニューで、UGCを生み出すことができます。
また、独自のブランドエフェクトを作成した事例も増えています。ブランドエフェクトとは、特定の企業が作ったTikTokのフィルター・編集機能のことで、昨年6月にリリースされた「Pokémon Café Mix」の事例が有名です。
参照:TilTok For Business
この事例ではTikTokのブランドエフェクトを使って、ユーザーが積極的にアプリの面白さをプロモーションしてくれています。その結果、14万人近くがブランドエフェクトを通じてこのアプリを疑似体験しました。ブランドリフト調査では、ゲーム業界平均の2倍もの成果を得られたようです。
YouTubeショート
最後に紹介するのは、世界最大の動画投稿プラットフォームYouTubeが2020年9月にリリースし、まだベータ版の新機能「YouTubeショート」です。まだベータ版で全容が明らかになっておらず、ビジネス活用の事例もほとんどないことから、今回は簡単な紹介に留めます。
しかし動画のビジネス活用でYouTubeチャンネルの運用を行っている企業も多いことから、今後、企業が積極的に活用していくショートムービーはInstagramリールやTikTokではなく、YouTubeショートとなるかもしれません。
YouTubeショートの特徴
YouTubeショートは、YouTubeに投稿する最大60秒の短い縦向き動画です。まだベータ版なので見たことがない人もいるかもしれませんが、YouTubeアプリのホーム画面に「ショート動画」というコンテンツが表示されるようになっています。
InstagramリールやTikTokと同じく、主にスマートフォンから気軽に投稿できることを重視しており、動画作成ツールの「YouTubeショートカメラ」には動画撮影、BGMや再生速度の選択機能が用意されています。
現在投稿されている動画の多くはTikTokからの転載が多く、Instagramリールと同じくTikTokを使わない人のためのTikTokといった立ち位置です。当然、今後差別化が進んでいくと思います。
YouTubeショートのビジネス活用
機能や立ち位置はInstagramリールと近いため、YouTubeショートもしばらくはYouTubeチャンネルの育成のための活用がメインとなりそうです。
チャンネル登録者が少ない場合は、通常の動画投稿より再生回数が伸びやすい傾向にあるため、新しい視聴者にリーチする場合は有効かもしれません。
現在はYouTube広告も出稿できず、ビジネス活用のチャンスは小さいように思えます。しかし、YouTubeというビジネス活用しやすいプラットフォームに登場したショートムービーなので、業種やターゲット的にTikTokやInstagramが合わないという場合はYouTubeショートを試してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回はここ数年、急速に広がっているショートムービープラットフォームについて、代表的なInstagramリール、TikTok、YouTubeショートの3つを取り上げました。印象としてはTikTok以外はまだ実験段階で、ビジネス活用しやすい状況にあるとは言えません。そのTikTokも利用できる業種やターゲットが限られるため、一部の企業でしかまだ活用されていないように見えます。
またTikTokについては規制問題もあるため、ショートムービープラットフォームという形態そのものが、今後5年、10年と拡大し続けるものなのかもまだわかりません。
しかし大きなムーブメントであることは間違いなく、今のうちから自社での活用方法を模索することで、ビジネス活用しやすい環境が整った時に大きな成果を生む可能性があります。
今回は主に現時点での特徴や考えられる活用方法を紹介しました。InstagramやYouTubeの運用に課題を感じているなら、リールやショートを投稿してみてはいかがでしょうか。通常投稿の何倍ものインプレッションが獲得でき、フォロワー増加など想像以上の効果が得られるかもしれません。