目次
- 1 カオスマップ① マーケティングテクノロジー
- 2 カオスマップ② AI・人工知能サービス
- 3 カオスマップ③ コンサル業界
- 4 カオスマップ④ マーケティング全体
- 5 カオスマップ⑤ インバウンド(訪日外国人)ソリューション
- 6 カオスマップ⑥ 音声業界
- 7 カオスマップ⑦ グラフィック・デザイン
- 8 カオスマップ⑦ CMS
- 9 サイトマップ⑧ クラウドファンディング
- 10 カオスマップ⑨ SaaS
- 11 カオスマップ⑩ RPA
- 12 カオスマップ⑪ 業界別
- 13 カオスマップ⑫ データフィード
- 14 カオスマップ⑬ Instagram
- 15 カオスマップ⑭ 動画マーケティング
- 16 カオスマップ⑮ ECサイト構築
- 17 カオスマップ⑯ OtoOサービス
- 18 まとめ|変化の激しいマーケティング業界の把握にはカオスマップを使おう
カオスマップという言葉を知っていますか?
私はかなり好きなのですが、人によっては見るのもいやな資料だと思います。
カオスマップとは特定業界のプレイヤーやカテゴリ、関係性を表した業界地図のことです。カオスマップという言葉は完全に和製英語で、多くの企業が入り混じった複雑な見栄えからそう呼ばれています。
カオスマップを見るメリットは「業界全体が把握できる」ことです。選択肢の増加といってもいいかもしれません。動きが速い業界、様々な企業が乱立する業界では、全体像を知り、適切な選択をし続けることが重要です。
例えば、日本に広告代理店は5000社以上あります。2018年の日本の広告費は6兆5,300億円ですから、これを5000社で分け合っています(広告代理店には制作会社、ツールベンダーとしての役割、広告以外の代理業務などを行うことが一般的です)。
代理店なんてどこも同じと思うかもしれませんが、5000社以上の代理店のどこに依頼するかで成果や方法は大きく変わります。
例えば、弊社はGoogle広告をはじめとする各種Web広告の運用実績が豊富で、制作会社として始まっていることから広告クリエイティブの品質に強みを持っています。一方、テレビや新聞、雑誌といったマスメディア系の企画は得意としていません。
このように代理店によって「○○新聞ならどこよりもいい枠を低価格で抑えられる」「海外出稿なら任せてほしい」「○○市でのプロモーションならどこにもまけない」「クッキーを利用したマルチメディア解析が得意だから様々な手法を併用する場合に強い」など様々な強みがあります。
新聞広告に強みがある代理店にアメリカで行うFacebook広告のキャンペーンを依頼しても間違いなく失敗します。
このようにカオスマップで全体像を把握し、今から自分がやりたいこと、目的に叶ったカテゴリに属する企業やサービスを知ることで、適切な選択ができるようになります。
前置きが長くなりましたが、今回はWebマーケティング業界のカオスマップを16個紹介します。
画像:https://www.slideshare.net/tkawaja/luma-display-ad-tech-landscape-2010-1231
こちらは2010年にLUMA Patners社のTerence Kawaja氏が発表したディスプレイ広告業界をまとめた「LUMAscape」です。これが広がり「カオスマップ」と呼ばれ、様々な業界で使われるようになりました。
カオスマップ① マーケティングテクノロジー
画像:アンダーワークス
こちらは株式会社アンダーワークスが作成したマーケティングテクノロジー業界全体を表したカオスマップです。
ツールベンダーもメディアもすべて含めたまさにマーケティング業界の全体像が分かるものになっています。
「広告」「ソーシャル/メディア」「メール」「オフライン」「セールス」「EC」「コンテンツ管理」「最適化/自動化」「データマネジメント」「データ分析」「ネットワーク/インフラ/アプリ」の11個の大きなジャンルに分けれられています。
また、「広告」であれば「DSP」「SNS広告」「3rd Party DMP」「アドベリフィケーション」「検索」「第3者配信」「広告最適化」「アフィリエイト」「インフィード」「動画広告」に分類されているように、さらに細かなカテゴリが用意されています。
個人的に注目したいのはマーケティングオートメーションなどが含まれる「自動化/最適化」です。このカテゴリはこれから必要性が上がってくるものが多くあります。
このカオスマップはアンダーワークスからダウンロードできます。
カオスマップ② AI・人工知能サービス
画像:AINOW
こちらはAI・人工知能系サービスのカオスマップです。
「解析系」「営業支援」「IoT」「広告」「AIプラットフォーム」「パーソナルAI」「感情認識」「凡要AI」「産業・農業」「ゲームAI」「ヘルスケア」「業務効率化」「総合開発」といったカテゴリが用意されています。
やはり膨大なデータが存分に活用できる「解析系」のサービスが多い印象です。スマートスピーカーの普及などにより「会話・音声」を解析するAIサービスの需要は今後増えていくでしょう。
総合開発では、富士通、フジテック、TOSHIBA、NEC等の大手メーカーが自動運転技術に活用されるAIを開発していたり、人を認識する空調システムのAI、音声で動作する電子レンジなどを開発していたりと、日常生活への浸透が期待できます。
カオスマップ③ コンサル業界
テクノロジーが発達したことで、すべてを自社で把握し事業をプランニングできるようになりました。しかし、高度に発達しすぎたため業界理解が追い付かなくなってきているという課題も生じています。
そんな中、各業界に特化したコンサルティングファームが注目を集めています。
このコンサル業界カオスマップでは「総合」「戦略」「ビジネス」「総研」「IT」「M&A/FAS」「中小向け」「人事」「事業構成」のカテゴリでまとめられています。
個人的に注目しているのはニュースが絶えない「M&A/FAS」と、テクノロジーの発達とともに必要性が増してくる「IT」です。
最近ではIaaS、PaaSといったインフラ、プラットフォームの浸透により、小規模なスタートアップも増加してきました。それをスケールアップさせるためにM&Aを採用する事例も増えています。
また、ITに関してはやはり人工知能です。人工知能については誰もが「すごいけれどよくわからない」という印象です。ここをしっかりロジカルに説明し、プランニングできる立場の必要性は高いでしょう。
カオスマップ④ マーケティング全体
こちらは冒頭で紹介したLUMA Patnersのカオスマップ最新版です。
2010年に初めて作られ、2011年は150、2012年は350、2014年は1000とどんどん増え、2017年版は5000になりました。
ここまでくると「いろんなサービスがあるんだな」程度にしか伝わりませんが、逆に言うとこれだけのサービスの中から最適なものを選ぶ必要がある時代ということです。
カオスマップ⑤ インバウンド(訪日外国人)ソリューション
画像:ナイトレイ
インバウンド(訪日外国人)の市場は年々増えており、2017年で4兆円を超えています。さらに今後、東京オリンピックや大阪万博で急激に増加するでしょう。それに限らず、少子化が進む日本では積極的に外国人観光客、外国人労働者を増やす施策を行っています。
日本政府が出した「世界が訪れたくなる日本」では、訪日外国人数の目標値を2020年に4000万人、2040年に6000万人と設定しています。今後、インバウンドに対応できるか否かで事業規模や業績は大きく変わるでしょう。
上図はインバウンド対策総合支援サービス「inbound insight」を提供しているナイトレイが作成したカオスマップです。
急激に市場規模が増加していることと、これまで海外向けの施策を行ってこなかった業種(ローカルな飲食店やアパレルなど)で必要とされていることから、非常に多くのサービスが生まれています。
このカオスマップのカテゴリも「中華層向け」「タイ向け」「英語圏向け」のような地域別、広告やWebサイトの制作、イベント開催といった施策別など多岐にわかれています。
カオスマップ⑥ 音声業界
音声・ボイス業界はスマートスピーカーの登場により急激に注目を集めています。このカオスマップは「配信プラットフォーム」「コンサルティング/制作」「音声コンテンツ」「コンテンツ制作ツール」「音声合成/解析技術」「スマートスピーカー」「音声アシスタント」「音声広告」「メディア」に分かれています。
スマートスピーカーを起点に配信プラットフォームや音声広告、それらのコンテンツを制作するサービスが伸びています。肝となるのはAmazon、Google、LINE、Appleがそれぞれ提供するスマートスピーカーの浸透と関連アプリケーションの開発でしょう。
音声広告の市場は今後発展が期待されているので、今後マーケティング戦略に使う機会も増えてくるでしょう。
カオスマップ⑦ グラフィック・デザイン
画像:Visually
グラフィック・デザイン業界というとあまり大きな変化がなさそうに感じます。しかし実際には、クラウドソーシングの登場により、個人のクリエイターや小規模のデザイン事務所に注目が集まるようになり、大きな変化が登場しています。
そのため、このカオスマップの中央にあるのはクラウドソーシングプラットフォームです。海外のものなので、日本で利用できるサービスがあまりありません。日本版を作るとしたら「Cloudworks」「ランサーズ」などがここに入るでしょう。
カオスマップ⑦ CMS
画像:ノースサンド
非常に実用的なカオスマップです。世の中のWebサイトの3割はWordPressで作られているといわれていますが、CMS分野も非常に多くのサービスが乱立しています。
ブログ系サービスはSNSに立場を奪われたようにも見えましたが、最近は「note」が注目を集め、個人・組織に限らず利用が進んでいる印象があります。
オープンソースやクラウド化といった考えが浸透したことにより、CMSの定義も広がったように感じています。GitHubをCMSと考えたことはありませんでしたが、持っている機能、はたしている役割を考えると確かにCMSです。
個人的に注目しているのは「メモ」と「タスク」に属するCMSです。この分野はテクノロジーの影響を顕著に受け、急激に進歩しました。
サイトマップ⑧ クラウドファンディング
画像:CORe
注目を集める事業・サービススタートの方法にクラウドファンディングがあります。もともとは個人の夢や目標の達成を多くの人の強力で成立させることが中心でした。しかし、最近は新製品や試作品のローンチに数千万円集まるケースもあり、企業やスタートアップの間でも注目されています。
クラウドファンディングも様々なカテゴリがあり、MotionGalleryやMakuakeなどの統合型の他、音楽関係に特化したWIZY、研究機関に特化したacademistなども注目を集めています。
こうしたクラウドファンディングサービスでは、銀行や企業の稟議が下りなかった様々な製品・サービス・企画が実現されています。市場規模が大きくなっていっていることは確かで、クラウドファンディングでの資金集めからプランニングできるマーケターは非常に価値があるでしょう。
カオスマップ⑨ SaaS
画像:BOXIL
近年、クラウドをベースとしたSaaSが注目を集めています。SaaSは「Software as a Service」の略で、「サービスを提供するために必要なソフトウェア」を提供するプラットフォームです。
以前はデスクトップにダウンロードして利用していたものをインターネット上で提供することで、頻繁なアップデートや柔軟な対応、豊富な拡張機能などが特徴です。
やはりマーケティング関係者として注目したいのは「営業・マーケ」分野です。中でも「マーケティングオートメーション」「CRM・SFA」はマーケターとして使う場面は増えてくるでしょう。
また、「名刺管理」や「コールセンター」など従来人力で賄われていた部分に関してもSaaSによる効率化が注目されています。
カオスマップ⑩ RPA
画像:GLMOP
RPAはロボティック・プロセス・オートメーションと呼ばれるもので、PC上で行う定型作業を自動化するものです。働き方改革の一環でIT導入補助金の対象にもなっています。
マーケティングの仕事は市場を見つけ(または創出し)、見込み顧客とコミュニケーションをとり顧客化し、顧客価値が最大化できるシナリオを構築することです。
戦略的で代替できない業務に見えますが、実際には資料作成、データ分析、調査など地道でな定型作業が中心だったりします。
RPAはこうした分野で活躍します。マーケターがRPAを使い自身の業務をブラッシュアップすることで、より戦略的な活動に力を注ぎ価値を上げていくことができます。
また、クライアントにRPAによる業務効率化まで提案できれば一流でしょう。
今後、RPAという言葉を聞く機会、実際に触る機会が多くなってくるでしょう。マーケター自身のキャリアアップはもちろん、クライアントの業績向上に貢献するためにも必要性の高い分野です。
カオスマップ⑪ 業界別
画像:AINOW
画像:Credit
画像:不動産テック協会
画像:hotelbank
画像:カジフル
これは少し番外編ですが、カオスマップはほとんどの業界で作成されています。今回は「チャットボット」「キャッシュレス」「不動産テック」「ホテル」「家事代行サービス」のものを紹介しました。
マーケターにとって、クライアントの業界の力関係を把握することは非常に重要です。カオスマップを見てまだ見つけていない競合やカテゴリを見つけるかもしれません。
マーケターが新しい業界のクライアントを担当する場合、まずはその業界のカオスマップを探し、市場全体を把握することが重要です。
カオスマップ⑫ データフィード
画像:フィードフォース
株式会社フィードフォースは国内のデータフィードに関するカオスマップを作成しました。データフィードはデータを供給する仕組みのことを指し、主にユーザーの行動データなどを広告プラットフォームに提供しています。
有名なGoogle PLAは商品リスト広告のことで、Google Merchant Centerに登録した商品データをGoogleショッピングなどで広告配信できます。
Criteoも登録した商品データを様々な形式に組み合わせ、様々な広告プラットフォームに提供する機能を持っています。
カオスマップ⑬ Instagram
画像:インスタアンテナ
業界業種にかかわらず、Instagramのビジネス活用が活発化しています。インスタアンテナはInstagramを活用しているBtoC企業アカウントのカオスマップを作成しました。
アイコンの大きさがフォロワーの多さを表しており、ハーゲンダッツ、響、サントリーウィスキーなどが多くのファンを獲得していることがわかります。
Instagramで人気を得ているアカウントがどんな投稿をしているか、それを学ぶことはInstagramマーケティングの企画において重要な調査です。
こうしたカオスマップを活用すれば、調査も楽になります。
カオスマップ⑭ 動画マーケティング
画像:デジタルエージェンシー
これはぜひ保存しておいてほしいカオスマップの一つです。マーケティングにおける動画広告の活用は欠かせないものになってきました。
初めて動画を用いたマーケティングを企画するのなら、どのメディアが使えるのか、どんな制作会社に作ってもらえばいいのか、どんな方法で広告配信ができるのか、効果測定はどうなっているのか等、わからないことが多いと思います。
そんな時はこのカオスマップを見てください。動画マーケティングに必要な要素を俯瞰できます。
カオスマップ⑮ ECサイト構築
画像:ecclab
Amazon、楽天など大型モール型ECサイトが浸透してきていますが、一方でそうしたモール型ECサイトには出せない体験を提供するブランドECサイトの需要も増えています。
サービス体系もASP型とパッケージ型が主流でしたが、最近はクラウド型も注目を集めています。
正確なレコメンド機能、豊富なデザイン、顧客体験に関係するその他さまざまなな機能、さらには越境ECまで、求められる機能によって価格や形式も様々です。
カオスマップ⑯ OtoOサービス
画像:Kaumu
こちらはOtoO(オンラインからオフラインへ繋げる施策)のカオスマップです。カオスマップという割には非常にわかりやすくまとまっています。
OtoOは今のWebマーケティング業界の一つの課題でもあります。まだまだ効果の予測や測定、費用対効果などWebメディアならではのメリットが十分に発揮できていません。
各種ポイントサービスやキャッシュレスサービス、メディアなどを活用することで、OtoOの実現がスムーズになります。
デジタルクーポンやバーコードサービスなど、こんなサービスもあったんだという気づきが得られます。
まとめ|変化の激しいマーケティング業界の把握にはカオスマップを使おう
今回はマーケティング業界に関するカオスマップを16個紹介しました。
カオスマップは各種業界に対して様々な人が作成しています。個人的には「ロボテック業界」「自動運転業界」「ブロックチェーン業界」のカオスマップが面白くてよく見ています。
今回紹介したものの中ではLUMA Patnersが一番見ていて面白いものです。マーケティング業界で活躍するパブリッシャーが5000以上あります。こうなってはクライアント側で最適なものを選ぶことはできないでしょう。だからこそ私たちのような代理店が間に立ち、最適な選択をサポートする必要があります。
どの業界にいても、乱立するサービスの中から最適なものを選択する重要性は変わりません。
ぜひ自身の業界や必要なツールについて調べてみてください。これまで見えていなかった競合やもっといいツールが見つかるかもしれません。