新型コロナウイルスに対応するマーケティング戦略とテレワーク導入という特集の中でお送りしている「テレワーク導入に向けたステップ」も、今回で最後になりました。
正直なところ、新型コロナウイルスを受けて緊急的にテレワークを導入するだけなら、第4回までの内容で十分かもしれません。1,2か月後にはもとに戻ることを前提に考えるなら、最低限のセキュリティとルール策定、ツール導入で十分です。
しかし、新型コロナウイルスの影響で広がったテレワークの流れが、簡単に元に戻るとは思えません。新型コロナウイルス自体が長期化することも一つですが、それ以上に企業が一度進めたテレワークという合理的な働き方を、危機が去ったという理由で簡単にもとに戻すことはないからです。
多くの企業は2020年に入ってから、危機管理の重要性を強く痛感していると思います。一つの危機が去ったとして、次の危機がいつ来るかは分かりません。そうなると常に危機に備え、いつでもテレワークできる状態にしておこうと考えることが普通です。そして、いつでもすぐにテレワークに切り替える状態を作るなら、テレワークのその他のメリットを享受するため、テレワークを一般的な働き方の選択肢として定着させることは当たり前の流れでしょう。
総務省が発表した「平成28 年通信利用動向調査」によると、テレワーク導入企業は非導入企業と比較して労働生産性が1.6倍も高いという結果になりました。クラウドサービスの利用有無(1.3倍)、ICT教育の実施有無(1.3倍)と比較しても高くなっています。
DXやクラウド活用など労働生産性を上げる様々な取り組みがありますが、実はテレワークが一番効果的なのかもしれませんね。
今、すでにテレワークを導入している企業が多いと思います。弊社では、もともとテレワークを導入しようという流れがあったところに今回の新型コロナウイルスの危機がきたため、比較的スムーズに導入できたほうだと思います。
今回はシリーズ最後として、危機管理のために導入したテレワークを定着させ、業績改善などに役立てていく方法を、実例を交え考えていきたいと思います。
第1回:テレワークの概要とメリット
第2回:テレワーク導入によくある懸念
第3回:セキュリティとルール策定
第4回:テレワーク導入に必要なツール
第5回:テレワーク導入事例
テレワークが定着せず失敗する理由
テレワークは様々なメリットがあるものの、急激に導入が広がったことでデメリットも露呈しました。導入すること自体はそこまで難しくありません。難しいのは、テレワークで業務効率を維持、向上させ、業績に繋げること、そしてテレワークを企業文化、当たり前の選択肢として定着させることです。
まずは、テレワーク導入後に課題が解決できる、失敗していく理由を見ていきましょう。
ITリテラシー教育が足りない
テレワークを導入すると、業務のほとんどをPCなどのデバイスを使い、インターネットに接続して行います。PCで何かトラブルがあっても、すぐに相談できる人は隣にいないので、ある程度は自分で解決する必要があります。
テレワークを導入して、ITリテラシー格差が広がったという事例が多くみられます。口頭ではなくチャットでのコミュニケーションが増えるので、タイピング速度が業務効率と直結します。他にも、ビデオ会議にスムーズに接続できるか、PCが急に再起動したり、フリーズしたりしたとき自分で対処できるか、またそもそもビデオやチャット上でちゃんと意見を言えるか、が重要になります。
人材系シンクタンクのパーソル総研でテレワークに関する調査を担当された小林祐児氏は、調査結果を受け「特にITリテラシーの程度が如実に表れる。普段PCを使わない人だと、チャットの返信スピードが遅かったり、オンライン会議のたびに音声が出ないこともある。従業員のITリテラシーの習得は、(やっておけば)新型コロナの終息後も企業にとって損の無いもの。これらのスキルのベースアップはまさに今、やるべきだろう」と述べています。
職種によっては、ITリテラシーは特別な業務にだけ求められるものだったかもしれません。しかし、テレワークを導入すると、すべての業務にITリテラシーが絡んできます。
テレワークにより、あらゆる業種で“仕事ができる”の定義が変わるでしょう。そして、その変化を従業員個人の学習能力や意欲に任せていると、うまくいきません。テレワーク導入と同時に、全員のITリテラシーレベルを上げる取り組みが求められます。
紙の文化が残り続ける
こちらは、エイトレッドが実施したテレワーク導入企業における稟議申請・決裁の実態調査の結果です。調査機関は2020年4月15日~16日なので、まさに今、テレワークに取り組んでいる企業の実態を表しています。
テレワークにおいて、紙、ハンコ文化は大きなネックです。別の調査では、「テレワーク実施中に出社する必要が発生した」という回答が41%に上っています。出社理由は紙の書類の処理や銀行対応などです。
また、テレワークを実施できていない理由に関する調査では、請求書や証憑などの紙の書類がデジタル化できていないという回答が77%に上りました。
日本では紙とハンコの文化が根強く、テレワーク導入後も大きな課題です。
2019年末にはハンコロボットが話題になりました。電子認証を導入すればいいにもかかわらず、最新鋭のロボットにハンコを押させるという取り組みは、ハンコ文化の根強さを物語っています。
現在、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、行政手続きなどでも課題になっている「対面・紙・ハンコ」をデジタル化する動きが、安倍首相の指示のもと進められています。こうした動きがあるにせよ、現在も紙やハンコ文化がテレワークの課題になっていることは間違いありません。
テレワーカーは怠けるという迷信
「人は監視していないと怠ける」という迷信によって定着しなかったテレワークも少なくありません。非常に細かな進捗報告や厳格な監視・モニタリング体制はテレワーカーにとってストレスであるだけでなく、業務効率の低下にもつながります。
現在、様々な監視ツールが注目されています。例えば、パナソニックはWebカメラの画像から脈拍などを測定してストレスレベルを測定するツールを開発しました。アプリケーションやファイルの使用状況など、PCの操作状況を細かく記録するツールもあります。
他にも、「着席」「退席」のようなボタンで休憩時間を1分単位で記録するツールもあります。
また、昼食などで休憩に入るときも、そのつど、「退席」と「着席」のボタンをクリックすることで、休憩時間も1秒単位で記録されます。
記録された内容はシステム上で管理され、会社の上司は、部下が今働いているのかどうかや、月の勤務時間がどれくらいになっているかを確認できます。
さらに、このシステムでは、社員が「着席」のボタンを押して仕事をしている間の、パソコンの画面がランダムに撮影され、上司に送信される仕組みもあります。いつ画面が撮影されるか社員には分かりません。
会社では、自宅で働く社員に一定の緊張感を持ってもらう効果があると考えています。また、上司は送信されてくる画面を見れば、部下が今どんな作業をしているか把握ができます。
引用:NHKNEWS
賛否両論ありますが、1分単位で記録され、いつスクリーンショットを送られるかわからない状態では、気軽に調べものをしたり、トイレに行ったりできないのではないでしょか。そんな状態で生産性の高い仕事ができるとは思えません。
この課題に対しては、企業側とテレワーカー側、両方の意識改革が必要です。
まず、企業側はテレワーク導入にあたり適切なルールを決めることと、人による違いを認識すること、そして社員を信頼する必要があります。
テレワーカーの日報のフォーマットを変える、定例報告フローを作るといったルール作りを行ったうえで、テレワークに向いている人、向いていない人を把握する必要があります。従業員の仕事観やテレワークでの就労環境には個人差があります。良し悪しではなく、テレワークに向いていないという人はいますし、ネットワーク環境が整備されていない従業員にテレワークを強いることもよくありません。家庭環境や業務内容によっては家で仕事がしづらい場合もあるでしょう。
ルールを決め、そういった個人差を理解したうえでテレワークを許可したのであれば、後は信頼して任せることが重要です。たまたま撮られたスクリーンショットに関係のないWebサイトや個人的なチャットのおしゃべりが映っていたというだけで、怠けているわけではありません。
テレワーカー側も、オフィスでの仕事とは環境や役割が違うことを認識しましょう。仕事している姿を常に見せるわけではないので、仕事をしていることのアピールはある程度するべきですし、上司が安心できるよう報告や環境整備にも力を入れるべきです。
環境による業務効率の格差
前項目で少し述べましたが、テレワーカーが働く環境には違いがあり、業務効率も違います。小さな子供が家にいるのに、ずっと業務に集中することはできないでしょうし、普段はヘルパーさんに頼んでいる年おいた親の介護が発生する可能性もあります。それに加え、インターネット環境やデバイス、デスク、椅子などもそれぞれ異なります。
オフィスで仕事をする場合、全員が同じインターネット環境、適切なデバイス、デスク、椅子を使って仕事をしています。テレワークではこれらの要素が個々人の環境に左右されることを知っておきましょう。
ここを理解しておかないと、パフォーマンスが下がった従業員が目について「テレワークは業務効率が悪い」と判断してしまいがちです。特に現在は危機管理のため、環境の向き不向きではなく、業務内容に応じて一律でテレワーク導入を進めている企業が多いと思います。その場合はこの理由でやめてしまう可能性が非常に高いので注意しましょう。
環境による業務効率の格差を埋めるためにも、企業側とテレワーカー側双方の強力が必要です。企業側はPCやインターネット環境など、業務効率に大きく影響する環境整備は積極的に協力した方が良いでしょう。
働きすぎで負担が増える
テレワークになると怠けるという迷信がある一方で、逆にテレワークによって働き過ぎてしまうことも課題になります。
すでに述べたように、テレワークではITリテラシーや環境による業務効率の格差が広がります。今は、緊急的にテレワークを導入し、企業も従業員も十分な準備ができていない状態です。もともとITリテラシーが高く、在宅勤務の環境が整っている従業員はともかく、そうでない従業員の業務効率は大きく低下しているでしょう。
そうなると、業務効率が維持できている一部の従業員に業務が集中してしまう可能性があります。また、オフィスと違って細かく業務量を管理することができないため、発言が少なく”暇そうな“従業員に雑務が集中してしまいがちです。
そうした業務量の格差に加え、出社する、退社するという仕事とプライベートとの明確な差をつけにくいテレワークでは、見えないところで長時間労働が発生してしまうケースがあります。従業員側から声を上げないと、上司が「いつも遅くまで大変そうだから、業務を割り振ろうか」と声をかけることもできないので、深刻化するケースも少なくありません。
厚生労働省の「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」でも、労働時間の適切な把握と長時間労働の対策が項目にあげられています。
雑務が集中し、評価されない業務で長時間働いている目立たない従業員、チャットやWeb会議上では発言が活発だがリソースに余裕がある従業員、存在感自体が薄くなり仕事がなくなっている従業員など、様々なパターンが考えられます。いずれにしても、就業時間や業務量を適切に測り、評価する指標がないと、テレワーク自体が崩壊してしまいかねません。
テレワーク定着を成功させる方法
テレワークが定着せずに失敗する理由として、「ITリテラシーによる格差」「紙の文化」「テレワーカーの監視体制」「個々人の環境による業務効率」、そして「長時間労働」を紹介しました。
いずれも積極的に対策しなければ、業務効率、従業員満足度が低下し、テレワークを定着させることができません。
では、こうしたことに対策したうえで、テレワークを定着させ、さらに業務効率や従業員満足度の向上につなげていくためには何ができるでしょうか。
ツールに頼り過ぎないコミュニケーション手段を持つ
一つは、テレワーク導入の懸念デモ多く上げられる、コミュニケーションについてです。第4回の記事でコミュニケーションツールを紹介しましたが、その活用方法をしっかり吟味するとともに、ツールだけではなきコミュニケーション手段を持ちましょう。
プロジェクト・タスク管理ツールのTrelloは、テレワークのコミュニケーション員ついて次のように書いています。
- ツールでは意図や人間性が伝わりにくいことがあります。チャットの最後には、感情と反応を持った人間性が表れることに注意しましょう。
- 建設的なフィードバックを提供する場合は、ビデオ通話を使えば意図を伝えやすくなります。
- 言葉や感情表現が足りないと、ある人がチャットの対話をディスカッションだと思っていても、別の人は口論とみなすことがあります。
- 問題が対応されないままだと、時間を追うごとに憤りが大きくなります。デジタルコミュニケーションが誤った方向に向かうと、誤解が生じ感情を傷つけることがあります。
たとえ、チャット上で「はい」と簡素な返答しかなくても、相手がそれについて関心がない、冷たい態度をとっているとは限りません。そのことをお互いが理解しておく必要があります。受け手はチャット上で冷たいからといってそれが本心、本質ではない事を理解し、送り手はテキストのみの簡素なやり取りにならないよう気を使う必要があります。
企業によっては、ビジネスコミュニケーションでもチャット上で絵文字や感嘆符(!)、スタンプ等の利用を推奨している場合もあります。
チャットによるコミュニケーションは、対面やメール、電話を全く違うビジネスマナーが求められます。そのため、新しいコミュニケーションルールが必要になるでしょう。
また、業務上のやり取りだけでなく、業務外のコミュニケーションやオフラインでのコミュニケーションも意識的に設計しましょう。
サイボウズ株式会社は、テレワークの工夫として、「朝会での雑談タイム」「週に一度はチームでリモートランチ」「オフラインで集まる機会を設ける」を上げています。
IT大手Yahoo!やIBMは、比較的早くテレワークを導入していましたが、途中で取りやめた経験もあります。その理由はコミュニケーションの課題が浮き彫りになったためと言われています。
チャットツールの導入により、コミュニケーションを劇的に改善することができますが、それだけでは十分ではありません。長期に及ぶテレワークを円滑に進めるには、ちょっとした雑談なども重要です。
業務ルールは新しい物を用意する
就業規則などの業務ルールは、オフィスで働くことを前提に作られていると思います。働く場所が変わるということは、仕事の進め方や評価方法など、働き方を全体的に大きく変えることになります。
例えば、テレワーク勤務中に宅配が届いた際、受け取るのはOKでしょうか? PCの電源をつければいつでも業務にあたりますが、有給中や業務時間外の緊急対応はどこまで対応すべきでしょうか? 業務の評価や報告はどのようにすべきでしょうか?
一般的に、テレワークを導入した際には新しい就業規則、評価体制が必要です。具体的には、「テレワークの実施範囲」「テレワークの申請や承認」「テレワーク社員管理と評価」「テレワークツールの費用負担」「社内外のコミュニケーション」、そして「セキュリティ」などがあります。
現在、新型コロナウイルスの影響で緊急的にテレワークを導入した企業の多くは、制度やルールの整備が追い付いていないと思います。必要に応じて、専門家の協力を得るようにしましょう。
評価については、なかなか答えを出すことができない企業が多いと思いますが、多くは成果重視の評価体制に変わってくると思います。カルビー株式会社では、2014年からテレワークを導入し、評価の軸に成果主義を置き、業績を伸ばしてきました。
しかし、成果主義が常に優れているわけではありません。
通常、業務はプロセスとマインドと成果で評価されます。四半期ごとに評価する場合でも、プロセスとマインドに対する評価があれば、従業員は四半期以上先の目標に向かって進むことができます。しかし、成果のみで評価を行う場合、従業員の多くは、四半期で成果の出る事に注力してしまいます。
弊社でも導入しているインバウンドマーケティングなどは、成果が出るまで半年から1年、長いと2年以上かかってしまいますが、こうした長期的な取り組みに対する評価もしっかり考える必要があります。
日本マイクロソフトは2007年からテレワークを導入してきましたが、2016年に一度廃止し、制度を一新したうえで再導入しました。テレワークで利用するツールや業務内容、事業目的は変化していくため、テレワークの規則も定期的に見直す必要があります。
テレワークで成果を上げた事例
それでは最後に、テレワーク導入企業の成功事例を見ていきましょう。これらの企業は、新型コロナウイルスの危機よりも前からテレワーク環境を整備し、業績の改善や従業員満足度の向上に成功しています。
成功事例を見てみると、ほとんどの場合、定着して成果につながるまで数年ほどかかることが分かります。今、緊急的にテレワークを導入し、混乱や効率の低下があると思いますが、数年かけて制度策定や意識改革を行うことが重要です。
SCSK株式会社-育児からの職場復帰率96.5%
システム開発などを行うSCSK株式会社は、2013年から、ワークライフバランスの向上、自己成長機会の創出、ダイバーシティの推進などを目的として、働き方改革に取り組んできました。2015年からは「リモートワーク細則」を定め、「どこでもWork」という柔軟な働き方の定着を進めています。
従業員数7000名以上の大きな組織なので、導入と浸透にはかなり力を入れています。「どこでもWORK推進委員会」を設置し、テレワークの推進を経営上重要な仕事と位置づけ、テレワークに特化した社内広報誌を発行したり、テレワーク手当を支給したり、様々な工夫がされています。
効果としては、ワークライフバランスが向上したと答えた従業員が98%、生産性が向上したと答えた従業員が87%に上ります。業績も2015年と比較して、売上・利益ともに20%以上向上しています。
さらに驚くことは、育児で一時的な退職や休職、時短勤務などを経て、復帰した職員が96.5%に上るということです。非常に働きやすい環境になっていることが分かります。
株式会社キャスター-求人倍率が500倍以上に
株式会社キャスターはオンラインサービスなどを提供する80名ほどの会社です。ここでは、役員、業務委託者を含め、全員が完全テレワークとなっており、出社義務はありません。そのため、従業員の居住地も全国に散らばっています。
株式会社キャスターはテレワークによって全国から優秀な人材を確保することができます。テレワークは付加価値の高い働き方で、地方でも東京と同じ給与水準で働くことができます。そのため、採用募集を行うと500~1000件の応募があつまり、優秀な人材確保と事業成長につながっています。
株式会社エー・トゥー・ゼット-残業時間削減に成功
株式会社エー・トゥー・ゼットは、外国語学校の経営や外国語指導助手の派遣を手掛ける会社で、従業員の約8割が女性です。女性は出産などライフイベントの影響を受けやすく、中堅社員の離職などが大きな損失につながっていました。テレワーク導入により、こうしたキャリアの中断を防ぐことに成功しています。
また、外国語指導助手の派遣先は多岐にわたりますが、テレワークによりオフィスを経由する必要がなくなり移動時間が最適化され、残業時間を6割減らすことにも成功しています。
外勤が多い勤務体系の場合、移動コストはかなりの負担になります。営業職はテレワークが難しいという意見もありますが、日報を家で書くなど一部業務をテレワークにするだけで、大きな働き方改革になります。
カルビー株式会社-段階的に文化として浸透
カルビー株式会社は、2009年に経営刷新、2010年のダイバーシティ委員会発足、2011年にはサマータイム制の導入と一部職種に対するモバイルワークの実施、2013年には在宅勤務制度のトライアル、2014年から在宅勤務制度の拡大、2017年にはモバイルワーク規定の策定と、段階的にテレワークを導入してきました。
常に約半数の内勤務者がテレワークを利用しており、テレワーク・デイには8割がテレワーク・モバイルワークを利用しました。また、入念に準備し導入を進めているため、着実に改善することができています。従業員アンケートでは、業務効率が上がったと回答した従業員が2017年は71.8%だったのに対し、2018年は83.0%となりました。ライフワークバランスについても、向上したと答えた割合が2017年の87.3%から2018年は96.0%に改善しています。
After コロナではテレワークを当たり前に
これらの例からわかるように、テレワークは数か月で準備してすぐに浸透するものではありません。何年もかけて準備して、少しずつ浸透させていくものです。つまり、新型コロナウイルスの影響で緊急的に導入した企業でうまくいかないのは当然のことです。
今回はテレワーク定着の成功、失敗理由と、成功した企業の事例をいくつか紹介しました。今大切なことは、従業員の安全安心と、事業継続です。そのために、業務効率を犠牲にしてテレワークを導入している企業も少なくありません。多くの企業では、緊急事態宣言などで緊急的にテレワークに切り替え、最初の混乱が落ち着き、また別の課題なども見えてきた時期なのではないかと思います。
第1回で紹介したように、テレワークには コストダウンや生産性の向上、人材の確保など、様々なメリットがあります。そのためには、セキュリティや就労規則、適切なツール導入、意識改革など、多岐にわたる準備が必要なことも伝えてきました。
弊社では、新型コロナウイルスの危機の前からテレワークの準備がある程度できていたため、比較的スムーズに導入することができました。しかし、定着させ、業務効率や従業員満足を向上させていくには、まだまだ改善が必要と感じています。
今回は全5回のシリーズで、テレワーク導入について紹介してきました。一番伝えたいことは、「テレワーク導入することは簡単だが、効果を生むことは難しい」ということです。
今後、テレワークは当たり前の働き方の一つになり、上手く導入できている企業とそうでない企業では、業績や求人、従業員ロイヤリティ等に格差が生じるでしょう。
今の危機を乗り切ると同時に、今後のことを見据え、テレワークの本格化を考えてみてはいかがでしょうか。
第1回:テレワークの概要とメリット
第2回:テレワーク導入によくある懸念
第3回:セキュリティとルール策定
第4回:テレワーク導入に必要なツール
第5回:テレワーク導入事例