目次
Part1|テクノロジーの進歩を第一線進めるGoogle
Part2|Googleの検索画面は、もはやテキストを表示する場所ではない
Part3|広告はより便利に・安全に・効果的に
アメリカ時間の2019年5月14日、GoogleはGoogle広告、Googleアナリティクス、Google Marketing Platformなどの広告関連サービスに関するアップデートや今後の方向性などを「Google Marketing Live 2019」で発表しました。
Part1では、イベントは2018年7月10に行われた「Google Marketing Live 2018」の内容振り返りを中心に、冒頭で発表された世の中の3つの変化を紹介しました。
Part2では、「これからの広告はユーザーと企業、双方のニーズに対応する」をテーマに、広告・プロモーションに関する様々なアップデート情報を紹介しました。
今回は、運用担当者必見の、Google広告機能追加に関する発表を紹介したいと思います。
日々、Google広告の運用にかかわる私としては、今回の内容が一番楽しみです。
これからの時代、広告に求められるのは「情報の透明性・選択・操作」
機能紹介の前に、今回のキーノートスピーチが何で締めくくられたかを紹介します。
「Google Marketing Live 2019」キーノートスピーチの最後には、Googleとユーザーとの信頼関係構築や個人情報保護の推進を担当しているシニアプロダクトマネージャーのChetna Bindra氏が登壇しました。
同氏によると、プライバシーに関する人々の関心は高まっており、Googleマイアクティビティの検索数は1000%も増加したとのことです。
Googleマイアクティビティとは、「すべての人に、テクノロジーを。すべての人に、安心と安全を。」をテーマにしたものです。ここでは、Google アカウントに保存された検索履歴や閲覧履歴などのアクティビティを確認し、ユーザーは保存するアクティビティ内容を指定したり、アカウントに保存されたアクティビティを削除したりすることができます。
こうした背景を受け、今回のキーノートスピーチは、個人情報保護に関する内容で締めくくられました。
Googleが個人を保護するために重要視する要素は、次の3つです。
- 透明性(Transparency)
- 選択(Choice)
- 操作(Control)
ユーザーは、自身の個人情報がどのように管理されているかを確認し、自身の情報を選択、操作できるようにすべきということです。
これに対してGoogleは3つの指針を述べています。
- プライバシーポリシーの明確化…なぜユーザーの情報を集めるのかを明らかにすべき
- ファーストパーティーデータ(自社が収集したユーザーデータ)の利用…他社が利用したサードパーティーデータの利用は控えるべき(Appleをはじめサードパーティを制限する動きは強い)
- 個人情報保護を理解し、尊重すること
これらは、Googleのような巨大プラットフォームに限らず、そうしたプラットフォームを利用する広告主、媒体、広告代理店など、すべての関係者が意識すべき点です。
個人情報保護を理解し、尊重したうえで、Googleの発表を見てみましょう。
自動入札と広告運用の効率化、広告の在り方が変化
自動入札機能「コンバージョン値の最大化」が拡張
Google広告には、様々な自動入札戦略があります。
自動入札戦略は、過去のコンバージョン成果などに基づいてオークションの入札価格を自動で調整するものです。機械学習により最適化されるため、長期的には手作業での入札よりも高いパフォーマンスを少ない手間で実現できます。
入札戦略は、2017年に導入された「コンバージョン数の最大化」から、「目標CPA」などいろいろなものがあります。
今回、「コンバージョン値の最大化」という、これまでスマートショッピングキャンペーンでしか利用できなかった入札戦略が、検索キャンペーンでも使用可能になりました。
「コンバージョン数の最大化」では、コンバージョンの種類に限らず最大化するよう調整され、「目標CPA」ではグループごとに目標CPAに収まる範囲でコンバージョンを取得するよう調整されます。
「コンバージョン値の最大化」では、それぞれのコンバージョンに値を付与し、その成果(=見込み売り上げ)が最大化するように自動調整されます。
キャンペーンごとにコンバージョンアクションを選択
上記の「コンバージョン値の最大化」に関連して、キャンペーンごとにコンバージョンアクションを選択する機能も追加されました。
これにより、例えば「商品購入」を目標としたキャンペーンと、「会員登録」を目標としたキャンペーンでそれぞれ最適化する対象のコンバージョンを選択することができます。
これまでは1つのアカウントに対し、最適化の対象とするコンバージョンアクションは1つしか設定できませんでした。
場合によっては、最適化するために目的別に広告アカウントを作成するなど、手間をかけている広告主も多かったと思います。
しかし、キャンペーン単位でコンバージョンアクションが選択できるようになったため、「ディスプレイ広告では認知拡大」「リスティング広告では成果獲得」のように、それぞれの目的に最適な設定を行い、自動入札を活用した広告運用が可能になります。
オーディエンス拡張が拡大
Web広告には、「オーディエンス拡張」と呼ばれる機能があります。LINE Ads Platformには、「Look a Like」という機能があり、過去コンバージョンしたユーザーと類似するユーザーを1%単位で選択し、広告配信対象ユーザーを拡張する機能がありました。
同様の機能がFacebook広告などにもあり、オーディエンス拡張(類似オーディエンスとも呼ばれる)は、新規獲得を促しやすいターゲティング手法として、注目されています。
Googleにももともとオーディエンス拡張はありましたが、「積極的な拡張」と「慎重な拡張」の2種類しかありませんでした。
今回発表された「オーディエンス拡張スライダー」では、拡張度合いを5段階から選ぶことができ、さらに詳細な類似オーディエンスを設定できます。
「オーディエンス拡張スライダー」を活用した事例として、Googleは同じ投資額でコンバージョン数を最大約50%まで増加させたと発表しました。
季節要因を考慮した自動調整が可能に
自動入札機能は、上手く使いこなせば手間を軽減し、広告効果を最大化できる可能性があります。
しかし、過去の広告成果をもとに最適化するため、季節要因や突発的な要因に対応できず、機会損失が発生する可能性がありました。
例えば、コンバージョン単価が低かったセール中のデータを元にセール後も運用すれば、費用対効果が大きく悪化している広告グループやキャンペーンに予算を投下してしまいます。
今回、「Seasonality Adjustment」という機能が発表されました。この機能では、セール前、セール中、セール後や、繁忙期、閑散期などのコンバージョン率の変化を事前に入力することで、その設定を加味した自動入札が行われるというものです。
ディスプレイ&ビデオ 360からテレビCMの出稿が可能に
ディスプレイ&ビデオ 360から、SpotifyやGoogle Play Musicといった音楽ストリーミングサービスへのオーディオ広告、コネクテッドTVの広告出稿(つまりTVCM)が可能になることを発表しました。
音楽ストリーミングの利用者は10億人を超えており、コネクテッドTVの普及も進んでいます。アメリカでは約73%の家庭がコネクテッドTVを利用しているとのことです。
すたれていくといわれていたTVCMですが、コネクテッドTVの登場で新たな可能性を見せています。TVという圧倒的に普及しているデバイスによる強大なブランディング効果と、インターネットにつながったことによる高度なターゲティングが組み合わされたためです。
2018年第3四半期には、動画広告インプレッションの38%がコネクテッドTVからだったのに対し、スマートフォンからのインプレッションのシェアは31%だったと、エクストリーム・リーチが発表しています。また、同社の調査で、1年前のコネクテッドTVのシェアは14%だったという結果もあり、非常に早く普及していくことが期待できます。
こうした背景もあり、ここ数年、コネクテッドTVに対するTVCMは進歩してきました。
ディスプレイ&ビデオ 360というWeb広告向けのプラットフォームから出稿できるようになったことにより、さらにコネクテッドTVCMの市場は拡大していくでしょう。
また、SpotifyやGoogle Play Musicに対する音声フォーマットの広告も注目すべきです。
音声に対しては情報伝達スピードが遅いという意見もありますが、スマートスピーカーの普及などにより、音声コンテンツがユーザーの私生活に染み込んでいます。
まとめ|広告はより便利に・安全に・効果的に
今回、全3回にわたって「Google Marketing Live 2019」キーノートスピーチの内容を紹介しました。
日々Google広告の運用にかかわる身として、Google広告のより運用面にフォーカスしたPart3は、非常に興味深いものです。
例えば、キャンペーンごとにコンバージョンアクションが選択できるようになったことは、これまでの運用方針が一変する業界・業種もあるでしょう。
また、ディスプレイ&ビデオ 360から音声フォーマット広告の配信やコネクテッドTVへの配信が可能になったことも大きなインパクトでしょう。
こうした取り組みは、ストリーミングサービスやTVの制作会社に新たな収益を生み出します。当然、配信されるコンテンツも変わってくるでしょう。
しかし、キーノートスピーチで一番重要視すべきは、最後に語られた「情報の透明性・選択操作」かもしれません。
プライバシーへの関心が高まったことで、広告主や広告媒体に非難の声が集まるケースも出てきます。しかし、多くのユーザーに利用してもらうために広告を掲載する広告媒体、自社の商品・サービスをより多くのユーザーに届けたい広告主、どちらも悪いことをしているわけではありません。
Googleのような巨大プラットフォームが、プライバシー関心への高まりを考慮することで、広告業界全体の透明化・健全化に繋がるでしょう。
それによりユーザーが広告を受け入れ、広告主が安心して出稿できるようになれば、ユーザー、媒体、広告主それぞれにメリットがあるプロモーションが実現されます。
Part1|テクノロジーの進歩を第一線進めるGoogle
Part2|Googleの検索画面は、もはやテキストを表示する場所ではない
Part3|広告はより便利に・安全に・効果的に