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動画広告は、これからの時代に欠かせない広告形態です。
スマートフォンの普及によって誰もが動画に触れる機会が増え、今後は5Gの導入が控えているなど、より身近な存在になることが予想されています。こうした未来を見据えて、動画広告を実施したいと考えている方も多いです。
動画広告はテレビCMなどの旧マスメディア広告と比べると成果測定しやすい面もあります。しかし、ブランディング目的の場合、正確な数値を出すのは難しいとされています。
「ブランディング」という消費者の態度・価値観の変化をウェブ上の指標として表すことが難しいためです。
そこで今回は、動画広告の中でも、ブランディング広告の効果を測る「ブランドリフト調査」について解説します。
ブランドリフト調査の詳細やメリット・デメリット、各媒体で提供されている調査の手法を紹介するので、今後の施策の参考にしてください。
ブランディングによる成果測定の重要性
動画広告は、バナーやテキストなどの静的な広告手法に比べて、映像や音、体験を届けることができるため、広告効果が高いといわれています。さらに視聴率や視聴者数など、様々な効果検証が可能なため、最近では自社のブランディング目的にテレビCMではなくWeb上の動画広告を選ぶ広告主が増えています。
しかし、Web上で様々な数値計測が可能とは言え、ブランディング広告は、レスポンス広告に比べて「成果測定が難しい」です。
商品やサービスの購買が目的のレスポンス広告の場合、広告のクリック数をはじめとする反応、つまり定量的(連続する数値の変化)に成果測定ができます。
一方、自社の認知度向上を目的としたブランディング広告の場合、定量的な回数ではなく、個人の感情の変化、つまり定性的(不連続な性質の変化)な部分に着目しなければいけません。
動画広告の一般的な指標である再生回数は、レスポンス広告の場合に参考になる指標ですが、ブランディング目的の場合、あまり参考になる数値ではないといえます。
なぜなら、ブランディングにおいて、再生回数の多さは必ずしもプラス効果があるとはいえません。例えば、マイナス効果(炎上など)でも同じように再生回数が伸びるなど、数値では測れない部分が多いからです。
ではどうやって、数値では表せられない要素の成果測定を行えばいいのか。そこで、利用したいのが「ブランドリフト調査」です。
ブランディングの成果を測るブランドリフト調査
ブランドリフト調査とは、ブランディング広告の接触ユーザー、非接触ユーザーを比較した上で、ブランドの認知や購買意欲が向上しているかどうかを測る指標です。
ブランディング広告は認知目的で行われますが、前述した通り成果測定が難しいとされています。そこで、ブランドリフト調査を用いることで、本来成果測定しにくい部分を可視化します。
基本的にブランドリフト調査は、調査会社に依頼、またはGoogleやFacebookといった媒体のツールを使って行います。また、各手法は依頼する媒体によって異なりますが、一般的にアンケートを中心としたものが多いです。
YouTubeを見ていて「知っている会社を選んでください」といったアンケート広告が表示されたことがあると思います。動画広告を見て記憶していたらその会社を選ぶかもしれません。最初から知っていて選ぶかもしれません。
こうしたアンケートを行うと、「動画広告を見た人は、見ていない人に比べて5%認知が高かった」のように、ブランディング効果を定量的に測ることができます。
調査会社と各媒体での違いは、全体か一部かという点です。GoogleやFacebookの行うブランドリフト調査は、その媒体の範囲内での調査になります。一方、調査会社は媒体にとらわれない形で調査を行います。
インターネット全体での調査を行いたい方は調査会社へ依頼、ある媒体でのみ調査を行いたい方は、GoogleやFacebookなどのブランドリフト調査を利用してください。
特定の広告施策の効果を測りたい場合は、広告施策を実施した媒体で行うといいでしょう。複数施策を掛け合わせて最終的なブランディング効果を測りたい場合は、媒体や手法に縛られない調査会社のほうがいいでしょう。
ブランドリフト調査のメリット・デメリット
ブランドリフト調査のメリットは、「ブランディング」という感覚的で定性的な見えない動きを可視化する点です。
本来見えない動きを可視化できれば、今後の施策に活用できます。その上で、PDCAを回せるので、ブランド認知度向上に役立てることが可能です。ブランドリフト調査を行う多くの企業が、数値化できないデータを求めています。
一方、ブランドリフト調査のデメリットはコストが高い点。
GoogleやLINE Ads Platformなど、ブランドリフト調査を提供している媒体では、基本的に数百万程度の資金が必要になります。また、ブランドリフト調査は、定点観測を行うことでより効果を発揮します。
つまり、一回調査して「あの動画広告がよかった」となることは少なく、月に1回、半年から1年程度定点的に行うことで、各施策の傾向や成果が見えてきます。
そのため、膨大な予算が必要で、誰にでも手を出せる施策ではありません。
しかし、LINEが提供するLINEリサーチでは、最低限の調査を9,800円で実施するプランもあります。
このように将来的にはもう少し調査しやすい環境になるかもしれません。ただし、現状ではまだ大企業向けの施策といえるでしょう。
ブランドリフト調査の手法
最後にYouTube、LINE Ads Platform、Facebookが提供しているブランドリフト調査の手法を紹介します。どんな調査方法を行っているか確認しておきましょう。
YouTube広告で利用できるブランドリフト調査
- 広告想起
- 認知度
- 比較検討
- 好意度
- 購入意向
YouTubeのTrueViewインストリーム広告のブランドリフト調査では、上記の5つの項目に加えて、サーチリフト測定と呼ばれる項目が提供されます。
調査手順は以下の通りです。
まず、Googleが同じ性質を持つユーザーを広告配信されたグループ、そうでないグループに分けます。次に、2つのグループに同じアンケートを配信します。アンケートは簡易的なもので回答率は極めて高いです。最後に2つのグループの回答結果をまとめて、約1ヶ月でGoogleからレポートが提供されます。
YouTubeのブランドリフト調査における測定項目は1種類から利用可能です。ただ、測定項目の数が増えるほど、調査の予算が高くなります。ある程度予算の融通は効きますが、そもそものコストが高いので注意が必要です。
LINE Ads Platformで利用できるブランドリフト調査
LINE Ads Platformでは、広告接触の有無でユーザーを分類し、それぞれのユーザーに対してブランドリフト調査を行います。(LINE Ads Platformではブランドリフトサーベイ(調査)という名称)
LINE Ads Platformでは、調査項目が3種の「ライトプラン」と、5種以上の「スタンダードプラン」を用意しており、予算に合わせて選ぶことが可能です。
調査レポートでは、アンケート回答者の基本情報、広告認知率、広告接触によるブランドリフト一覧、性年代別ブランドリフト効果などが提供されます。
また、LINE Ads Platformでは「リーチ&フリークエンシー」と呼ばれる広告配信機能も合わせて提供されています。こちらは月に1回以上タイムラインの広告に接しているユーザーを対象に、顧客セグメントを絞って広告を配信し、短期間で数多くのリーチが得られる機能です。
両方の機能を使うことで費用は安くなりますが、どちらも数百万程度からの出稿となるので、コストには注意しましょう。
Facebook広告で利用できるブランドリフト調査
Facebookでは、特定のFacebook広告キャンペーン、または掲載しているFacebook広告に対してブランドリフト調査が可能です。こちらも、広告接触の有無でユーザーを分類し、それぞれのユーザーに対してブランドリフト調査を行います。
Facebookのブランドリフト調査は、基本的にFacebookアカウントの担当者とやり取りしている場合、実施可能です。こちらもある程度のコストが必要になります。
ブランドリフト調査の依頼を考えている方は、まずはFacebookアカウントの担当者とコンタクトを取ってください。
ブランディング効果を測るブランドリフト調査まとめ
今回は、ブランディング目的で動画広告を利用するときに検討したいブランドリフト調査について解説しました。
基本的にブランドリフト調査は、大企業向けの機能といえます。テレビCMを打てる程度の企業でなければ、調査にかかる費用を払い続けることが難しいかもしれません。個人や中小企業の場合、低コストで行えるほかのブランディング施策を検討する必要があるでしょう。
一方、大手企業でブランドリフト調査を行う予算がある場合、この調査はブランド認知度向上に大きく貢献します。各指標の定点観測を行いながら、施策を打っていけば、それなりの効果が見込めるでしょう。
これから静画に代わって動画の時代が訪れれば、これまでよりもブランドリフト調査も利用しやすくなるかもしれません。LINEのように中小企業が利用できるブランドリフト調査のプランを提供する媒体、調査会社も増えています。
この流れは、動画広告の需要が増えるにしたがって早まるでしょう。商品・サービスの品質が上がり、低価格化、コモディティ化が進む中、消費者に付加価値を与えるブランディングの重要性は増してきます。
今後訪れる動画時代に向けて、まずはブランドリフト調査の基礎知識を身につけておきましょう。