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2020年も終わり、2021年が始まりました。2020年というと、コロナウイルスのパンデミックが最も印象的だと思います。その結果これまでの広告手法が通用しなくなったり、これまで安定だと思われていたビジネスが苦境に立たされたり、大きな変化がありました。
しかしその中でも、一番注目したい変化がインターネット利用の急増です。
ビデオリサーチ社の調査によると、2020年は「おうち時間」「STAY HOME」によりインターネット利用が急増。
2019年、「ウェビナー」や「Zoom」「テレワーク」などの言葉には先進的なイメージがありましたが、この1年で当たり前になりました。
その結果、一気に広がったのが「動画広告」です。ビデオリサーチ社の調査では、動画広告により、「広告の内容をネットで調べる」「何か行動するときに参考にする」「商品・サービスの購入経験がある」という人の割合が急増しました。
2020年は動画広告を活用していれば、大きく成果を上げられた年といって良いかもしれません。実際、緊急事態宣言中などはYouTubeの視聴者数が急増し(=広告の在庫が増える)、リーチ単価、視聴単価が数分の1にまで低下したので、まさに「出せば出すだけ成果が上がる」という状況でした。
しかし多くの広告主が動画広告に参入し、消費者も動画広告を見慣れた今では広告を出すだけで成果が出る時期は終わりました。動画広告も入念に計画・分析し、PDCAサイクルを回していくことが求められています。
そこで今回は、動画広告の分析方法、PDCAサイクルの回し方、その際に利用できるツールを紹介します。
動画広告の分析指標
まず、動画広告の分析指標を知っておきましょう。動画広告は認知目的で使われることも多いですが、ユーザーに行動させる力が強いこともわかってきました。つまり、動画広告から直接コンバージョンが狙えるということです。
一時期は6秒動画や30秒未満の動画が良いと言われていましたが、最近は3〜5分程度の比較的長い動画広告を出稿し、しっかり情報を伝えることでコンバージョンを狙う事例も増えています。
動画広告を分析する指標は数多くありますが、「リーチ」「視聴」「レスポンス」という三段階に分けて考えてみましょう。
1.リーチ-効果的に動画広告を配信できたか
「リーチ」とは広告を消費者に届けることを指します。具体的には「インプレッション数(表示回数)」や「インプレッション単価」があります。
より細かな指標としてGoogle広告(YouTube広告)には、「視認範囲のインプレッション数」などがあります。
[視認範囲のインプレッション] には、広告が視認可能だった回数が示されます。広告が視認可能と見なされるのは、面積の 50% 以上が画面に表示され、ディスプレイ広告なら 1 秒以上、動画広告なら 2 秒以上表示された場合です。Google広告より
視認範囲のインプレッション数は、実際にユーザーがその広告を見れる状態にあったか、を指します。YouTubeのインストリーム広告であれば、ほぼ間違いなく最初の5秒は見られるのであまり気にする必要はありません。しかしTwitterやInstagramの動画広告や、アウトストリーム広告では注視すべき指標です。
認知拡大が目的の場合、特に6秒のバンパー広告を出向する場合はリーチに関する指標を重視します。効率的にリーチできているか、インプレッション単価や視聴者の年齢・性別などを分析していきましょう。
2.視聴-動画の内容が届いているか
「視聴」とはその動画広告がどの程度見られたかを指します。視聴に関する指標には「視聴率」「完全視聴率」「平均視聴単価」「平均再生時間」などがあります。
コンバージョンを目的に動画広告を行う場合、動画には注意喚起、商品・サービスの説明、メリット・魅力、行動すべき理由、行動訴求、など多くの要素が入ります。動画の長さも数分程度になるでしょう。
その場合、動画広告がどの程度見られているかは非常に重要です。
YouTube広告では、動画広告を 30 秒間(30 秒未満の広告の場合は最後まで)視聴する、または、広告に対して操作を行ったときに視聴とカウントされます。
つまり、視聴率が高い動画はある程度の興味を持って30秒程度見られたということです。
またYouTube広告にはより細かな視聴率として動画広告を25%、50%、75%、100%のそれぞれどれだけ見られたかを知ることができます。
3分の動画で50%視聴率が30%であれば、動画広告を見た人の30%がその動画の1分30秒まで見ているということになります。平均再生時間という指標もあり、これは動画が平均して何秒見られているかを表します。
また、Google広告画面上ではこうした指標が確認できますが、YouTubeのチャンネルアナリティクスではより細かな視聴維持率の推移を知ることができます。
こうした指標を組み合わせると、その動画のどの時点までよく見られていて、どこで離脱(スキップ)が起こっているのかを知ることができます。
ちなみに、完全視聴率(100%見られた割合)を重視したほうが良いという意見もありますが、それは動画の構成や目的によります。例えば、途中で行動訴求を行い、後半は付随する情報を流したり、最後のひと押しの情報を流したりする場合、完全視聴率は下がります。
動画広告の目的は「最後の1秒まで見てもらう」ではなく、何らかの行動や認知につなげることだと思います。完全視聴率が高い動画広告=効果のある動画広告ではない、ということは知っておきましょう。
3.レスポンス-動画広告がどれだけ行動につながったか
3段階目の指標である「レスポンス」は、動画がどれだけの行動を誘発したかを表す指標があります。コンバージョンを重視する場合には「クリック数」「コンバージョン数」を見ます。一方で、YouTubeチャンネルの育成や他の動画への誘致を目的とする場合は「広告視聴後の高評価」「広告視聴後の共有」「広告視聴後のチャンネル登録」などの指標を見ます。
動画広告のKPIを設定する時、多くはレスポンスで設定すると思います。チャンネルの育成であれば「広告視聴後のチャンネル登録」、Webサイトのトラフィックであれば「クリック数」、問い合わせの獲得であれば「コンバージョン数」などがKPIとなります。
動画広告のPDCAを回す方法
ここまで、動画広告の「リーチ」「視聴」「レスポンス」の3段階の指標を紹介しました。質の良いユーザーに効率的にリーチし、適切な訴求を行う動画広告を視聴してもらい、レスポンスを獲得する。これが動画広告の基本的な流れになります。
なので、動画広告を分析するときは、「リーチ→視聴」と「視聴→レスポンス」に分けて考えると分かりやすくなります。
「リーチ→視聴」の指標を分析すると、適切なターゲットに適切な動画を届けられているかを知ることができます。ここで注目する指標はインプレッション数と視聴率・視聴単価です。
視聴率が低い場合、ターゲティングが適切でないか、動画の最初の30秒で興味を引きつけられていないということになります。YouTube広告では20〜45%程度の視聴率が一般的です。ただしこれはあくまでも平均的な数値で、広告の目的や業界業種によって異なります。後述する分析ツールなどを活用し、ベンチマークを見つけましょう。
視聴単価もただ高い、安いの金額で見るのではなく、ベンチマークに対して考える必要があります。YouTube広告では、設定次第で平均視聴単価を1円以下に抑えることも可能です。しかし、1円以下の視聴単価で配信できる広告枠(YouTube動画)は質が低い場合がほとんどなので、単に安く押さえればいいというものでもありません。
続いて「視聴→レスポンス」を分析すると、動画がどれだけ行動を喚起できたかが分かります。ここで重要になる指標は視聴維持率とクリック率やコンバージョン率などです。
視聴維持率が低い場合、動画の構成に問題があるかもしれません。また視聴維持率が低いのにクリック率が高い場合、ユーザーは動画の早い段階で行動を喚起されているということになります。短い動画に作り直すだけで費用対効果が改善するかもしれません。
視聴維持率が高く、動画がしっかり見られているのにクリック率が低い場合、動画のCTAやテキストに課題があると考えられます。その場合は動画の後半、行動を喚起する部分を見直しましょう。
コンバージョン率も動画によって非常に左右されます。リスティング広告やバナー広告ではランディングページの品質が成否を分けますが、動画広告では動画内で十分に情報を伝えているので、動画の内容によってコンバージョン率が左右されます。
動画の中で伝えている魅力がランディングページでしっかり補完されているかを確認しましょう。視聴維持率・クリック率が高い動画広告の内容を基に、ランディングページの構成を作るのもいいでしょう。
動画広告の分析に利用できるツール
それでは最後に、動画広告を分析するツールを紹介します。YouTube広告であれば、動画広告に関する様々な指標が計測できますが、他媒体の広告手法と連携した効果を測定したり、競合調査からベンチマークを見つけたりすることができません。また、YouTube広告を行う際はGoogle広告だけではなく、YouTubeのチャンネルアナリティクスも確認しましょう。チャンネルアナリティクスでは、視聴者の年齢・性別やより細かな視聴維持率などを知ることができます。
動画広告はYouTubeだけでなく、FacebookやTwitter、Instagram、アウトストリームの動画広告枠など、多様な広告枠に出稿できます。
これから紹介するツールを活用して、動画広告を効果的に分析し、PDCAサイクルを回しながらいろいろな広告手法に展開していきましょう。
vidtao-無料で使える競合調査ツール
英語でしか提供されていないので若干慣れが必要ですが、YouTubeで競合調査を行うならvidtao一択といっていいほど効果的なツールです。
YouTubeを見ているとインストリーム広告が差し込まれると思います。その広告がどれくらいの費用をかけて出されているのか気になりませんか?YouTube広告に長い期間コストを支払っているということは、それだけ成果が出たということです。数ヶ月に渡り多額の広告費が投入されているなら、間違いなく参考になる動画広告です。
vidtaoのアカウントを作り、クロームのプラグインを導入すると、YouTubeを見ていて動画広告が表示された際、その動画を「swipe」することができます。swipeした動画はvidtaoのマイページに表示され、いつ公開された動画で、どれくらい再生されていて、どれくらいの予算が投入されているかを知ることができます。
上の画像は偶然見かけたYouTube広告をswipeしたものです。見てみると、2020年1月に公開され、そこから一貫して広告費を投入し続けていることがわかります。
一方こちらは2020年11月に公開され、1ヶ月ほどの間は広告費を投入していましたが、12月に入り鈍化していることがわかります。1ヶ月ほど運用し、想定した効果が出なかったのかもしれません。もちろん、期間限定のキャンペーンでその期間が終わったのかもしれませんし、想定していた成果数に達した、という可能性もあります。
このように、競合の動画を調べればどういった動画広告が効果的なのかを想像することができます。
動画広告に取り組むならぜひ導入しておきたいツールです。
PlayAds-動画の効果をすべて数値化
vidtaoはYouTube広告を出稿している他広告主の動画を調査できる、非常にユニークなツールでした。しかし競合調査には有効ですが、自社の広告施策を細かく分析するのには向いていません。
そこで活用したいのはGMOが提供するPlayAdsです。非常に多機能な分析ツールなので、本格的に動画広告に取り組むなら導入したいツールです。
PlayAdsではYouTubeに限らず、様々な媒体に出稿した動画広告の1秒単位での視聴率を知ることができます。そのため、例えば「32秒~35秒での離脱が多い」といったデータが出れば、効率的に動画クリエイティブを改善することができます。
さらに、独自パネルを対象に小規模なブランドリフト調査を行ったり、独自の感情取得技術により視聴者の反応を定量的に測ったりといったことが可能です。
ADEBiS-Webマーケティング全体を可視化する
AD EBiSは動画広告に限らず、様々なWeb広告・マーケティング施策を可視化するツールです。充実した機能を持ち、広告効果測定ツールとしてはシェアNo.1です。
動画広告を見て、それをクリックしてコンバージョンするのではなく、動画広告で認知を得て検索してコンバージョンしたり、その後バナー広告をクリックしてコンバージョンする、ということも十分に考えられます。
この時最終的にコンバージョンに至った検索やバナー広告だけでなく、そのきっかけとなった動画広告も評価する考え方を「アトリビューション分析」といいます。
Google広告だけを行うなら、Google広告に備わっているアトリビューション分析を活用することができます。しかし他広告手法も併用する場合は、AD EBiSのようなツールが必要です。
またAD EBiSは単なる広告効果測定ツールではなく、webサイト内の行動やリサーチ、MAやBIツールとの連携など、Webマーケティング全般を網羅する管理ツールです。
こうしたツールはAD EBiS以外にもあるので、本格的にWebマーケティングを行うなら、こうしたツールの導入を検討しましょう。
まとめ
今回は動画広告を分析してPDCAサイクルを回す方法ということで、動画広告を評価する重要な指標や分析方法、そして分析をサポートするツールを紹介しました。
他の広告施策についても同様ですが、一番重要なことは、広告の目的を明確にすることです。広告の目的を明確にした上で、ベンチマークやKPIを定め、その指標に向かってPDCAサイクルを回していくので、あくまでも広告の目的が第一段階です。
最初に伝えた通り、少し前は動画広告を出せば成果が出るという時期でした。しかしこれからはそういう時期ではありません。動画広告で成果を出すためにも、まずは目的を明確にし、その目的に向かってPDCAを回していきましょう。