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既にご存知の方も多いと思いますが、アメリカのアップル社は2020年9月16日に、iOS 14をリリースしました。これはiPhoneやiPad、iPod touchに対する最新のOSであり、iPhoneユーザーのプライバシーを守る仕組みがより一層強化されました。
具体的には、ITPという機能を用いたWebサイトのトラッキング抑止機能のアップデートであり、プライバシー保護が強化さるとともに、Web広告への影響が否めないものとなっています。
Web担当者にとってはあまり朗報ではありません。
ターゲットを絞り広告効果を高めるには、トラッキングによるオーディエンスデータの取得・分析が必要不可欠ですが、iOS14のリリースによってそれらが難しくなりました。
今回は「iOS14のWeb広告に対する影響」について、まとめていきます。
はじめに予備知識|ITP(Intelligent Tracking Prevention)
はじめにiOS14のWeb広告に対する影響をお話していく上で欠かせないワード「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」について簡単にご説明します。
ITPとは、ユーザーのプライバシーを保護するため、Safariに備え付けられた機能であり、ユーザーの行動履歴や動きを分析するためのトラッキングを制限するものです。
ユーザーにとっては安心してスマートフォンを利用するために一役買ってくれるITPですが、企業のWeb担当者やWeb広告を企画・配信する業務に携わる人にとっては少々厄介な存在です。
Safariはスマートフォンブラウザの中でもシェア率が圧倒的に高く、ITPは多くのユーザーに影響を及ぼします。
また、iOS14において、Safari以外のブラウザアプリやアプリ内のブラウザ機能の多くにITPが適用される事になったという点にも注意が必要です。
iOS14が広告配信に与える影響
オーディエンスのサイズに制限がかかる
Web担当者にとって、サイトのカスタムオーディエンス機能を利用した広告効果測定や分析はとても重要な業務です。
しかしiOS14が実装されているスマホで広告のトラッキングを許可しないユーザーが増えると、どうなるでしょうか?
オーディエンスのサイズが小さくなり、広告配信数に制限がかかってしまいます。リターゲティング広告も同様で、その影響範囲は計り知れません。
IDFAの取得設定がデフォルト不可となり広告効果が減少
広告にマッチする人だけにターゲットを絞り効果を高める配信方法を、ターゲティング広告と言い、AppleのiOSでは、広告用識別子であるIDFAを利用して取得できる、行動データや広告エンゲージメントデータを活用して実現していました。
しかしながらiOS14のリリースによって、IDFAデータの取得がデフォルトから外れ、事態は一変しました。
▼iOSバージョンによるIDFAのデフォルト設定
- iOS13:アプリごとの共通の設定により、デフォルトで「許可」
- iOS14: アプリごとの共通の設定により、デフォルトで「不可」
IDFAの「不可」設定により得られる情報量が減ると、ユーザーターゲティングの精度も極端に下がり、間違いないく広告効果に大きな影響を与えます。
今までよりも面倒になることは明らかですね。
IDFAによって得られる情報量が減ると、ユーザーターゲティングの精度も極端に落ちてしまうので、広告効果に大きな影響を与えることは間違いありません。
コンバージョンイベントのレポートが遅くなる
Web担当者がユーザーの動向を理解し、効率的な広告運用を実現するためには、可能な限りリアルタイムでコンバージョン発生のタイミングを知っておくべきです。
しかしiOS14では、リアルタイムでコンバージョン発生のタイミングを知ることが難しく、最大で3日ほどのズレが生じる可能性が高いことを、覚えておいてください。
またこれまでは「インプレッションの発生時」にレポートされていたものが、「コンバージョン発生時」にレポートされるようになることも忘れてはいけません。
Web担当者は効果測定や分析にあたり、これらの綿密な事前確認を意識するよう注意してください。
iOS14の影響を受けるであろう広告プラットフォーム
iOS14の影響を受けるであろう広告プラットフォームはYahoo!広告・Google広告・Facebook広告・LINE広告・Twitter広告です。
これらの媒体ではAppleユーザーの端末を識別するIDである「IDFA」が広告の表示に利用されているケースがあり、影響を強く受けてしまうようです。
どの広告プラットフォームも共通して影響を受けるのは「コンバージョンやインプレッション数の減少」です。それによって、リターゲティング広告の配信も減少します。
しかし、各社影響を受けるだけではなく、新たな試みを考えている媒体もあります。
考えられる対策方法
iOS 14リリースによって個人のプライバシーがより守られるようになったのは良いものの、Web担当者にとっては頭が痛い状況が続くことになります。
ここではiOS14による影響を少しでも緩和するべく対策方法をまとめてみました。
【Yahoo!広告の場合】コンバージョン測定期間を延ばした
Yahooは、コンバージョンデータの計測数の減少を和らげるために、コンバージョンの測定期間を延ばしました。
具体的には、新たにリリースした「ローカルストレージを利用したコンバージョン計測の補完機能」を追加しこれを実現しています。
▼コンバージョン測定方法と期間の比較
以前:Cookieを用い、コンバージョン測定期間は最大1日
現在:Yahooの「ローカルストレージを利用したコンバージョン計測の補完機能」を設定することでコンバージョン測定期間を最大7日まで延長
これによって、コンバージョンデータ計測の減少を和らげる対策はできましたが、リターゲティング広告の対策に関してはまだ手薄感が否めません
サービスとしてのリリースではなく、Yahooからは推奨の対策として提示されています。
ユーザーが検索するキーワードを元にしたサーチターゲティングを活用したり、年齢・性別・地域・オーディエンスカテゴリーを掛け合わせることによってカバーしていく方法です。
今後は違うターゲティング方法で、効果的な対策を打ち出していくような姿勢が大切になってきます。
ターゲティング方法を変更する
リターゲティングだけに頼らずに、ターゲティング方法を変更していくのも効果的な対策です。
●Facebook広告に向いている。デモグラフィックターゲティング
個人情報の正確性が高いFacebookなら、地域・性別・年齢などのユーザー属性でターゲットを絞るデモグラフィックターゲティングがおすすめです。
しかし、属性があいまいな他の媒体ではFacebookのような精度を見込められないので、他のターゲティング方法と掛け合わせることをおすすめします。
●コンバージョン達成見込みが高いユーザーへ。サーチターゲティング
サーチターゲティングとは、ユーザーの過去の検索ワードをもとに、広告主の指定キーワードで検索をした人に広告が配信されるターゲティング方法です。
リサーチをしている、興味がある、検索しながら迷っているというユーザーにアプローチができるので、見込みの確率的にも高いと言われています。
個人のプライバシーが守られる一方で、Web担当者は工夫が必要
今回は「iOS14リリースによってWeb広告が受ける影響」についてお話しました。
Apple社がユーザーのプライバシーをより守るために行ったリリースですが、Web担当者にとっては頭を抱えざるを得ない事態となってしまいました。
iOS14によって、広告効果の見え難い時代となったことは、言うまでもありません。リターゲティングによる広告配信量とインプレッション数の減少が、広告配信にも大きな影響を与えることになります。
Web担当者には、今後の状況に合わせてリターゲティングに変わるターゲティング手法を、模索していくことが求められます。