これからの成長が期待される音声広告

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これからの成長が期待される音声広告

かつて『ラジオの広告』という程度の認識であった音声広告が、コロナの広がりや働き方の変化によって再び注目されています。

なぜ今音声広告が再度注目を集めているのか、音声広告の効果や規模、活用法や今後の可能性について紹介します。

音声広告のメリット

音声広告の市場規模

広告といえば、新宿、渋谷などに大々的に掲げられたデジタルサイネージや、ネットでのリスティング広告、動画広告が思い浮かびやすい印象です。

デジタルサイネージは場所にもよりますが、広告費やクリエイティブ制作費がかかるイメージがあり、敷居の高いものです。また、リスティング広告は初期設計や運用が困難で、ノウハウを蓄積するまで時間がかかってしまいます。動画広告においては、動画の内製化が厳しく、広告代理店に依頼する企業がほとんどです。

以上の点から、なかなかデジタル分野に出稿できない企業も多いのではないでしょうか。

既存広告は、人の目に触れて初めて効果を発揮するものが大半です。

現在おうち時間やリモートワークが急増したため街に出て広告を見る機会が減少し、リモートワークや通学中の『ながら時間』が注目され、視覚に依存しない音声広告のニーズが高まっています。

アメリカでは2016年から音声広告の導入が始まり、2016年で1,197億円規模だったものが右肩上がりに成長し、2020年では3,357億円規模まで成長しています。

日本でも2020年では16億円規模と拡大を見せ始め、2025年では420億円規模になると予想され、大掛かりなことをしなくても将来性があると注目されています

 

なかでもSpotify(スポティファイ)、インターネットラジオのradiko(ラジコ)での音声広告が効果を上げています。Spotifyでの音声広告は無料会員登録者に向けて配信されていて、音楽の再生が終わった後に流れるため、コンテンツ利用の妨げにならず、ユーザーにとって不快感もほとんどありません。スキップすることはできませんが、広告の長さは最大30秒で動画広告よりも内容が入ってきやすいというメリットがあります。

radikoもデジタル化以前は、スポンサーCMを番組の合間に流していましたが、アプリに変わったことで利用者も増え幅広い広告展開が可能になりました。

radikoの広告は民放連加盟のラジオ局で著名なパーソナリティが語りかける信頼のおけるコンテンツのみに配信が可能で、ブランド毀損につながるリスクも極めて低いのが特徴です。最近では10代から20代に人気のアーティストやアイドルがラジオのパーソナリティーを務めることが多くなり、若年層のラジオ聴取率が上昇しているため、情報発信の場所として注目を浴びています。

音声広告のキホン

音声広告とは視覚的な情報を抜きにしても音声で企業の意図や商品の魅力が伝えられる広告で、有名なところで言えばNetflix、Intelなどの音で企業が想像できる広告があげられます。

日本の広告手法は一般的に、海外のはやりを取り入れる傾向にありますが、音声広告においては、近いものが日本でも先行していました。

デジタル化以前の話ではありますが、例えば伯方の塩など『一回聞いただけで企業と商品が理解できるCM』というものはCM音楽とともに音声広告のムーヴメントが起こる前からありました。

これらのことから、音声広告はものすごく根付きやすく、好意を持って受け入れてもらえるものと考えられます。

音声広告で得られる効果

現在音声広告を積極的に運用し、効果を上げているのが前述のSpotifyです。

Spotifyはいろいろな調査を行い、音声広告の有効性を科学的に証明しています。

・ブランド名の認知には音声のほうがストレートに伝わるため効果的。

・音声広告は感情に訴えかける要素が強く、音声広告と動画広告を併用した場合、相乗効果により動画広告の効果も高まる。

・音声広告を用いた場合、既存のディスプレイ広告と比較して、ブランド想起力が24%アップ、商品に対する関心、購買意欲が2倍に、広告理解が28%アップ。

多くの企業が音声広告に取り組む理由が一目でわかるデータとなっています。

参照:デジタル音声広告って何?Spotifyの音声広告「きほんのき」

Nielsen Media Labの2017年の調査結果

Spotifyは10代から20代向けのサブスクリプションサービスと受け止められがちでしたが、最近30代から40代が青春時代に影響を受けたアーティストがサブスクリプションでの配信を解禁し、一気に聴取年齢層の幅が広がり、多くのユーザーを獲得しました。

Spotifyはプレイリストも日常のシーンに分けて作られているものが多く、(ヨガ、在宅勤務、勉強など)趣味に紐づけたターゲティングが可能になっています。

例えばキャンプ好きな人が、キャンプ音楽のプレイリストを聞いたとします。そこにキャンプ道具やキャンプ飯のレシピサイト紹介が流れれば、興味を惹き検索するでしょう。

音声での広告は時間も短く、邪魔に感じることがほとんどありません。

路線バスの車内で流れる、停留所の近くにあるお店や医院のアナウンスがいい例です。ワンクリック詐欺やフィッシング詐欺などクリックでトラブルの起きることが多かった広告への警戒心と、時節柄あまり人と会話をすることがなくなった状況が相まって音声広告がより許容されるようになったと考えられます。

ASMRのような、聴覚に訴えかける手法が主流になり始めたことも影響しています。

radikoでファーストフードのハンバーガーに関する音声広告を流したとして、それを聞いたリモートワーク中の人が食べたいと感じればUber Eatsなどで注文するでしょうし、下校途中の学生が電車内で同様の音声広告を聞いて食べたいと感じれば、降りた駅で店舗に行きテイクアウトで購入するなど、即効性も期待できます。

一方スマートフォンでウェブサイト閲覧中に、間違えてタップしてしまうとマナーモードにもかかわらず音が出るバナー広告など、音声広告はひどいと誤認されてしまうケースもあるので、広告の洗練化も課題であると言えます。

音声広告の事例

音声広告の事例としてよく取り上げられるのは、Spotifyとワーナー・ブラザーズが協力した、Spotify内のデジタル音声広告です。

藤原竜也さん主演の映画『Diner ダイナー』の宣伝では、藤原竜也さんの絶叫をバイノーラル録音し、その場で叫んでいるかのような臨場感を伝える音声広告が、話題を呼びました。

この音声広告の特徴は、バナーを見ていない「ながら聴き」を前提として作られ、完全に音声に寄った広告として企画されているところです。

このように『短い音声で聞き手の耳に残る広告』というところでは日本のCM音楽、コンビニの入店音などに似たところがあり、今後音声広告は日本で様々な展開が期待できそうです。

今後広がる活用方法

スマートスピーカーやAIがより発展していくと考えられています。それにより音声広告は一方的な情報発信ではなく、ユーザーが必要な情報をAIに伝えると自分に合った内容の広告が流れてくる未来が近くまで来ています。このように音声広告は今後も活用方法が広がりを見せると予想できます。

現段階での音声広告における活用方法は、ニーズがマッチするユーザーにターゲットを絞り、能動的にアクセスを促すことがメインです。低コストでデジタルトランスフォーメーションができると、多くの企業が音声広告に興味を持ち始めています。

有名な声優や俳優を起用した音声広告は、他社と差別化を図るために便利で、新たな機会の創出につながります。また視覚障害を持っている方にも音声で情報を伝えられるため、視覚型の広告ではなかなか取り込めなかった層にアプローチでき、広告のバリアフリー化が狙えます。

位置情報を活用すればカーナビやスマートフォンの位置情報から、その人に合った飲食店、衣料品店、レジャー施設などを提示することも可能になってきます。

現在音声広告はまだまだ成長途中の分野ですが、そのうち広告の主力となるでしょう。
まだ大きなムーヴメントが起きていない今のうちに、音声広告の出稿を社内、各部門で検討してみてはいかがでしょうか。