2015年にリリースされ、ユーザーの検索体験に大きく貢献している「RankBrain(ランクブレイン)」
今日はこのランクブレインについて、どういうものか、またRankBrain を意識したSEO対策は必要かといった点について、紹介したいと思います。
RankBrain(ランクブレイン)とは
「意味は出ているんだけど、言葉が出てこない」
そんな経験ありますよね。例えば、ふと「内閣総理大臣」という言葉が出てこなかったとします。そんな時、「内閣の代表なんだけどな~」と思って「内閣 代表」と検索してみましょう。
こちらがGoogleで「内閣 代表」と検索した結果です。
ご覧の通り、「内閣の代表者である“内閣総理大臣”」が知りたいという意図をくみ取ってくれています。
一方、こちらはbingで「内閣 代表」と検索した結果です。
内閣の代表である、内閣総理大臣について知りたいのに、「内閣」そのものについてのページがヒットしており、検索意図を満たせていません。
これがRankBrainです。Googleは「内閣 代表」という検索クエリに対して、「内閣の代表である内閣総理大臣」についてのページを表示してくれていますが、RankBrainのないbingは「内閣、代表という言葉が含まれる」ページを表示しています。
このように、ユーザーの検索意図をくみ取るには、「内閣の代表は内閣総理大臣である」または「内閣総理大臣は内閣の代表である」といった知識が必要です。その上で、「内閣 代表」という検索クエリには「内閣の代表の名前を知りたい」という意図があるから、「内閣」についての説明ではなく、「内閣総理大臣」に関するページを表示しようという判断が必要です。
RankBrainはこうした判断や知識の理解を自動で行う機械学習システムです。
最近はbingもRankBrainのような機能を導入しているようですが、まだまだGoogleの精度には及びません。
例えば、「トランプの前」という検索クエリ。これはアメリカ大統領ドナルド・トランプの前の大統領が誰だったのかを知りたい検索クエリだと考えられます。
こちらがGoogleの検索結果。
歴代アメリカ合衆国の大統領一覧というページがヒットして、ドナルド・トランプの前の大統領バラク・オバマの情報にすぐアクセスできます。
そしてこちらがbingで「トランプの前」と検索した結果です。
ご覧の通り、「トランプ」「前」というキーワードだけを拾って、「トランプの前」という意味、検索意図をくみ取った検索結果にはなっていません。
このように、検索クエリから意図や意味をくみ取るアルゴリズムがRankBrainです。
RankBrainが必要になった背景
RankBrainは意図、意味をくみ取るアルゴリズムです。逆に、意味や意図が明確な検索クエリには必要ありません。「内閣総理大臣」や「歴代アメリカ大統領」「バラク・オバマ」と検索すれば、機械学習で深読みしなくても間違いなく最適な検索結果を表示することができます。
しかし、人々が検索に使うワードは多様化しています。
Googleで行われる検索回数は2016年で年間2兆回、一日5,6億回にもなります。このデータは結構あいまいで、サードパーティーのいろんなデータを組み合わせており、実際にはそれ以上といわれています。
別の根拠から検索数を類推すると、経済産業省が発表した世界のスマホ出荷台数が2017年時点で40億台、PCもなんだかんだ同じくらいの数があると考えれば、検索を行うデバイスの数は80億台。1台につき、平均5回検索したとすると、一日の検索回数は800億回。年間の検索回数は30兆回にも達することになります。
そしてそのうち20~25%はGoogleで初めて検索されるユニークなクエリというデータもあるため、年間7兆ものワードが新しく誕生していることになります。
これだけ膨大な検索クエリに対して、「クエリとコンテンツが一致しているか」という観点でランキング付けしても、正しくない可能性が非常に高いのです。
前のアメリカ大統領を知りたいとき、「トランプの前」というひねくれた用語で検索する人はあまりいないように感じますが、こうしたデータをもとにすると、もっとおかしな用語で前のアメリカ大統領を調べている人がいても不思議ではありません。
実際、Grabの検索クエリを見ていると下記のようなクエリがありました。
ユーザーがクリックできる画像がオンライン広告に含まれていることがよくありますが、そうした広告は何と呼ばれますか。
おそらくこの検索クエリは、Web広告・マーケティング関連資格の問題文か何かだと思います。Grabでそうした問題集を紹介したことはないのですが、Grabで「ディスプレイ広告」について紹介した記事が2位に掲載されていました。1位はWeb広告に関する問題集を紹介するページです。
この問題の答えはおそらくディスプレイ広告です。Googleの検索エンジンRankBrainはそこまで読み取って検索結果に反映しているようです。
もちろん、bingで検索したとき、ディスプレイ広告についての記事はヒットしませんでした。代わりに、「郵便局広告」「テレビ広告」「オンライン広告」など、「広告」というワードに一致しているだけの検索クエリがヒットします。
RankBrainは検索クエリではなく、意味と意図を読み取ることで、適切な検索結果を表示しています。RankBrainが必要になった背景は、ユーザーの検索クエリの多様化でしょう。口語調の検索クエリや、スマートスピーカーによる言葉での検索が増えてきたことにあります。
ちなみに、「トランプの前」をさらに口語調にして「トランプの前の大統領って誰だっけ?」と検索しても、Googleでは歴代アメリカ大統領の一覧が1位にヒットします。
一方、bingで検索すると単純にトランプ氏に関する記事がヒットします。お世辞にも検索意図をくみ取った検索結果ではありません。
Webサイト運営者のRankBrain対応
今日はRankBrainについて紹介しましたが、大切なことはWebサイト運営者が自社サイトの検索流入を増やすうえで、どのように対応するかです。
RankBrainに対して、Webサイト運営者が何か対応することはありません。あくまでも検索意図、意味をくみ取って検索結果に反映する方法です。
つまり、「Webマーケティング 大阪」というキーワードで上位化を狙っていた場合、「インターネットマーケティング 関西の大都市」でも表示される可能性が出たということです。だからといって、「インターネットマーケティング 関西の大都市」というニッチすぎるキーワードに対応したページを作成する必要はありません。インターネットマーケティングはWebマーケティングとほとんど同義ですし、関西の大都市といえば大阪です。今までどおり「Webマーケティング 大阪」にだけ対応すればいいということです。
むしろ、RankBrainの登場によって、細かな検索クエリに対応する必要がなくなったといえます。
「トランプの前」でも「クリントンの次」でもRankBrainが正しく意図をくみ取れば同じ検索結果が表示されます。
「日本 首都 旅行」という検索クエリに対応する必要はなく、「東京 旅行」で価値のあるページを作れば、ヒットします。
この記事は「RankBrain」についての記事ですが、検索クエリは「RankBrain」と「ランクブレイン」に大きくわかれるでしょう。従来であれば、両方でヒットさせるため繰り返し「RankBrain(ランクブレイン)」と書いていましたが、そんな無駄なことをしなくても大丈夫になりました。
RankBrainが話題になる機会はまだまだありますが、Webサイト運営者が意識することはほとんどなく、むしろこれまで意識していた表記ゆれやあいまいな検索への対応をやめ、ユーザーの検索意図を満たすページを作ればいいだけでいいのです。