2020年6月18日、Youtube広告に新フォーマットがリリースされました。まだ一部の機能はベータ版ですが、YouTube上でECサイトを展開したり、YouTube上で問い合わせを獲得したりすることができます。今回はこの新フォーマットの活用イメージを見ていきましょう。
YouTube広告上で展開される新フォーマット
コロナ禍において、デジタルシフトが大きく加速しました。中でもわかりやすいのは動画の閲覧時間です。
ニールセンデジタルが2020年6月に行った調査によると、2020年3月から4月の1人あたりの月間平均動画サービス利用時間は、同年1月から2月の月平均と比べて約1時間増加したそうです。若年層ではより顕著で、月平均に2時間40分以上も増加していました。
コロナ禍で動画サービスの利用時間が急激に増えたことにより、空いた時間にスマートフォンで動画を見る習慣があるということがわかりました。
当然、動画によるビジネスチャンスも広がっています。特に店舗ビジネスはコロナ禍で大きな影響を受けました。今では多くの店舗がオンラインでの顧客獲得に注力しています。
今回、紹介する機能は2015年にリリースされた「TrueView for Shopping」のアップデート版と、新たにリリースされた「リードフォーム」です。どちらもYouTube上で顧客のアクションを促すもので、店舗ビジネスでの利用を想定されています。
今回追加されたフォーマットは、Web広告全体を見ると珍しいものではありません。Facebookのギャラリー広告、リード獲得広告のように、似た機能を持つ広告手法もあります。
Web広告全体の流れとして、「ユーザー体験」を非常に重視し、可能な限りそのプラットフォーム内で完結するようになっています。本来、広告をタップして別サイトに移動することはプラットフォームにとって嬉しいことではありません。移動先での体験が悪ければプラットフォームのイメージも悪くなりますし、せっかく自社のプラットフォームを使っているユーザーが外部に流れていってしまうからです。
ユーザー体験を非常に重視するInstagramでは、広告をタップした際、別ブラウザに移動するのではなくInstagram上で展開されます。Instagramショッピングでは、外部に移動することなくInstagram上で買い物をして、ユーザーはすぐにInstagramに戻ってくることができます。
Facebookのギャラリー広告、リード獲得広告も、Facebookから外部に移動することなくアクションを完結させるためのものです。
これから紹介する「TrueView for Shopping」のアップデート版と、「リードフォーム」も、YouTubeから移動せずにアクションを完結することができます。しかし、FacebookやInstagramの代わりではありません。「動画」という圧倒的に強いコンテンツを持つYouTubeならではの活用が期待できます。
YouTube上でECサイトを展開
今回発表された新フォーマットの1つ目は、YouTube上でECサイトを展開できるものです。画像にあるように、広告動画の下にECサイトのように様々な商品を並べることができます。
新しい機能のようですが、実は「TrueView for Shopping」という機能のアップデート版という立ち位置です。Google マーチャントセンターアカウントのデータフィードとGoogle広告を連携して配信します。
「TrueView for Shopping」がリリースされたときも、ベータテストで広告収益が3倍になるなど話題になりました。今回の新フォーマットも、American Eagleのベータテストで費用対効果は前年より25%アップ、従来の広告の9倍のコンバージョンを達成と発表されています。
最大の魅力は動画を見ながら商品を比較できる点です。これまでは動画で興味を惹かれたらリンク先のECサイトに移動して商品を比較していました。YoutubeのEC広告では動画でメリットを伝えながら実際の商品を比較し、そのまま購買行動に移ることができます。
Facebookのギャラリー広告も似たような機能ですが、YouTubeの圧倒的なリーチ力、動画の訴求力があれば新たな販売チャネルとしてより大きな効果が期待できます。
YouTube上で入力完了「リードフォーム」
そしてもう一つが「リードフォーム」という広告表示オプションです。「リードフォーム」は2019年12月ごろから検索キャンペーンでベータ版が利用できましたが、YouTube動画広告でも利用できるようになりました。YouTube動画広告のリードフォームは現在ベータ版ですが、今後数ヶ月かけ、ほとんどの広告主に適応される予定です。
こちらもベータテストではリード獲得コストが84%減、リード獲得数13倍と大きな結果につながっています。ベータテストに参加したジープは「すべての広告プラットフォームの中で最も効率的なコストで最も多くのリードを生み出しました」とコメントしています。
画像にあるように、広告を開くとアンケートフォームのような項目が開き、ユーザーはそのまま送信することができます。
動画を見ながら行動できるという点では「TrueView for Shopping」と同様ですが、「リードフォーム」のほうがより多くの企業が有効に活用できます。YouTubeでニーズを喚起し、そのままの流れでリードを獲得する(=顧客にフォームを送信してもらう)ことができるからです。
多くの企業にとって、リード獲得は企業の成長と持続に欠かせない活動です。「リードフォーム」ではターゲティングに「より高いインテント」と「より多くのボリューム」というオプションが用意されています。購買意向の高いユーザーを見込み顧客に転換することもできれば、潜在層に向けてアンケート的な役割で配信することもできるのです。
ユーザーはYouTubeにログインしていれば、リードフォームを開いた時点で氏名・メールアドレス・電話番号といった情報が予め入力されています。ユーザーは最小限の手間でフォームを送信することができるため、ユーザーにとっても利便性が高いものになるでしょう。
ただし注意事項として、リードフォームを利用するには月間広告費が50,000米ドル以上使用しているアカウントである必要があります。まだベータ版なので今後どうなるかはわかりませんが、現状では中小企業が気軽に使えるものではないかもしれません。
まとめ:YouTubeで顧客獲得
今回、YouTube動画広告の新フォーマットを2つ紹介しました。この2つから言えることは、YouTubeをブランディング・認知獲得のための媒体と考えるのは、もう不十分だということです。ユーザーは動画を見て購買や利用を検討することが当たり前になっています。コロナ禍でその傾向はさらに加速し、多くの事業者がオンラインで顧客と関係を築く方法を模索しています。それに合わせてGoogleもYouTube動画広告の機能をアップデートしているのです。
このような新フォーマットによって、YouTube動画広告に使う動画クリエイティブの良し悪しも大きく変わります。現在はできるだけ短い動画で最小限のメッセージをしっかり伝えたほうが良いと言われています。しかし、広告をクリックして動画を再生したまま他の商品を検討したり、フォームを入力したりするならそれすらも変わってくるでしょう。ユーザーが商品を検討している間は商品に関する動画が流れていたほうがわかりやすいため、比較的長く・具体的な動画のほうが効果的になっていくかもしれません。
「リードフォーム」はまだ最低出稿金額のルールがあり、ベータ版なので一部の広告主にしか使えませんが、「TrueView for Shopping」はGoogleマーチャントセンターとGoogle広告を連携すれば利用できます。特に小売業の方は、新しいWebでの販売経路獲得のため、試してみてはいかがでしょうか。