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2022年2月24日、電通が日本の総広告費と媒体別広告費を発表しました。広告市場全体のトレンドをつかみ、今後の戦略を考える上で、重要な資料です。
4月に入り、マーケティング担当者は、新たな戦略に基づいて日々の業務に取り組んでいることでしょう。日常のタスクに追われ始めると、ついつい「木を見て森を見ず」という状況になってしまいがちです。時には広告市場全体を俯瞰し、広い視野から現在の活動を振り返ることが大切です。
そこで今回は電通が発表した「2021年 日本の広告費」から広告市場の変化を読み取り、2022年度に注目すべき広告媒体やトレンドについて考えていきます。ぜひ、マーケティング戦略の見直しや改善の参考にしてください。
2021年 日本の広告費
上のグラフは電通が発表した日本の総広告費の推移です。2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、大きく落ち込みました。
2021年も主要都市では1年の大半が緊急事態宣言、まん延防止等重点措置期間の中にありました。経済がパンデミック前に戻ったとは言えない状況でしたが、広告費はかなり回復しています。
その理由は、多くの企業が「コロナ禍でのマーケティング戦略」にシフトし、インターネット広告の活用に取り組んだのが要因です。
こちらは日本の広告費をマスコミ4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)とインターネット広告に分けた推移グラフです。
マスコミ四媒体の広告費はパンデミック以前から減少傾向でした。特に2007〜2008年のリーマンショックの頃に大きく減少しています。その後は横ばいで推移してきましたが、2020年にはコロナ禍の影響で前年比86.4%と大きく減少しました。
一方、インターネット広告費は年々増え続け、2020年は前年比105.9%、2021年は121.4%になっています。
また、上のグラフには現れていませんが、プロモーションメディア広告費は大きく落ち込みました。屋外・交通看板や折込チラシ、ダイレクトメールなどがこれに該当します。2020年は前年比75.4%、2021年は97.9%に減少しました。
マス媒体やプロモーションメディアからインターネット広告へという広告業界の大きなトレンドがこの1、2年で大きく加速しています。
復活するマス媒体
しかし、テレビだけはマス媒体の中でも価値が復活してきています。
上のグラフの通り、テレビの視聴率は長期的に低下トレンドです。しかし、コロナ禍で「おうち時間」が増えたことで、テレビ広告へのニーズは復調の兆しを見せています。
媒体別広告費を見ると、 2021年のテレビメディアは前年比111.1%とマスコミ4媒体の中で最も大きく成長しています。
また、TVerやTELASAなどテレビ番組をインターネットで閲覧できるサービスも浸透してきました。今後は従来のテレビCMとは異なり、インターネット広告と融合した形で広告媒体として注目されていくでしょう。
インターネット広告費の中には「うちマス四媒体由来のデジタル広告費」という項目があります。インターネット広告媒体費の5%程度なので決して大きくはありませんが、2020年には前年比112.3%、2021年には132.1%とインターネット広告全体よりも大きく成長しています。その中でもテレビメディアデジタルは前年比146.8%まで伸びています。
インターネット広告の成長も目覚ましいですが、その中でも特にマス媒体由来のデジタル広告が伸びている状況です。
従来、マス広告は多額の広告費を投じられる大企業向けのものでしたが、インターネット広告との連携で中小企業にもチャンスが生まれます。マーケティング担当者はこのトレンドを見逃さないでください。
インターネット広告の多様化
以下の資料は、媒体別の広告費内訳を円グラフで表したものです。2018年〜2021年の4年間でどのような動きがあったのか見ていきましょう。
2020年からはインターネット広告費の内訳が算出されるようになりました。「インターネット広告」と一言では括れなくなるほど多様化してきたと考えられます。マーケティング担当者は詳細な分類とそれぞれの特長を掴む必要があるでしょう。
電通は「2021年日本の広告費」の中で以下の見解を示しています。
緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が多くの地域で長期間適用されたことによる巣ごもり・在宅需要の継続や、東京オリンピック・パラリンピックの開催などにより、動画配信サービスの利用者が増加し、動画広告市場は大きく成長した
引用:2021年日本の広告費
では、実際に動画広告市場がどのように成長しているのかを見てみましょう。
上記のサイバーエージェントによる調査結果を見ると、2021年の動画広告市場は前年比で142.3%に増加しています。さらに今後数年は2桁成長が続き、2025年には1兆円を超えると予測しています。
動画広告のトレンドはコロナ禍による一時的なものではなく、通信やプラットフォームの進化による長期的なトレンドだと考えられます。
業種別広告費
次に業種別のデータを見てみましょう。マス4媒体のみ集計されていますが、業種によって全く違った傾向が見えます。
下記の4業種は2年連続で広告費が低下しています。
- エネルギー・素材・機械
- 食品
- ファッション・アクセサリー
- 自動車・関連品
このうち「食品」と「ファッション・アクセサリー」に関してはコロナ禍によるライフスタイルの変化に影響を受けていると考えられます。また、「エネルギー・素材・機会」と「自動車・関連品」については、世界的な半導体不足によって生産が遅れたため、広告費も抑制されたと考えられます。
一方で「飲料・嗜好品」「精密機器・事務用品」「情報・通信」は大きく伸びています。情報・通信は通信料金の大幅な改訂が行われ、各社が新ブランドをリリースしたことが大きな要因でしょう。飲料・嗜好品の伸びには経済活動再開の影響が表れています。
他に伸びている業種を見ると「家庭用品」や「趣味・スポーツ用品」「家電・AV機器」などがコロナ禍の巣ごもり需要で大きく伸びています。
こうしたトレンドが2022年も続くのか、本格的なWithコロナに移行するのか、マーケティング担当者は自社の業種の動向に注目する必要がありそうです。
2022年度に注目すべき広告トレンド
ここまで電通が発表したデータとそれを補完するいくつかのデータを紹介してきました。これらのデータを基に考えられる2022年以降、マーケティング担当者が注目すべきことをお伝えします。
インターネットテレビ広告
TVerやTELASAなどテレビ番組をインターネットで閲覧できるサービスも増えていますし、TVerはすでに年齢や性別などでターゲティング可能な広告サービスを提供しています。
インターネット上で提供されるサービスなので、将来的には興味関心や行動データに基づいたより詳細なターゲティングが可能になるかもしれません。
ここには大きな可能性があります。YouTubeなどの動画メディアではすでに細かなターゲティング、費用対効果にコミットした広告運用ができます。しかし、YouTubeは個々人が自由に動画をアップロードできるため、動画の品質が考慮されていません。陰謀論やフェイクニュース、道徳的ではないコンテンツに自社の広告が表示されてしまう可能性もあります。
一方、テレビ番組はある程度の品質が担保されているため、ブランドの毀損リスクは低くなります。TVerのようにインターネットテレビ広告を提供するサービスは、ブランディングと費用対効果を両立させられます。
さらに小規模予算での出稿も可能なため、中小企業でも参入しやすい非常に魅力的な媒体になるかもしれません。
もちろんインターネット×テレビ広告だけでなく、さまざまな主要媒体がインターネットと融合していくと考えられます。すでにラジオもアプリ化されていますし、雑誌や書籍、新聞もオンラインで提供されています。
これらはいずれも活用方法によってはマスメディアとインターネットメディアのいいとこ取りができる広告媒体に成長する可能性があるので、マーケティング担当者はぜひアンテナを張っておきましょう。
インターネット広告からマルチメディア戦略へ
もう一つの大きなトレンドは、「企業のマーケティング戦略=Webマーケティング戦略を軸にしたマルチメディア戦略になる」ということです。
さまざまなデータが示す通り、インターネット広告はすでにメインの広告手法となり、さらに伸びていくと考えられます。そして、その中身はSNS広告、検索広告、ディスプレイ広告、動画広告、ネイティブ広告など多様化しています。マスメディアでもインターネットとの融合が進んでいます。
企業のマーケティング戦略はインターネット広告をはじめとするWebマーケティングを軸にした総合的なプランニングが必要になっています。
これまではインターネット広告に参入するだけで一定の効果が出たかもしれません。しかし、インターネット広告が当たり前になり、手法も多様化する中、ただ出稿するだけでは効果を得ることは難しくなっていくでしょう。
HubSpotのようなマーケティングプラットフォームを導入し、インターネット広告を軸にさまざまな手法をミックスするマルチメディア戦略の重要性がさらに増していくと考えられます。
まとめ
今回は電通が公表した「2021年 日本の広告費」を中心にさまざまなデータを紹介しました。インターネット広告が伸び、その中でも特にマス媒体由来のものが大きく増加しているというのは意外な事実だったかもしれません。
同じマーケティング戦略が何年も効果を発揮し続けるということは滅多にありません。広告業界やユーザー動向からトレンドを読み取り、自社に適切な戦略を取り入れることが重要です。
4月から新しいマーケティング戦略をスタートさせる企業も、そうでない企業も、定期的に広告業界の大きなトレンドを知り、マーケティング戦略の見直しを図ってください。
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