Web広告の運用を担当されている皆さんは、Google広告の最適化スコアを活用されているでしょうか。
Google広告の最適化スコアは、そのアカウントの現在の設定が、Googleが推奨する設定と比較して、どれぐらい最適化されているかを示すスコアです。あくまでGoogleが推奨する設定との比較なので、絶対に高くなければいけないというものではありませんが、一般的には高い方が良いものとされています。

その最適化スコアですが、今までは検索キャンペーンとショッピングキャンペーンのみが対象とされていたのが、2019年12月のアップデートにより、ディスプレイキャンペーンもスコアリングの対象となりました。

そこで今回、Googleのディスプレイ広告(GDN)に注目し、GDNの最適化スコアを改善し、運用改善を最短行う方法をご紹介していきます。
インハウスでWeb広告を運用している方には特に活用できる内容になっていますので、ぜひ参考にしていってください。

Googleディスプレイ広告を最短で最適化する方法

Googleディスプレイ広告を最短で最適化する方法
広告の運用改善は、基本的に「Aをすれば○○が改善する」「Bをすれば××が向上する」のように単純なものではありません。データを深く読み解き、仮説を立て、適切に実施し、効果を計測する。仮説が間違うこともあれば、実施内容が適切ではないこともあります。思っていたのとまったく違う成果になることも少なくありません。
そんな中で、一つ一つ検証と改善を重ねることが運用改善の基本です。

とはいえ、いくつかセオリー的な方法があることも確かです。今回はGoogleのディスプレイ広告を出稿してまもない場合、まずはこれから紹介する部分に着目して、運用改善に取り組んでみてください。

①入札戦略の最適化

①入札戦略の最適化
Googleディスプレイ広告を最短で最適化する方法の1つ目は、入札戦略の最適化です。Google広告では、入札戦略は自動入札を使うのが推奨とされています。特に、スマート自動入札と呼ばれる、目標コンバージョン単価、コンバージョン数の最大化、目標費用対効果の3つの入札戦略が最も強く推奨されています。
しかし、最初からこれらのスマート自動入札を使うことが必ずしも正解ではありません。
スマート自動入札が本来のパフォーマンスを発揮するためには、過去30日間にそのキャンペーンに30件~50件のコンバージョンが蓄積されている必要があります。
より理想を言えば、過去30日間に100件以上のコンバージョンデータが欲しいところです。そのため、十分なコンバージョン数が蓄積されるまでは、クリック数の最大化や、個別クリック単価、あるいは拡張クリック単価による手動入札で運用するのもひとつの手です。

十分なコンバージョン数が蓄積されていない場合、Googleは似たようなドメインのデータを借りてきて最適化を図りますので、コンバージョン数が足りなくても最適化が働いてくれる場合もあります。
しかし、コンバージョン数が足りないとどうしても自動入札の挙動が不安定になりやすいことも事実。最初は手動入札でコントロールして、十分なコンバージョン数を蓄積させた上でスマート自動入札に切り替えることで、スムーズに最適化を働かせることができます。

どうしても十分なコンバージョン数が集まらないという場合は、マイクロコンバージョンを利用しましょう。マイクロコンバージョンは、コンバージョンの一歩手前のポイントのことで、例えば求人応募がコンバージョンだとしたら、フォーム到達をマイクロコンバージョンとして設定します。
マイクロコンバージョンは通常のコンバージョンよりもハードルが下がるので、コンバージョンデータが蓄積しやすいですよね。このマイクロコンバージョンを活用して、最適化に必要なデータ量を確保しましょう。

②ターゲティングの最適化

②ターゲティングの最適化
Googleディスプレイ広告を最短で最適化する方法の2つ目は、ターゲティングの最適化です。
Google広告では、性別、エリア、興味関心、デバイスなどの様々なターゲティングができますが、これらはできるだけ細かく設定しましょう。このとき、ターゲティングは絞込みすぎず、少しだけ緩めに設定するのがコツです。
例えば、30代後半の女性がメインターゲットだとしたら、35~44歳がターゲットとして設定できることになりますが、実際には、25歳~34歳もターゲットとして設定しておいたほうがいいでしょう。
これは、機会損失を逃さないという意味でもありますし、機械学習アルゴリズムに学習の機会を担保するという意味でもあります。
35~44歳だけをターゲットに配信していたら、その年齢層だけを学習することになりますが、25~34歳にも同時に配信しておけば、25~34歳と35~44歳の反応の違いを学習させることができるようになります。
そのうち機械学習の最適化が進んでいき、30代半ばから後半にかけての年代に集中的に広告が配信されるようになっていくはずです。

年齢のようなデモグラフィックターゲティングを利用する場合に悩むポイントが「不明」という層です。Googleのターゲティングは、ユーザーの行動履歴等をもとにした類推ターゲティングです。そのため、精度は100%ではないですし、年齢や性別が類推できないユーザーも存在します。当然、その中にもターゲットとなりうるユーザーは存在しているはずです。
「不明」を含めるかどうかは予算規模や目的によって検討しましょう。目的が費用対効果の最適化であれば、不要なターゲットに配信される恐れがある「不明」は省いた方が良いでしょう。ただし、この場合「不明」に含まれるターゲット層に対して機会損失が生じています。コンバージョン数の最大化が目標であれば、「不明」も含めて配信したほうが良いかもしれません。

また、興味関心や購買意向に関するターゲティングでも、確度の高そうな一部のターゲティングに絞って設定している方が多いと思います。
しかしこれは、最適化の観点から言うとそのやり方はあまり良いとは言えません。商材に少しでも関係のありそうな興味関心のカテゴリは片っ端からすべてターゲットとして登録しておいた方が良い場合もあります。
幅広いターゲットに配信することで、どのカテゴリのユーザーの反応が良いかが後々データとして取り出せるようになります。そして、それらのデータは全て、機械学習による最適化に利用されます。

機械学習による最適化に利用できるデータは、できる限りすべて用意してやるのが最適化を最短で進めるための鉄則です。
面倒、遠回り、予算が無駄になると感じるかもしれませんが、後々の運用改善のための投資と考えて、データを揃えるようにしてください。

③広告クリエイティブの最適化

③広告クリエイティブの最適化
Googleディスプレイ広告を最短で最適化する方法の3つ目は、広告クリエイティブの最適化です。Googleディスプレイ広告において、クリエイティブの作り方は大きく2種類の方法があります。

1つ目は、固定サイズのバナー広告。横300×縦250のレクタングルバナーと呼ばれるサイズが代表例ですね。
固定サイズのバナー広告は、制作したクリエイティブがそのままの形でユーザーに表示されるため、広告主にとってコントロールしやすいメリットがあります。
一方で、広告枠とバナーのサイズが一致しないと広告が表示できなかったり、クリエイティブのテストを行うためにはその都度クリエイティブを作り直さないといけなかったりと非効率な部分があるのがデメリットです。

2つ目は、レスポンシブディスプレイ広告。横1200×縦628の長方形のバナーと、横1080×縦1080の正方形のバナー、そしてテキストの説明文を組み合わせたアセットと呼ばれるクリエイティブを入稿する形式のディスプレイ広告です。
こちらは、固定サイズのバナー広告と違い、複数のバナーとテキストがその都度組み合わされて表示されるため、広告主のコントロールが効きづらい面があります。
しかし逆に言えば、広告が掲載される機会があるたびにアセットが最適化されて表示されるため、クリエイティブのテストのために毎回新しいバナーを作り直す必要がなく、効率的にテストを行うことができます。

レスポンシブディスプレイ広告

また、「レスポンシブ」の名の通り、広告枠のサイズに合わせて形を変えて表示されるため、広告枠とバナーのサイズの不一致による表示機会の損失も防ぐことができます。
この点でも、レスポンシブディスプレイ広告は固定サイズのバナー広告よりも効率的な配信が可能なので、最短で最適化を目指すのであれば、レスポンシブディスプレイ広告を利用すべきと言えます。

ただし、レスポンシブディスプレイ広告を利用する場合も、クリエイティブのテストのためのPDCAサイクルは必ず回さなければいけません。
レスポンシブディスプレイ広告では、入稿したアセット単位でユーザーの反応の良さが「最良」「良」「低」という形で評価がつきます。
この評価の中身はGoogleの判断なので、具体的な基準は明かされていないのですが、評価が「低」のものは外して新しいアセットに差し替えるというのが基本的な戦略になります。

また、ディスプレイ広告の基本として、同じバナーを長期間配信し続けていると、ユーザーが飽きてきてクリック率が悪くなってくるものですから、評価が「良」「最良」だからといって安心してはいけません。
同じアセットで放置し続けていると、以前は評価が「良」だったものが、「低」に落ちているということも十分あり得ます。
レスポンシブディスプレイ広告も、通常のディスプレイ広告と同じく、定期的にクリエイティブの入れ替えを行っていくことが重要です。

④リマーケティングによる最適化

Googleディスプレイ広告を最短で最適化する方法の4つ目は、リマーケティングによる最適化です。
リマーケティング配信は、ディスプレイ広告と最も相性の良い配信方法です。ディスプレイ広告の配信を行う際には、オーディエンスリストを作成し、リマーケティング配信を行うことも忘れず行いましょう。

また、その際にねらい目となるのは、検討層のクロージングです。ディスプレイ広告のリマーケティングでは、消費者行動のファネルで言うところの、比較・検討段階にあたるユーザーを行動段階に促すようにクロージングを行います。
具体的にはどのように広告配信を行っていくかと言いますと、Web上で比較・検討段階にいるユーザーとして最もわかりやすいのは、商品カートやエントリーフォームに到達した後離脱したユーザーです。
こういったユーザーは、あと一歩のところで行動段階まで来ていたのに、何らかの理由、他社製品との比較などのために離脱してしまったユーザーです。
ディスプレイ広告のリマーケティングでは、このような、あと一歩で行動段階まで来ていたユーザーを狙うところから始めましょう。

そのためには、まずカートやフォームのURLを指定したオーディエンスリストを作成し、そのURLに到達したユーザーだけのリストをターゲットとした広告グループを作成しましょう。
この広告グループが、リマーケティングの対象としては最も確度が高く、CVRが高いユーザー群となります。
CVRが高いということは、コンバージョンデータが蓄積しやすく、機械学習による最適化が進みやすいということでもあります。
そのため、ディスプレイ広告のリマーケティングの第一歩として、こういった比較検討層のクロージングから始めることが効果的なのです。

しかし、比較検討層のクロージングといっても、カートやフォームの到達といった、既に行動段階の直前まで来ているユーザーだけを狙っていては、コンバージョン数の拡大はあまり見込めません。
ある程度これらのユーザーのコンバージョンが獲得できたら、カートやフォームの到達ユーザーだけでなく、Webサイト全体の訪問ユーザーを対象としたリマーケティングに対象範囲を広げてみましょう。
当然、カートやフォームの到達ユーザーと比べると行動段階からは遠い位置にいるユーザー群を狙うことになりますので、コンバージョン率は落ちますが、コンバージョン数の拡大は見込めるはずです。

また、コンバージョン数の拡大を狙いながらも、一定の確度を保つ方法として、オーディエンスリストにユーザーを保有する期間を短くすることが効果的です。
Webサイトに訪問してから離脱したユーザーは、1日後、3日後、7日後……というように、日にちが経てば経つほど、そのWebサイトのことを忘れていきます。
逆に、離脱してから日が浅いユーザーであれば、そのWebサイトのことをまだ覚えているので、比較的コンバージョンの確度が高いままである可能性が高いです。
そのため、コンバージョン数は拡大していきたいけれども、コンバージョンの確度が落ちてコンバージョン単価が高騰するのは困る……という方は、オーディエンスリストの期間を7日や10日のように短く設定して、温度感の高いユーザーだけに広告を配信できるようにしてみてください。
ただし、Webサイトのトラフィック量と設定する期間によっては、オーディエンスリストのユーザー数が不足して、そもそも広告配信ができないということもあり得ますので、ご注意ください。

次に、リマーケティングにた機能ですが、全く違った意味を持つ「類似オーディエンス」を使って最適化する方法をご紹介します。類似オーディエンスとは、広告主が作成したオーディエンスリストを元に、Googleによって自動的に作成されるオーディエンスリストのひとつで、元になったオーディエンスリストから、機械学習によって「似ている」と判断されたユーザーを集めて作成されたオーディエンスリストです。
リマーケティングによって最適化を進めた後は、類似オーディエンスを活用した配信によってコンバージョン数をさらに拡大していく手法が効果的です。

この類似オーディエンスのリストは自動的に作成されるため、中身がどうなっているかは具体的には明かされていないのですが、Googleが収集した年齢・性別などの属性データや、興味関心、行動履歴などの様々なデータを複合的に判断して作成されています。

リマーケティング配信は、Webサイトに訪問したことのあるユーザーだけしか対象にすることができません。そのため、何かしらの他の方法でWebサイトへの集客を強化しない限り、配信ボリュームを増やすにも限界があります。

そこで、類似オーディエンスを活用するのです。類似オーディエンスは、既存のオーディエンスリストに「似ている」だけの全く異なるユーザーを集めたリストですから、Webサイトに訪問したことがあるかどうかは関係ありません。
しかし、過去の行動履歴や興味関心などのデータを照らし合わせて、Webサイトに訪問したユーザーと同じ行動を取る可能性が高いと判断されたユーザー群です。そのため、コンバージョンの確度としてはリマーケティングユーザーと同水準が期待できます。
また、類似オーディエンスのコンバージョンの確度をさらに高める方法として、「コンバージョンに至ったユーザー」のオーディエンスリストを事前に作成しておき、その類似オーディエンスをターゲットとして使用するのが効率的です。
この類似オーディエンスは、「コンバージョンに至ったユーザー」に「似ている」ユーザーを集めたリストですから、それだけコンバージョンの確度も高いことが期待されます。

リマーケティングは一度接触したユーザーをクロージングするための手法、類似オーディエンスは確度が高い新規顧客を獲得する方法です。
リマーケティング配信だけでは配信ボリュームが十分に確保できないと感じられるようになったら、類似オーディエンスを活用した配信によって、どんどん配信ボリュームを拡大していく戦略をとっていきましょう。

⑤広告成果の精査

Googleディスプレイ広告を最短で最適化する方法の5つ目は、広告成果の精査です。
4つ目まででご紹介した方法で、ほとんどGoogleディスプレイ広告の最適化は済んでいるはずですが、最適化の道に終わりはありません。
最適化スコアの項目を見ても、一時的には満点になっていることがあるかもしれませんが、定期的に新しい最適化案が現れることがあるはずです。
それは例えば、プレースメントの除外であったり、入札戦略の調整であったりでしょう。
そういった細かい調整を繰り返していくことが、広告成果を最大化するためのコツと言えます。
ここまでの4つの方法で一気に最適化を進めてきましたが、結局のところ、最後は泥臭く細かな作業を積み重ねていくしかないのです。
その泥臭く細かな作業を地道に繰り返せるかどうかが、運用担当者としての実力を分けるとも言えます。

Googleディスプレイ広告の最適化方法まとめ

今回は、Googleディスプレイ広告の最適化を最短で進める方法をテーマとして、大きく4つの方法と、最後に1つだけ小さいですが大切なことを解説してきました。
どれも基本的な内容ではありますが、おおよそどんな広告施策にも通用することばかりになっているはずです。
Googleディスプレイ広告を運用している方や、これから運用を始める方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。