「O2O」という言葉をご存じですか?
業界業種を問わずWebでの施策が広がる中、実店舗を持つビジネスについてはあまりWeb施策が重視されてきませんでした。しかし、「O2O」という考えを取り入れると、実店舗におけるWeb施策の価値に気づくと思います。
当記事では、
- O2Oについて知りたい
- O2Oを活用した成功事例や施策を知りたい
- O2Oマーケティングを始めたい
といった方向けに、O2Oに関する基本知識をまとめました。
インターネットを活用した店舗への集客を図りたい方はぜひ一読ください。
O2O(Online to Offline)とは?
O2O(オーツーオー)とは、「On-line to Off-line(オンライン トゥ オフライン)」の略称で、インターネット(on-line)から実店舗(off-line)への来客を促すマーケティング施策のことです。
近年は、スマートフォンの急速な普及やSNSの拡大により、商品などを購入する、お店に行く前にネットで検索することが当たり前になっています。そこで、店舗のサービスや商品に関するお得な情報や有益な情報をオンライン上で見つけてもらえれば、売り上げ拡大に大きく貢献してくれる可能性が高いです。
そのため、オンラインを活用したマーケティングは重要性を増しています。
O2Oの施策として、例えば次のようなものが挙げられます。
- 店舗で使えるクーポンをSNSやアプリなどで発行
- 実店舗の在庫状況をオンライン上で紹介
- 位置情報の活用(お店など特定の場所に行くとポイントがもらえる仕組みなど)
- 事前にオンラインで注文・決済まで完了させて、商品を店頭で受け取り(レジに並ぶ時間や、お店の中で商品を選ぶ時間の削減ができる)
- 来店目標のWeb広告
新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの消費者の行動意識に変化を与えました。以前は目的なく店舗をめぐるウィンドウショッピングも一般的でしたが、これからは事前に調べ、価値を感じたうえで、目的をもって来店することが一般的になるでしょう。
顧客のニーズに沿ってこれらの施策も効果的に行っていくことが、店舗の売り上げ拡大のために必要不可欠です。
O2Oのメリットは?
従来、オフラインでの施策しか行っていなかった店舗が、オンラインからオフラインへという「O2O」の考えを導入することにより得られるメリットは数多くあります。
新規獲得が見込める
O2Oは、Web上で幅広い地域に対して宣伝できるため、新規顧客の獲得が見込めます。チラシ配布や屋外広告を実施しても、対象のエリアや周辺に住んでいる人など限られた人にしかアプローチできません。
しかし、Web上で宣伝した場合、実店舗周辺に住んでいない人や、商品に興味のある潜在顧客など、より多くの人に商品やサービスについて知ってもらうきっかけとなるという点が大きなメリットです。
効果測定がしやすい
例えばクーポン配布施策の場合、実際に店舗で利用されたクーポンの数を数えるだけで、効果測定が簡単に出来ます。こうした方法であれば、Web施策に詳しくない店舗オーナーでも、効果を実感・把握しやすいというメリットがあります。
また、Webサイトへのアクセス数やSNS上でのリーチ数などの数字から、効果を確認することも出来ます。
即効性がある
チラシであれば、デザインして、印刷して、配布して、効果が出るまでにある程度の期間がかかります。一方、Web広告はやろうと思えば今日からでも出稿できます。期間限定で店舗で利用できるクーポンを配布する場合、Web広告などのO2O施策を使えば、その対象期間だけ集中的に広告配信し、より多くの顧客が店舗に訪問してくれることを期待できます。
このように、1つの施策に対して期間やボリュームなどが自由に設計できるため、即効性があることもメリットです。
ただし、クーポンや割引などで一時的に来店を促せたとしても、来店が一度きりになってしまう可能性があることも念頭に入れる必要があります。
クーポン券はあくまでも来店に繋げるための施策であり、さらに継続した来店に繋げていくためには、そこから更に次回の来店を促すアクションを行うことが必要です。
それも、チラシなどでは難しいでしょうが、O2Oなら簡単です。リマーケティングを使うこともできますし、クーポン利用時にメールアドレスやLINEの友達登録などを促しておけば、継続的なアプローチを行うことができます。
O2Oとオムニチャネルとの違いは?
O2Oと混同されてしまいがちな言葉として「オムニチャネル」があります。オムニチャネルとは、店舗やインターネット上など、どの接点からも同じように商品やサービスの購買体験を得られるようにするための考え方、または戦略のことです。
インターネット上の情報から店舗に「誘導」という形の施策であるO2Oに対して、オムニチャネルは、どの接点からも同じように商品やサービスを利用できるようにする、顧客体験のための戦略といえます。
オムニチャネルという大きな概念、戦略の中に、O2Oがあるとイメージすればわかりやすいかもしれません。
オムニチャネルについて、分かりやすく説明されている画像を見つけたので紹介します。もともと、顧客は店舗以外に選択肢がない「シングルチャネル」の状態でした。そこから、通販やECが登場し、「マルチチャネル」になります。しかし、それぞれは分断された状態です。例えば、食料品はスーパーという実店舗で、ちょっとした家具・家電はカタログ通販で、本やゲームはECで、といった具合です。
続いて、「クロスチャネル」という考え方が登場します。具体的に言うと、もともとスーパーでしか買えなかった食品も、保存方法や流通の発達でECでも普通に変えるようになりました。つまりユーザーは食料品を買うために、実店舗に行くか、ECを使うかを自由に選択できるようになったのです。このように顧客が選択することがクロスチャネルの特徴です。
そしてその後に登場したのが「オムニチャネル」という考え方です。これは言ってしまえば、顧客が、「好きな時に」「好きな場所で」「好きな商品」を購入し、「好きな時に」「好きな場所」で商品を受取り利用する、という考え方です。クロスチャネルと違い、オムニチャネルでは「選んでいる」という感覚がありません。当たり前のようにテレビで見た商品をスマホで検索し、仕事帰りに立ち寄るコンビニで受け取ったりします。
オムニチャネルは非常に包括的な概念なので、この辺にしておきましょう。オムニチャネルへの第一歩が、本日のテーマであるO2Oです。
O2Oを行うためのツール
それでは、続いてO2O施策の実現に必要なツールを見ていきましょう。O2Oの施策を行うためのツールとして、次のようなものがあります。
ホームページ
ホームページは、オンライン上での企業や店舗の顔のような役割を持ちます。インターネット検索で顧客がホームページに辿り着くことで、新規顧客の獲得へとつながります。
また、新規顧客だけではなく、既存客への再来店や再購入を促す場としてホームページを活用することが出来ます。
SNS
FacebookやInstagram・TwitterといったSNSの公式アカウントで、セールの告知やクーポンの配布・イベント実況などを行うことで、店舗の魅力を伝えることが出来ます。
また、SNSは何といっても「拡散力」が強いことが大きな特徴です。公式アカウントの投稿が拡散されたり一般ユーザーが口コミを投稿したりすることで、認知度が上がり、新規顧客の獲得に繋げられるという点が魅力的です。
例えば「ハッシュタグをつけて投稿をするとクーポンが当たる!」といったお得なハッシュタグキャンペーンを行うことで、既存顧客のファン育成に繋がる上に、その投稿を見た別のユーザーへの宣伝に繋がるといったメリットもあります。
SNSではこうした拡散力や話題性、参加性を活用した新規顧客も有効ですが、既存顧客との関係構築も重要なポイントです。
ブログ
ブログは、商品やサービスの具体的な情報や店舗の魅力を伝えることが出来る、比較的歴史の長いO2Oツールです。例えば、オーナーがどのような思いで商品やサービスを作り出したのかを紹介したり、おすすめ商品の紹介をしたりすることで、店舗の魅力を伝えることが出来ます。
最近はSNSのほうが注目されがちですが、表現力や情報の深さ、量といった点ではブログに敵いません。ぜひ、SNSでは発信しきれない魅力をブログで発信してみてください。
ECサイト
注文したものをそのまま店舗で受け取れるサービスや、店舗の在庫状況が分かるサービスも増えています。また、該当店舗に在庫がない場合、現在の場所から一番近い系列店に在庫があるかどうかなどを調べることができるサービスもあります。
ECサイトを立ち上げるというと、かなりのコストや手間がかかってしまいそうですが、BASEやShopifyといったCMS型の安価なサービスも登場しています。そうしたものを活用すれば、顧客にECという選択肢を用意することは決して難しくはありません。
アプリ
アプリからニュース配信やクーポン配信などをすることで、店舗に来てもらうきっかけをつくることが出来ます。
まずはアプリをインストールしてもらう必要があるため、他のO2Oツールよりも少しハードルが高くなりますが、しばらく来店していない人だけを対象にクーポンを配信したり、プッシュ通知でお店を思い出すきっかけをつくったりするといった方法で、有効活用が出来れば高い効果が見込めるツールです。
こちらもECのようにCMS型のサービスが登場していますが、まだまだ複雑で難しい部分でもあります。まずはWebサイトやEC、ブログを立ち上げ運営し、そうしたものをまとめる存在としてアプリの活用を進めていきましょう。
O2Oの活用事例は?
続いて、O2O施策を取り入れた企業やシステムなどをいくつかご紹介します。
ニトリ- off-line to on-lineのO2O
ニトリでは、購入希望の商品のバーコードをスマホなどで読み込み、その場で通販サイトの「ニトリネット」や店頭で配送・決済手続きをすることで、商品を持ち運ぶことなくそのまま買い物が完了できるというサービスを提供しています。
一般的なO2Oは「on-line to off-line」つまり、オンライン(Web)からリアル(店舗)に繋げる施策ですが、この例では逆に「off-line to on-line」、実店舗での体験をより良くするためにオンラインを活用しています。
また、ニトリのアプリには画像検索機能もあります。
ニトリの店舗に来店した方が、SNSやブログなどに投稿された写真を見たことがきっかけで、スマホのスクリーンショットを店舗スタッフに見せて、商品を探して欲しいと要望するケースが増えていたことを背景に実装した機能だそうです。
イオングループの店頭受け取りサービス
ホームページで注文や予約をした商品を実店舗で受け取ってもらう「店頭受け取りサービス」を実施しています。
店頭受け取りサービスの実施で、宅急便の受け取りが厳しいというお客さんのニーズに応えているほか、店頭受け取りサービスで「ついで買い」のチャンスが増えてくれるというメリットがあります。
スマホアプリ・サイト「フェイシー(FACY)」
チャット画面に欲しいファッションのデザインや予算を入力すると、各地のファッション系ショップから色んな商品がお勧めされるアプリ・サイトです。お勧め商品の中から気になったものがあれば、直接ショップに詳細や在庫を問い合わせることも出来ます。
その商品が気に入れば実際に店舗に顧客が訪問し、購入に繋がるような仕組みになっています。
丸善ジュンク堂書店
書店は電子書籍の登場や活字離れ、Webコンテンツの充実など、様々な要因で厳しい立場にあります。ただ本を売るだけであれば、品ぞろえ、価格、情報(豊富なレビューなど)の点で、AmazonなどのECにはかないません。書店には書店の魅力がありますが、これまでとは違った価値、体験を与えないと厳しいのが実情でしょう。
ジュンク堂書店は、オンライン上で本の在庫確認が出来るほか、欲しい本を店頭で取り置きしてもらえるサービスを実施しています。小さな事かもしれませんが、顧客の課題に寄り添った素晴らしいサービスです。
事前注文・決済システム「O:der(オーダー)」
アプリで事前にオーダー・決済までをすれば、並ばずにすぐにテイクアウトできる仕組みを提供しているシステムです。
お客さん側は並ばなくてもすぐに受け取れるというメリットがあり、店舗側も短時間で注文から提供までのオペレーションを回すことができ、機会損失を防ぐことが出来るというメリットがあります。
新型コロナウイルスの影響もあって、飲食店のO2Oはこの数か月で大きく進歩しました。今後、飲食店を支えるO2Oサービスの種類はどんどん増えていくと考えられます。ぜひアンテナを張っておきましょう。
スウェーデンの工具店「Malmö Hardware Store(マルメハードウェアストア)」
マルメハードウェアストアはスウェーデンにある工具店です。この工具店では、のこぎりや金づちなどの専門工具を無料で貸し出す「Toolpool」という企画を実施しました。
ユーザーは、スマホで「Tookpool」のFacebookページで会員になり、借りたい日を選んで店舗に専門工具を借りに行くだけです。
店頭に受け取りに来た顧客は、工具を使うために必要なペンキやくぎ、テープなどの消耗品を購入し、これが売り上げ拡大につながりました。
元々、売上の大半がペンキやくぎといった消耗品で、専門工具は大きな売上がなかったことに着目した企画だそうです。単価の高い専門工具を無料で貸し出し、消耗品で稼ぐという非常に優れた戦略です。
洋服の青山
洋服の青山では、品揃え豊富なオンラインストアの商品の中から気になる商品を試着予約し、全国の好きな店舗で日時指定をして試着ができるサービスを実施しています。「買いに行く」「探しに行く」のではなく、あらかじめ目当てのものを「試着しに行く」と考えたら来店ハードルも下がります。O2Oでは、オンラインでの接触から、来店までのハードルをいかに下げるかが重要です。
NEXCO 西日本
もともと、サービスエリアやパーキングエリアは、特定の場所に行くというよりも、タイミングと位置があったところに入る、という感覚のものでした。しかし、各サービスエリアにはいろいろな特色があり、サービスエリア自体が移動の楽しみの一つになります。
NEXCO 西日本では、ユーザーが高速道路のサービスエリアに到着し、アプリでチェックインすると、サービスエリアで使えるクーポンやゲームを利用できるサービスを提供しています。オンラインの施策を組み合わせることで、オフラインに新しい付加価値を提供することに成功した事例です。
スペインのマクドナルド
スペインのマクドナルドにて無料Wi-Fiサービスを提供していましたが、Wi-Fiの電波は店の外や近隣のレストランにまで及んでしまうため、顧客でない人にまで利用できてしまうという使い方をされることもしばしばありました。
そこで、Wi-Fi設定でネットワーク名を「2時です、コーヒーブレイクの時間です」「店内では無料Wi-Fiと無料でサンデーもプレゼント」など、利用する人へのメッセージを変えるというアイデアを思いつき、近隣のレストランの利用客にもメッセージを伝え、お客さんの呼び込みを行いました。
O2O施策としては特殊ですが、アイデア次第でコストをかけずに新規顧客獲得に繋げた事例として、学びがあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、O2Oの概要やメリット・活用事例などをご紹介いたしました。
O2Oを導入するにあたり、「顧客が求めているものは何か」を考え、ニーズにマッチした施策を考えていくことが必要です。初回した事例の中でも、学びになるのはスウェーデンの工具店「Malmö Hardware Store(マルメハードウェアストア)」とスペインのマクドナルドではないでしょうか。
どちらも、アプリ制作や広告施策などコストをかけたO2O施策ではなく、アイデアで顧客獲得に成功しています。
情報のオンライン化が急速に進む中、効果的なO2O施策をきちんと取り入れることで、店舗売り上げ拡大に大きく貢献してくれるでしょう。自身のビジネスの中で、on-lineとoff-lineを絡めることができないか、考えてみてください。
この記事が、あなた様の店舗運営の一助になれば幸いです。