これまで何度も「コンテンツマーケティング」に関する記事を取り上げてきました。
2013年頃から、コンテンツマーケティングという言葉がブームのようになっていたので、人によっては「もう古い」という印象を持つかもしれません。しかし、本質的なコンテンツマーケティングの価値はこれからも変わらないと考えています。

そこで今回は、コンテンツマーケティングの重要性や歴史を振り返りながら、これからについて考えてみたいと思います。

コンテンツマーケティングの価値

そもそもコンテンツマーケティングとは何でしょうか?
一般的に最も有名なのは、コンテンツマーケティングインスティチュートによる定義です。

Content marketing is a strategic marketing approach focused on creating and distributing valuable, relevant, and consistent content to attract and retain a clearly-defined audience — and, ultimately, to drive profitable customer action.

和訳:コンテンツマーケティングとは、価値があり、関連性が高く、一貫性のあるコンテンツを作成することで、見込み顧客を惹きつけ、最終的には収益性の高い顧客行動を促すことを目的とした、戦略的なマーケティング手法である。

参照:What Is Content Marketing?

この中で大切なことは「価値があり、関連性が高く、一貫性のあるコンテンツを作成する」という部分と「最終的には収益性の高い顧客行動を促す」という部分です。

コンテンツマーケティングは、見込み顧客にとって価値のあるコンテンツを作成し、知ってもらう手法です。ただ社内風景を投稿したり、会社のお知らせ欄を更新したりすることは、コンテンツマーケティングではありません。(求職者にとっては社内の雰囲気を知ることができるコンテンツなので、採用部門にとってはコンテンツマーケティングと言えます)

そして、コンテンツマーケティングは「最終的に」利益につながる行動を促すことを目的としています。広告や営業活動と違い、今の売上を求めて行うものではありません。

SNSマーケティング」や「プレスリリース」なども、内容や目的によってはコンテンツマーケティングと言っていいと思います。

こうした定義を踏まえて、コンテンツマーケティングが持つ2つの価値を紹介します。
もちろんこれから紹介する2つ以外にも、コンテンツマーケティングにはいろいろな魅力があります。それらについては、Grabの過去記事やダウンロード資料「成功事例から学ぶ~初めてのコンテンツマーケティング」をご覧ください。

コンテンツが資産として蓄積される

コンテンツマーケティングの最大の価値は、コンテンツが資産として蓄積されることです。
広告の場合、10万円の広告費を投資して得られる価値は、10万円分しかありません。翌月に同じだけの価値を得ようと思うと、また10万円の広告費が必要になります。

しかし、コンテンツマーケティングは全く違います。今月10万円を記事制作に投資すれば、それらは1年後も2年後も、価値を生み続けてくれます。翌月また10万円を記事制作に投資すれば、20万円分の記事が、翌々月に10万円を記事制作に投資すれば、30万円分の記事が資産として残り続けることになります。

Grabには500本以上の記事があり、今この瞬間も500本以上の記事が見込み顧客に情報を届けてくれています。これらは、Grabが運営され始めた2018年から徐々に蓄積してきた資産です。
もちろん新しい記事の更新や、過去記事のリライトも重要ですが、翌月からGrabに一切投資しなかったとしても、過去3年間で蓄積した記事が資産として価値を生み続けてくれるのです。

つまり、コンテンツマーケティングは続ければ続けるほど効果が高まる、投資対効果の高いマーケティング手法です。

そしてコンテンツが資産として蓄積されるということには、もう一つ大きな強みがあります。

それが、競合の参入障壁です。

うまくいった広告を真似て大量の広告費を投じ、シェアを奪うことは難しくありません。しかし、何年も運用されているオウンドメディアからシェアを奪うのは簡単ではありません
新しくメディアを立ち上げて更新頻度で競合を上回ったとしても、何年もかけて蓄積された大量の記事やSEO効果、被リンクなどを超えるにはかなり時間がかかります。

コンテンツマーケティングは、コンテンツが資産として蓄積されるので、効果を出すのに時間がかかるというデメリットがあります。しかしそのデメリットは効果がなくなるのにも時間がかかる、競合が追いつくのにも時間がかかるというメリットにも変わります

LTVを最大化する

LTVとは「ライフタイムバリュー(顧客の生涯価値)」です。大成功している企業はどれも「顧客獲得」に秀でているのではなく「LTVを高める」ことに秀でています。アップルやコカ・コーラのLTVが競合他社を圧倒していることは想像できる人が多いのではないでしょうか。

LTVを高めるためには「ファン経済」を作ることが大切だと言われます。ファン経済とは、例えば「スマホといえばアップルのiPhone」「炭酸飲料といえばコカ・コーラ」「テーマパークといえばディズニーランド」のように、顧客が「〇〇といえば◇◇」と思い浮かべるような、強烈なロイヤリティを指します

「〇〇といえば◇◇」というブランディングができてしまえば、その顧客が「〇〇」を必要とするたびに買ってくれるようになり、LTVが伸びるのです。

アップルやコカ・コーラのような世界的大企業を例にすると実感が出にくいですが、コンテンツマーケティングを活用すれば「〇〇といえば◇◇」というファン経済を作り出すことができます

例えば、GrabではWebマーケティングに関する様々なコンテンツを提供していますが「Webマーケティングで困ったらGrab」と思ってもらうことを目指しています。

あなたにも仕事で困ったときによく見るメディアがあるのではないでしょうか。

そして、記事を読んでも解決できない、プロの手が必要になったとき、真っ先に思い浮かぶのはそのメディアが提供しているサービスではないでしょうか。そのメディアはコンテンツマーケティングに成功していると言えます。

コンテンツマーケティングの歴史

コンテンツマーケティングの2つの価値に続いて、コンテンツマーケティングの歴史を簡単に振り返ってみましょう。コンテンツマーケティングの歴史を考えるとき、有名なのがこの画像です。

The Best Content Marketing Infographics on the Planet

これは2012年に作成された画像ですが、コンテンツマーケティングの始まりとして紀元前4200年の壁画を挙げています。この壁画には「槍で熊から身を守る6つの方法」が書かれています。
ここまで紹介したコンテンツマーケティングの定義や価値と合致していることがわかります。おそらくこの壁画を書いた人は槍職人だったのでしょう。そして、この壁画を見た人は槍が壊れたとき、真っ先に彼のことを思い出し、彼に依頼したはずです。

日本では2013年頃からコンテンツマーケティングが話題になり「プッシュ型からプル型へ」などと呼ばれましたが、その基本的な概念ははるか昔からあったことがわかります。

誰もが知っている「ミシュランガイド」もコンテンツマーケティングの一つです。ミシュランガイドの星の数は、お店のステータスを表すほど権威あるコンテンツです。

今はミシュランガイド自体が有料で販売されているので、コンテンツマーケティングらしくありませんが、ミシュラン社はもともとタイヤメーカーで、タイヤのマーケティングのために作ったのがミシュランガイドです。

ミシュランガイドはドライバーのためのお役立ち情報として無料で提供され、それを見て郊外のレストランに車で行き、もしパンクなどのトラブルが起こったときはミシュラン社に修理を依頼する、というビジネスモデルです。

そして1990年代からはメディアが紙からインターネットに変わり、2001年には「コンテンツマーケティング」という言葉が初めて使われました。
それからわずか20年ほどで、Googleなどの検索エンジン、SNSやYouTubeといった新しいメディアが普及し、パソコンが一家に一台から気づけはスマホが一人一台という時代になりました。

そこでまず注目を集めたのが、いわゆる「バズるコンテンツ」です。今もコンテンツマーケティングというと「バズるコンテンツを作ること」と考えている人がいるくらいです。
「バズるコンテンツ」の火付け役になったのが、2007年にミキサーメーカーのBlendtecが自社YouTubeチャンネルに公開した「Will It Blend? – iPhone」という動画です。

Blendtecはミキサーのパワーを「iPhoneを粉々にできる」というユニークな方法で伝えました。iPhone以外にもいろいろなものを粉々にしてきたBlendtecは、この取り組みで売り上げを7倍に増やしたと言われています。

そこから10年近く「バズるコンテンツ」が重要だと言われていましたが、ここ数年は「役に立つコンテンツ」に変わってきている印象です。さらにSNSの普及により「シェアしたくなるコンテンツ」や「視聴者を巻き込めるコンテンツ」が重要だと言われることもあります。

このように、コンテンツマーケティングは古くからある概念ですが、方法は時代によって変わってきました。これからもコンテンツマーケティングという概念は重要であり続けると思いますが、方法はどんどん変わっていくはずです。

それでは最後に、コンテンツマーケティングの未来を少し見てみましょう。

コンテンツマーケティングの未来

先ほど述べたように、コンテンツマーケティングの概念が無くなることはないでしょう。しかし、紙のフリーペーパーであるミシュランガイドが成功した1900年代と、BlendtecがYouTube動画で大成功を収めた2010年代前後と、2021年の今では手法が大きく異なります

それでは2021年以降のコンテンツマーケティングに欠かせない3つの要素を見ていきましょう。

メディアの多様化-音声、複合現実

新聞や雑誌、本の時代からPCの時代へ。PCの時代に最適化しようと努力していたら、気づけばスマホの時代になりました。こうしたデバイスの変化はこれからも起こり続けるでしょう。

デバイスの変化はもちろん、コンテンツそのものの形もどんどん変わっていきます。大半が記事形式だったコンテンツが、最近では動画や音声に変わってきました。SNSもテキストだけでなく、写真や動画を投稿することが当たり前になっています。BtoCでは「ライブコマース」と呼ばれる、オンラインライブ形式のコンテンツがよく使われるようになってきました。

そして今注目されているのが音声コンテンツです。動画コンテンツの影に隠れて目立ちませんが、アメリカでは​​Podcastを聞いたことがある人は2006年の11%から2019年には51%と大きく増加しています。

参照:2019年最新 アメリカのPodcast聴取動向

ここ数年、動画が注目されすぎた反動もあり「画面疲れ」から音声コンテンツに注目が集まっているのです。

そしてもう一つ、大きな変化がVR(仮想現実)やAR(拡張現実)、そしてMR(複合現実)です。
これはまずBtoB業界のコンテンツマーケティングで広がるでしょう。BtoBの商品・サービスは高額で複雑、高度な専門性が求められるものが多く、それらをうまく伝えるのにテキストや画像・動画より、MRが適しています。

デバイスの変化も徐々に始まっていて、スマートウォッチやスマートグラスなどに注目が集まっています。

新しいデバイスやMRなどが普及するのにまだ数年かかると思いますが、今のうちからアンテナを張っておいた方が良いでしょう。

人間味と専門性が求められる

2000年代後半からしばらく「バズるコンテンツ」のように注目を集めるコンテンツが重視されてきました。SNSが普及してSEOの難易度が上がってきたこの数年で、さらに注目を集めることが重視され、アテンションの奪い合いとなっています。

しかし、これからのコンテンツマーケティングはより本質的な価値が求められるようになるでしょう。

具体的には、コンテンツの作り手の人間味が溢れ、専門性が高く役に立つコンテンツです。
無機質で事務的なPDF資料より、担当者の顔が見えるYouTube動画の方が好感を持てると思います。自動生成された無機質なコンテンツ、注目を引くためだけのコンテンツが増えている今、その傾向はますます強くなります。

その良い例が「中田敦彦のYouTube大学」です。

少し前までYouTubeでもアテンションの奪い合いが起こっていて「10分以上の動画なんて誰も見ない」という意見が一般的でした。実際YouTubeに限らず、ユーザーが一つのコンテンツに滞在する時間はどんどん短くなっています。

しかし「中田敦彦のYouTube大学」は、1時間以上の動画で成功しています。その理由は、コンテンツ作成者の顔が見え、専門性が高く役に立つからでしょう。

Googleは現在、SEOを評価する際、コンテンツ作成者の評判を重視するようになっています。

広告からコンテンツへ

コンテンツマーケティングとWeb広告、どちらに取り組むべきかは大きな課題です。長期的に見ればコンテンツマーケティングの方が効果的なケースが多いですが、長期的な取り組みと戦略が必要になります。一方Web広告は即効性があり、やればある程度の効果が見込めます

基本的には両方バランスよく取り組むことが大切ですが、これからはコンテンツマーケティングにより力を割いていくべきかもしれません

Web広告はここ数年、個人情報保護の観点から逆風にさらされています。2020年1月にはGoogleが2022年までにサードパーティクッキーの利用を停止すると発表しました。2021年3月にリリースされたiPhoneのiOS14ではプライバシーポリシーの変更により、ターゲティングや広告効果の計測に影響が生じています。

iOS14のアップデートは、特にFacebook広告に大きな影響を与え、Facebook社は「プライバシー保護ではなく、利益を得ることを目的としたもの」「世界中の中小ビジネスやパブリッシャーに打撃を与えようとしている」と批判しています。
Facebook社の言葉にもあるように、個人情報保護は大切ですが、個人情報を使うことで適切な人に適切な広告を届けることができ、多くの事業が恩恵を受けていることも事実です。

Web上の個人情報保護が今後どうなっていくかはわかりません。規制が強くなればWeb広告にとっては逆風ですし、規制が緩くなっても、それを不快に感じるユーザーが増えれば、Web広告にとって逆風です。

こうした状況にあることから、もし今Web広告を中心に顧客獲得を行っているなら、できるだけ早くコンテンツマーケティングに取り組み始めた方が良いでしょう。
規制を抜きにしても、広告無しでYouTubeが見れるYouTube Premiumの利用者数はこの1年で大幅に増加しました。多くのユーザーが、広告を見ないためにお金を支払ってもいいと考えているのです。一方で、質の高いコンテンツはお金を払ってでも見たい、ということでもあります。

2021年以降のコンテンツマーケティング

今回はコンテンツマーケティングの将来性をテーマに、コンテンツマーケティングの価値や歴史、そして未来について紹介してきました。

一番伝えたいメッセージは「コンテンツマーケティングは一時的な流行ではなく、古くからある伝統的なマーケティング戦略である」ということです。
紀元前4200年の壁画から、YouTubeチャンネルやSNSに形が変わっただけで「見込み顧客に価値あるコンテンツを届け、最終的に収益性の高い顧客行動を促す」という戦略は変わりません。

コンテンツマーケティングの未来では、拡張現実など技術面の変化を紹介しましたが、大切なことは、どういった方法で情報を届ければ見込み顧客にとって価値があるかを考えることです。
そこからブレなければ、時代が変わってもコンテンツを資産として蓄積し、LTVを最大化させていくことができるでしょう。